そして翌日。

「あらルカ。帰ってきたばかりなのに…今日も遠出?」
「…えぇ、まぁ。ちょっと気になったものを残してきちゃったから。」

……待ち構えていたかの様に、ラエラに見つかりました。
先日帰ってきたのに、すぐ遠出するものなので多少疑われました。

が。

「そう…でも、なるべく早く帰ってきなさいね?そうしないと貴方の席が無くなってしまうわ。」
「?」
「……なんでもないわ。行ってらっしゃい。」
「いってくるわ。」


特に咎められる事もなく、すんなりと送り出してくれました。
………少し、気になる言い方をされましたが。

いつもは言わない言い方なので、ルカは気になった様です。
























そして、ルカが某所へ到着しました。


「やっぱ、ここは向こうと違う方向でで落ち着くわねー。」

そこは緑豊かな樹が林立し、見事なアーチを象っていました。

…神樹の国『グラノエラ』。
世界中を見ても珍しい程の国土と自然を誇る国です。
ここが、此度ルカが訪れた国です。
産まれの国でもあります。

んで、荷物をどさりと下ろすと共に、うーん、と身体をいっぱいに伸ばします。

そこで、ルカは一言。


「さて、とっ……………グミ、見てるんでしょ。」


すると何処からともなく声が…私の声なのですが。


「流石は首席。お見通しと。でも、何処でしょう?」
「…………打たれたいのね。」


ちょっとからかったその直後。


シュッ、バスン。


「あ痛っ!!」


一瞬の風切り音の後に、しなる様な打撃音。
そしてほぼ同時に何かが落ちる音。
…………的確に、打たれました。私が。
樹の枝葉の茂る中に隠れて、しかも周囲に迷彩する為の魔法もかけていたのに。


「相変わらずの、同化性能ね。魔法の反応が無かったら打ち抜け無かったわ。」
「成る程。」

次からは、迷彩マントでも作ってみようか…等と決意する私です。


「……で、この前寄ったのになんでまた…あれか、昨日イエロヴェラの女王様が紹介した鏡の件?」


落とされた際に痛めた腰をさすりながら質問したけれど…途中で予想できたので切り出しました。


「さすが。…もちろん、その件を領主に伝えてあったりもするんでしょう?」
「…………(コクリ)」
「手際良すぎて気持ち悪いわー。」


ちょっと気持ち悪いて言われましたっ。
自覚はしてるんだけどね?

「流石に、一緒に迎え行かないか、て聞いたら断られた。」
「そりゃそうでしょうよ。」


迎えに来ているのを期待してたのかしてなかったのか…少し残念そう。

「でも、来たら直ぐに通せるまで話しといたから問題無い。」
「早速押し掛けるわよ…今日は翔べる?」
「私を誰だと思ってる?」

立ち上がった私は下半身に付いた葉や土を払って、頭に掛けた保護眼鏡を下ろして数歩助走。そして跳躍。
…………肘辺りからをオレンジっぽい翼に代えて飛翔。そしてアーチを織り成す樹の上まで昇り滞空。

「変わらず、飛び立つまでは独りじゃないと無理なのね。」

すかさず、ルカは細い何か……さっき、私を叩き落とした鞭を、飛び上がり滞空する私の足目掛け振るい巻き付けます。

「……っと。」
「良さそうね。重さかけるわよ。」
「承知。」


ルカが鞭を数度引いて締まりを確認……ちょっと痛い。
確認後、ルカを吊り上げるため上昇。
宙ぶらりんになるルカは、私の足に締め付けた鞭を器用に上って私の足に到着。

「…………少し太っt」
「黙れ」
「ごめん……このまま、領主の所まで翔んでくよ。」
「えぇ、お願いね。」

そして、私達は領主…グラノエラを統べる人物の所まで翔んでいくのでした。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

数多の悲劇、一つの奇跡~とある観測者のタイザイ記第一幕ノ陸~

「………これじゃあ、観測者が誰か分からないじゃない。」
「気にしない気にしない。」

………………
まさかの(?)ナレーターの発覚。

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投稿日:2015/04/14 20:57:47

文字数:1,546文字

カテゴリ:小説

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