「いやあ、君にちょっと言いたいことがあってさ」
彼女は小さく呟いた。
そして、
彼は不意に携帯電話を見つめた。
そこに書かれていたことは、
『2月17日午後××時、××高校で女子生徒が屋上から転落――』
彼はそこまで見て、彼女の方を見た。
彼女はもう――居なかった。
*
「ねえねえ、昨日のニュース見た?」
「ああー知ってるしってる! 飛び降りだっけ?」
「ぎゃはは!! あほらしいよねえ!!」
世界は、例えひとりの人間を失ったとしても止まることはない。
彼女にも安寧の空間などなかった。
それは今、彼も身にしみているに違いなかった。
今は例えこんな世間話でも彼女のことを思い出す人間がいるかもしれない。
だが、それも所詮噂になってしまう。「このクラスにいたのが」から「このクラスにいたっけ?」へ。また、「この近くの学校へ」と。最終的には噂すらなくなってしまうのだ。
彼はまたいつものように三桁の数字が書かれた再生紙をもらうと――先生の言葉も振り切って、教室をでた。向かう場所? それは決まっている。
屋上。
それは彼と彼女が――初めて、何か“トモダチ”以外の感情を持った場所。
そこには、あるものがあった。
「……鶴?」
それは、紙で折られた鶴だった。しかし、ただの鶴ではなかった。
「……このテスト……、」
それは、彼が――ここで破り捨てたそれだった。
ああ、そういうことだったのか。
だが、彼の心の空白は埋まることなどなかった。
答えを求めるなど、透明だった。
*
シンタローの話を聞き終わり、ヒビヤは何も言えなかった。
「……これでいいですかね。キド」
「ああ、上々だ」
キドの口元は少しだけにやけていた。
「……つまり、シンタローさんはそういう理由から……」
「そ。天才ではあるが、どこか抜けてるんだよ。この前なんか謎のソフトウェアの対処に苦労したとか言ってたな?」
「いや、もうあれは! 消え去りましたし!」
「だと、いいがな?」
「うわ、すごい意味深。しかもそれなんかフラグっぽくないですか?!」
「あーあーきこえなーい」
「おいちょっとキド座れ!!」
「もう座ってるってば」
「あーもーギターッ!!」
「それ曲違うしな」
「キド冷静すぎ!!」
「お前が慌てすぎなだけだ」
そう言ってキドはハーブティーを一口啜った。
ヒビヤはそれを見て『仲がいいんだなあ』とか思っていた。
カゲロウプロジェクト 15話【二次創作】
どうやらある程度までいったら連載休止扱いになりそうです。『目を逸らす話』終わり。次は『目を掛ける話』。
―この小説について―
この小説は以下の曲を原作としています。
カゲロウプロジェクト……http://www.nicovideo.jp/mylist/30497131
原作:じん(自然の敵P)様
『人造エネミー』:http://www.nicovideo.jp/watch/sm13628080
『メカクシコード』:http://www.nicovideo.jp/watch/sm14595248
『カゲロウデイズ』:http://www.nicovideo.jp/watch/sm15751190
『ヘッドフォンアクター』:http://www.nicovideo.jp/watch/sm16429826
『想像フォレスト』:http://www.nicovideo.jp/watch/sm16846374
『コノハの世界事情』:http://www.nicovideo.jp/watch/sm17397763
『エネの電脳紀行』
『透明アンサー』
『如月アテンション』http://www.nicovideo.jp/watch/sm17930619
ほか
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