【08 past day】

「……エネ」

 コノハは閉じ込められた檻を見る。電子の檻。中身は見えないが……恐らくエネは苦しんでいるに違いない。コノハはそう考えて……目の前にあるPCを開いた。
 きっとこれをすれば自分も生きていられるかわからない。だが、エネをこのままにさせるのは嫌だ。せめてエネだけでも……。

「……電子ロック解除!」

 いとも簡単に、電子ロックが解除された。
 エネはきっと電子の海に走り去ったに違いない。
 助かってくれれば……
 それだけを考えて、コノハの意識は途絶えた。


【09 23:00:00】

「……覚えているかな?」

 黒羽はコノハの顔を見て、笑った。
 コノハはそれに対して、ただ言った。

「ああ、そうだ。だが、あれは実験体なんかじゃない。大事な友達だ」
「……せいぜい言ってればいいさ。知らないだろうが、このレコーディング・キューブは迷宮。出口のない迷宮だから、閉じ込められるのさ」
「……なんだとっ」

 黒羽の言葉にキドは驚きの表情を浮かべた。

「まあ、俺は簡単に抜け出せるんだけどな……ぬ?」

 そこで黒羽は違和感を覚えた。
 この倦怠感はなんだ?

「……俺たちがなんの用意もしないでここにきたとでも思ったのか?」

 キドはそれを見下して、ほくそ笑んだ。


【10 23:00:11】

 エネは電子の海を漂っていた。
 彼女の目的はコードを全て0にする――無効にすること。
 彼女にとっては造作もない。
 そして今――すべてのコードを0にした――!!


【11 22:44:11】

「……まさか……あの実験体を……」
「実験体じゃない。彼女はエネだ」

 コノハははっきりと言った。

「……ハハハ、メカクシ団……そうか……負けだ。助けに行くがいい。ケンジロウ」

 そして――黒羽は笑って消えていった。


【12 22:40:55】

「お父さん!」

 その言葉に素早く反応したのは、ケンジロウとシンタローだった。

「……アヤノ?」
「アヤノなのか……?」

 ふたりはゆっくりと声のする方へ歩いていった。
 そして――暗闇からその姿が現れた。
 その人間こそ、楯山文乃。その人間だった。

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カゲロウプロジェクト 34話【二次創作】

閲覧数:356

投稿日:2012/09/27 23:54:04

文字数:938文字

カテゴリ:小説

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