「鏡よ鏡、鏡さん…?この世で一番美しいのは…だぁれ…?」

 鏡の前で桃色の髪をなびかせながら一人の女が呟く。

 『……いつまでその質問続けるつもりなんだよ。もういいじゃん。ルカ様が一番美しいですよ、多分』

 かったるそうに、鏡が言う。

 「なんですって??今まではちゃんと確実に私が綺麗って言ってたじゃない?」

 『……だって、世界中見てこれるわけじゃないしぃ…?』

 「……それでも、貴方がみた女の中では、私が一番でしょ?正直に言ってちょうだい?」

 『う~ん…、正直言うと、僕のタイプは、ルカ様じゃなくて、白雪姫様なんだけどなあ……』

 「はぁああ!!!?あの!?年増!!!??」

 『おわッヤベッ…じゃあ、失礼しまーっす…』

 何やら険悪なムードだけを残して、鏡は奥に逃げてしまった。
この国の美しい女王、ルカは何やらぶつぶつつぶやく。

 
 「許さない…白雪姫……ッ!!今度こそ、この手で――――!!!」

 
 同時刻、女王のその目を見て、白雪姫を、側近のグミが窓から放り出したことを、ルカはまだ知らない。






 ところ変わって、森の奥。

 白雪姫と、7人の小人たちはというと…。

 「ちょっ!ああああああああああああああああ!!!!!!!!!おい!何してくれんだ、クソ白雪!!!コンセント抜いただろ!?セーブしてねえのにィィィイイィィィイイィィィイイ!!!!!!!!!!」

 「え!!?あら、ほんと。ごめんなさい?レン君?」

 「許さねえ!許さねえ!許さねえええ!!!ミク!今夜の白雪の昼飯は、抜きにしてくれ!!」

 「は―――い♪」

 「え!!?ミクちゃん!!!!」


 という風に、昨日から慌ただしい。
白雪姫がこの森へ来てから(飛ばされてから)1日。

 小人の家から、叫び声が消えたことはなかった。

 というのも、白雪姫が、リンのおやつを食べてしまったり。
レンのゲームソフトを壊してしまったり。
ミクのベッドにお酒を零してしまったり。

 あとは、名もなき三人に無理やり名前をつけようとしたりしたからだが。



 「白雪姫~、お客さん~」

 「あ、ありがとうリンちゃん」


 白雪姫は玄関へと急ぐ。
お迎えが来たのかと、心を弾ませながら。

 この時、小人たちが一斉に溜息をついたのを、姫は知らない。


 玄関では、いかにもな格好をした老婆が立っていた。



 「……リンゴは、いらんかね?お嬢さん…?」

 「……は?」


 姫はリンゴを片手に自分を訪ねてきた老婆に、無表情でその言葉を吐いた。
相当、老婆の心には大きな傷ができたことだろう。

 しかし姫はさらにその傷をえぐる。


 「リンゴくらい自分で買いに行けるのでほっといてください。というか、そんな怪しい格好した人のリンゴなんて、某童話みたいで受け取れません。他をあたってください、それではさようなら」

 白雪姫は白雪姫を知っていた。
らしい。

 姫はドアを閉めようとする。
と、老婆は急に焦り始めた。

 「お、お嬢さん?このリンゴおいしいんでね、一口食べてみてほしいんだよ」

 「ああ、ありがた迷惑ってやつですね。おいしいなら人に勧める前に一人で味わうもんじゃないんですか?」

 「え、とお…その……」

 「どもってるっていうことは、怪しいですね。いりません、そんなリンゴ」

 「……」

 老婆は言葉に詰まる。
しかし、姫の弾丸はいま、こうしている間にも、老婆の胸に突き刺さっている。



 「るせええええええええええええ!!!さっさと食べろこのクソ白雪がああああ!!!!」



 老婆は、リンゴを姫の口に無理やり押し込んだ。
姫のあごは外れてしまうほどに大きく開き、リンゴを飲み込んだ。



 「なにすんのよ!!このババ…あ……」



 老婆は黒い服に隠れてにやりと笑った。
そして静かに呟く。


 「これで、一番美しいのは私よ…」




 姫の意識は、なくなる。







 「姫~ごはんですよ~」

 リンがあまりにも遅い姫を心配して様子を見にやってきた。

 「きゃあああああああ!!!!!???????????」


 「どうした?リン?」

 「白雪姫が…!」


 リンが指さしたのは。

 

