いよいよ、海斗、旅立ちのとき、です!
※注意
・時代設定が、若干ズボラです。
・あくまで、私の想像です。キャラクターイメージが違う、というところがあるかもしれません。
・KAITO→海斗、MEIKO→芽衣子、となっています。
・名前の捏造っぽいところがあります(がくぽ→樂十とか)
・自己設定の、架空のものが出てきます(例えば、妖怪だとか)。
・あくまで、イメージとしてとらえているので、モデルの曲とかけ離れているかもですが、ご了承ください。



以上のことが、OK!という方だけお読みください。







「ただいまって言うからね~っ!!」

「うんっ!!行ってきま~すっ!!めーちゃん!!」

芽衣子の声が、すぅっと空にこだまし、消え、そして、彼女の姿さえも見えなくなった。

「‥‥めーちゃん‥必ず帰ってくるよ‥‥」

海斗は、そうつぶやいて、刀を腰の紐に下げると、お守りと、芽衣子からもらった髪飾りを、懐にしっかりと入れる。

そして、勇み足で、洞窟への道のりを急いだ。

道ですれ違う者の姿は無く、聞こえるのは‥風で草木の擦れる音‥‥鳥の鳴き声‥自分の足音‥‥それだけである。

「あれ、ぼっちゃん、どこへ行くんだい?」

そんな中、1人の若い青年の商人とすれ違った海斗。こう聞かれて、海斗は答えに困ってしまった。まさか、動物殺しの犯人を‥‥なんてこと、言える訳が無い。

「いえ、ちょっと‥‥めーちゃんに紅葉を‥‥」

そう適当に誤魔化す。嫌でも自分顔に、作った愛想笑いが張り付いているのが分かる。

が、そんなことが、商人に分かるはずも無く、にこにこした顔で、

「‥そうかい、そうかい。んじゃ、ここを真っ直ぐ行きなさい。そこに綺麗な紅葉がたくさんあるから」

そう言って、彼は、藁傘を深くかぶり、軽く会釈をすると、立ち去って行った‥‥。

──‥今の人‥誰かに‥‥どっかで聞いたことあるような声‥‥笑った顔‥どこだったっけな‥‥樂十さんじゃないし‥‥。

海斗は、彼が立ち去った後、しばらくそう考えてはいたものの、

「‥ま、誰でもいいか!他人の空似だ、きっと!」

そう思い込んで、商人が教えてくれた方へ、羽織をかけ直して、急いで駆けて行った‥‥。

「‥洞窟の前も‥気をつけて‥‥」








その彼の姿を、じっと後ろから見つめている者がいる。さっきの商人、いや、商人ではない。

優しげな瞳、日本人には珍しい、茶色の髪、整った顔立ち‥‥それは紛れも無く、銀縁めがねが特徴的な顔──氷山清輝であった。

「‥よかった‥もっと落ち込んでるかと思ったら‥‥」

彼は安堵の表情を浮かべ、その場を立ち去ろうとする。が、そんな彼に声をかける者がいた。

「──清輝、先生、ですね?」

はっとして振り向く清輝。そこには、相変わらず愛想笑いを浮かべる樂十が、飄々とたたずんでいた‥‥。

「‥なんだ、樂十君か‥なんの用です?」

「‥何の用とは失敬な。あなたに話そうと思っていたことがあるんです。一緒に来てもらえます?」

樂十の何の警戒も無い態度に、清輝も、ふっと微笑んで、

「‥‥分かりましたよ‥あなたに話し方で勝てるとは思っていませんから‥‥」

「僕こそ、知識で君に勝てるとは思わないよ」

そんな会話をしながら、2人は、樂十の屋敷へと歩みを進めていった‥‥。





そんなことは露知らず、海斗は、商人に紹介された場所に着いていた。

「‥はぁっ‥はぁ‥やっとついたぁーっ!!」

両側に、トンネルのように、たくさんの紅葉の木が立ち、色鮮やかな葉が、とてもとても、絵に出来ないほど美しく色付いている。

「‥‥綺麗だな‥‥」

そうつぶやいたとき、突然、海斗の脳裏に、涙を流しながら、儚げに微笑む芽衣子の姿が浮かんだ。

「‥めーちゃん‥泣いてたな‥‥」

──‥なんで‥めーちゃんの顔が‥‥?めーちゃんは‥笑っていたのに‥‥。

『‥私はっ‥海斗みたいに強くなれないよ‥‥っ!!』

「‥‥めーちゃん‥ごめんね‥‥寂しかったんだよね‥‥つらっかったんだよね‥‥そう‥だよね‥‥」

海斗は、そうつぶやいて、すっと、地面の紅葉の絨毯に視線を落とした。

何の変哲も無い、どこにでもあるような紅葉。そんな紅葉が、まるで絨毯のように、無造作に敷き詰められている。

めーちゃんの心も‥こんなに‥ぎゅうぎゅう詰めで‥‥苦しくて‥どうしようもなくて‥‥動きようが無くて‥つらいところなんだろうか‥‥?もし、そうならば──。

ふっと嬉しそうに笑っていた顔が、涙でくしゃっ‥と歪む。水溜りに、その顔が、うっすらと映った。

「‥ははっ‥変な顔‥めーちゃんのために‥‥頑張るって言ったじゃんか‥‥」

馬鹿げている‥‥自分に言ったくせに‥‥滑稽だ‥‥覚悟なんて出来て無いじゃないか‥‥めーちゃんだって強くなれる?‥自分も弱いくせに。

途端に、そういったマイナスの感情が、海斗の頭の中を、ぐるぐると、無限ループをするように、海斗の強い意志を乱していった‥‥。

「‥‥偉そうなこと‥言えないな‥‥」

