コヨミくんの言葉に、テトさんとマスターは、びっくりした。
「えっ、行方不明って、なに? どうしたの」

コヨミくんはコーヒーカップを置くと、ちょっと考え込むようにして続けた。
「ええ。昨日ですけど、ボクの店の“鑑定団”に、リンちゃんのお兄さんのレンくんが来たんですよ」
「うん」

「その時、彼、心配そうに聞くんですよね。“あの、うちのリンがこの辺に来てませんか”って」
「へえ」
テトさんとマスターは、コヨミくんの顔を覗き込んだ。

「で、このところリンちゃんのことは見かけてないので、そう答えると。レンくん、沈んだ顔して」
「行方がわからないの?」
テトさんの問いに、コヨミくんはうなずいた。
「らしいですね。その時は彼、“きのうから家に帰ってないんですよ”といってたから…。今日で3日目になるみたい」


●どこに行っちゃったの?

テトさんは、目を丸くした。
「で、でも、どこに行っちゃったの?リンちゃん」
「警察には、届けたんですか」
マスターの吉さんも、気になる様子で言う。

「いや、それが、メールは来てるらしいんですよ、レンくん宛てに。“帰れなくて、ごめん”とか、ボソっと」
「リンちゃんから?じゃ、いちおう無事ではあるんだ」
コヨミくんは首をかしげた。
「ええ、だと良いんですけどね。さっきもボク、レンくんにメールしたら、メールだけは時折、来てるらしいんですネ」

「一体、なんなんだろうね」
皆は顔を見合わせた。

「リンちゃんモデルの商品が大ヒットとか、それどこじゃ、無いんじゃないですか?」
マスターは、心配そうに言った。


●リンちゃんが、ほほえんでた

その頃、コヨミくんのお店「鑑定団」を任されている、センゴクちゃんのところに、お客がやってきた。
「こんちは~」

元気よくドアを開けて挨拶したのは、駿河ちゃんだった。
「あ、いらっしゃいませ。駿河さん」
あいさつするセンゴクちゃんに、「オッス」のサインをしながら、彼女は店に入ってくる。

「お邪魔するね。あ、また新しい商品、入ったね」
ひとしきり、アンティークやら古着やら、セコハンの商品を見わたして、彼女は言う。
「ええ。ゆっくりして行ってください」
「うん。あ、でも、ちょっと聞くけどさ」
彼女は、センゴクちゃんに小声で聞いた。
「ねえ、あのさ。リンちゃんが、ちょっと前から行方がわからないんだって?」

センゴクちゃんは、ちょっと困ったように言った。
「…ええ。駿河さん、早耳ですね。私もコヨミさんから、あまり口外するなって、いわれてますけど」
「うん。ねえ。どうしたんだろうね」

カウンターに肘を載せて、彼女はつぶやく。
「あ、でも、変だよね。昨日、ニコポコ生に、彼女、出演してたようなんだけど」
「ニコポコ生? ああ、ネットの生放送ですね」
センゴクちゃんの言葉に、駿河ちゃんはうなずく。
「そうそう。ニコポコ動画の生放送だよ。昨日の夜にやってた番組で、“人気のドール&フィギュア特集”ってやつでさ」

彼女は、思い出すように言った。
「それでホラ、いま人気の“リンリン・はっちゅーね”を特集しててね。そこで、一瞬だけどリンちゃんが、大写しで笑顔で、ほほんでたんだよ」`s(・'・;)

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

玩具屋カイくんの販売日誌(240) 妹が行方不明で

リンちゃんの行方。何があったのでしょうか?

閲覧数:74

投稿日:2014/06/08 14:01:17

文字数:1,341文字

カテゴリ:小説

  • コメント1

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  • enarin

    enarin

    ご意見・ご感想

    こんにちは、今度は本編の方で、コメントを書かせて頂きますね♪

    うーん、ネット界隈ではリンちゃんは大写しで問題無く現れているけど、帰っていない…。でもメールでは、『帰れない』、とは書かれているものの、ちゃんと送っている。

    失踪ではないけど、リアル世界なら、ケーサツへの相談と、このような事実から、家出人捜索として、ニコポコの方にケーサツの捜査官が行く、そんな感じですが、レン君側としては、メールなどの事も考えて、まだ届け出はしていない。

    いずれにしても、アブナイ、危険、という感じではないにしても、帰宅せず、は流石にまずいですね。

    リンちゃんの無事の帰宅、お待ちしております!

    それでは、GW、楽しんできてください!

    ではでは~♪

    2015/05/02 17:06:21

    • tamaonion

      tamaonion

      enarinさん、メッセージを有難うございます。

      >いずれにしても、アブナイ、危険、という感じではないにしても、帰宅せず、は流石にまずいですね。

      そうですね。

      リアル世界でも、たまにニュースで「子供が行方不明」という捜索願いが出た、というものが聞かれます。

      ちょっと前に、(千葉だったかな?)1ヶ月くらい、女子高生が行方不明だった事件があって。
      神社の建物で無事発見された、というのがありました。

      すごく衰弱していたそうで。

      これを聞いた、無責任なネット民が、半分ふざけて、
      「異次元の世界にわたっていて、世界を救ってくれて、こちらに戻ってきたのではないか」
      とか、言ってたりしたそうです。

      でも、(真相はわかりませんが)、これは家出だったようですね。


      >リンちゃんの無事の帰宅、お待ちしております!

      そうですね。上の例でも思いますが、リアル世界の方が、実際は、説明しづらいものもあるような気もします。

      それに比べて。
      謎の会社、とか、悪の組織? とか。
      お話の方が、無邪気な部分もあるかもしれませんよね。(苦笑)


      感想、ありがとうございます!
      また、ぜひ聞かせてください!

      それでは、また。

      2015/05/06 22:30:09

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