 血が通っていない程に青ざめ、倒れた白雪姫。



 「姫!?」

 ミクも、名もなき三人も、集まってきた。



 「姫…こんなに青ざめて…どうしたんでしょ……」



 「君たち!!!青と言ったね!!!」



 突然の青い光に、小人たちは目を塞ぐ。
眩しい。



 「は――はっはっは!!青と言ったらこの僕!青の騎士、カイトさ!!宜しく!!あ、ちなみに。騎士と書いてナイトと読むから」


 「「「「「「「………」」」」」」」


 一同はその急に現れた青年を、真顔で見つめるほかなかった。
そいつは、真性のアホでKYであった。



 「ややや!!?その美しい姫は誰だい!!?いや、言わなくてもいい。君の言いたいことを当ててあげよう。その美人は“白雪姫”だろう?」


 「「「「「「「……………」」」」」」」


 「にしても、美しい…」


 その、バカイトは、姫に顔を近づける。
そのとき、小人の顔が青ざめ、レンにいたっては吐いていたことを、この騎士は知らない。





 「は!!!」





 姫が目覚めた。



 起き上った時に、頭がカイトの鼻に直撃した。







 「リンちゃん、ごはんって言ったわね?」





 「え…うん……」

 「じゃあ、ごはんにしましょ?おなかすいたわ」

 「ようし、ごはんだごはんだ――!!」


 小人は、騎士をなかったことにした。
姫は気付いていない。









 この時、騎士は乗ってきた馬にも逃げられ、一人徒歩で帰ったことを、皆は知らない。











 白雪姫と7人の小人は、末永く一緒に幸せに暮らしましたとさ。




 おしまい。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

ボカロと愉快なボカロたち。

閲覧数:229

投稿日:2012/09/10 17:03:10

文字数:2,512文字

カテゴリ:小説

  • コメント3

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  • しるる

    しるる

    ご意見・ご感想

    ほんとうにどうした!ww
    老婆の心に大きな傷とかすごかった!←「笑」の意味で

    イズミさん、こういうのもイケるんだぁ!
    さすがです!w

    2012/12/06 04:21:43

    • イズミ草

      イズミ草

      吹 っ 切 れ た
      って感じですかねwwww

      私も初めて気付きましたww

      いや、リアルではこういうのテンション高いときにやってますがww
      つかさんに聞いたらすべてがわかるwworz

      2012/12/06 16:03:28

  • Turndog~ターンドッグ~

    Turndog~ターンドッグ~

    ご意見・ご感想

    おい鏡。おい鏡www
    多分ってwwwやる気ねえなあ。

    白雪姫、あんた酒乱以外にも欠点だらけじゃないかい!?www
    そして老婆の追い返し方が振り込め詐欺の追い返し方みたいなwww
    …っておい待て姫。飲み込むのかい!!

    安定のバカイトwwwww
    前作の悲劇的で美しいカイトはどこへいったwwwww

    2012/09/10 23:04:52

    • イズミ草

      イズミ草

      wwwwwww
      これはただのノリだけで書いてますからwww

      よく丸のみ出来たなあって感じで^^;

      カイトって
      なんだかんだ
      使いやすいですよねwww

      2012/09/11 10:30:32

  • つかさ君

    つかさ君

    ご意見・ご感想

    ちょ、面白すぎでしょwwww
    鏡のところがぷっっと吹き出したとすると、
    騎士のところでぶはあっと爆笑してまいましたっww

    そしてカイトが先輩に見える←

    2012/09/10 17:13:19

    • イズミ草

      イズミ草

      すみません。
      リアルが見えてしまったwwww

      こういうのを書いてるから
      すらすらあんなきざな言葉が出てくるんだぜwww

      2012/09/10 17:48:28

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