水溜りに、ポタリと涙が零れ落ちる。まるで、割れそうになるまで膨らんでいた風船が、急にぺしゃんこになっしまったようだ。

何枚か、地面にある紅葉を、すっと拾い上げる海斗。

「‥‥っ‥めーちゃん‥‥っ!ごめんね‥‥偉そうなこと言って‥‥僕は弱いままだよ‥‥っ!」

ぬぐってもぬぐっても、目から落ちる雫が止まらない。

と、そのときだった。

『海斗、何やってんのよ?』

空耳だろうか?幻聴なんだろうか?それとも僕の耳がおかしくなってしまったのだろうか?どっちにしても、今のは確かに、めーちゃんの声だ‥‥。

それとともに、まだ芽衣子に頼りっきりだった頃、あれは何ヶ月前だろうか?芽衣子との思い出が、海斗の脳裏に蘇った。

『ほら!海斗、あと少しだから‥頑張ろう!ね?』

獣道を駆け抜け、めーちゃんに案内され‥綺麗な夕日を見たっけ‥‥。でも、僕は、夕日より、めーちゃんに見惚れちゃってたんだよなぁ‥なんてね(笑)

──あの綺麗な笑顔‥‥また見れるといいな‥‥。

それから、火事が起きて、めーちゃんの父さんと母さんが亡くなられて‥‥そうだ、確か‥あのとき‥‥。

『めーちゃんは‥1人じゃないよ‥?』

『大丈夫、僕がいるから、ねっ!』

『だって‥父さんと‥母さんは‥‥死んじゃって‥‥っ!』

瞳に悲痛な色を浮かべて泣きじゃくり、海斗にしがみついて取り乱す芽衣子の姿。思い出すだけでも、自分のことのように‥つらい記憶‥‥。

そのとき、僕は‥‥なんて言ったんだっけ‥‥?

『めーちゃんが寂しくないように‥僕がそばにいてあげる。だから、めーちゃんは1人じゃない』

──‥そうだ。僕が守ってあげなくちゃ‥‥!

閉じていた目蓋を、ゆっくりと開ける。目の前に、洞窟の入り口が、大きな生き物の口のように、ぽっかりと開いている。

洞窟の奥は見えなくて、どこか禍々しい気配を帯びていた。それは、決して人が寄りたがらない、まさに今で言う、心霊スポットのようである。

──‥待っててね、めーちゃん。

ざっざっと洞窟へと歩みを進める海斗。その目には、もう、迷いは無く、強い闘志と、揺ぎ無い志が宿っていた‥‥。


ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

番凩・17 act1 つづる言の葉、紅一葉

‥‥なんか、兄さん最強モード、スタート!!て感じになっちゃってますが、それでこそ、私なりの兄さんのイメージです!

普段は、ヘタレていて頼りない感じなのに、優しく、いざというときに頼りになる。これでこそ、兄さんです!

ようやく、自分の言葉の軽率さと、芽衣子の思いに気づいた海斗君。一時は、それに苦しみますが、強い志を持ち、いざ洞窟へ!!

さぁね海斗君、紅刀を持ち帰ることは出来るのか?テンション高めでいきましたが、乞うご期待ください!

閲覧数:364

投稿日:2010/07/06 17:28:17

文字数:3,020文字

カテゴリ:小説

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  • enarin

    enarin

    ご意見・ご感想

    今晩は!。続き、拝読させていただきました!。

    清輝先生と樂十さんの関係、微妙ですね~。もう十個二十個の過去があってもいいくらいです。話術の樂十vs知識の清輝、さて、どうなるのでしょうか?。

    それはともかく、海斗君、強くなりましたね~☆。この場所に来るまでに、色々あったけど、それをひとまず解決してきたものの、そう単純ではなかったようですが、さらにそれも越えて、志もはっきりして、いざ、行くべき道へ!。

    ではでは~♪

    2010/07/06 20:41:48

    • 愛夢☆ソライト

      愛夢☆ソライト

      >enarinさん
      ご拝読ありがとうございます!!
      >清輝先生と樂十さんの関係、微妙ですね?。もう十個二十個の過去があってもいいくらいです。
      ふふふっ…←何;;そうなんですよ!さすがは推理小説の天才著者!読みが鋭いですね?笑。ただでさえ、よく分からない2人の会話…まだまだ秘密はたくさんありますよ??
      >この場所に来るまでに、色々あったけど、それをひとまず解決してきたものの、そう単純ではなかったようです。
      そうですね?。だって、海斗君も、まだ数えで15。得体の知れないところへ、しかもたった一人で行くのは不安です。
      そんなこんなで、海斗にだって、不安があったんじゃないか…という視点で書かせていただきました!

      さて、次からは、いろいろと状況に変化が起きます!乞うご期待!

      2010/07/07 18:18:31

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