その1
放課後の教室、君と2人きり。
でも君は眠っている。
机に顔を埋めて、眠っている。
さっきから起こしているけども、起きる気配がない。
君の顔を見る。
情けない顔して眠っている。
君の髪を、少し触る。起きない。きれいな髪。
君の頬をつついてみる。少し唸るだけで起きない。
本当に爆睡しているみたいだ。
何をしても起きないのかな。
ねぇ、起きて。もうすぐ、あの人が来るよ。
起きないなら…。
そう思いつつ、君に…。
ガラガラガラ。教室の扉があく。
「ん?お前もいたのか」
「起きない眠り姫様の警護でも」
「ははっ、ありがとさん。ほら、起きろってさ、眠り姫様」
あの人は、君を乱暴に揺さぶって起こす。
「んあ?ご飯?」
「ふはっ!wwwご飯っておまwww」
大爆笑するあの人、君はまだボーっとしている。
そんな君の腕をグイっと引っ張って、あの人は無理やり君を立たせる。
「お、おおー。おはよー」
「やっと起きたか」
「うん、バッチリだよ!それよりさー、帰り、今日どこ行く?」
「お姫様の好きなとこに行くぜ。あ、なぁ、お前も一緒に行くか?」
「……2人のデートの邪魔はしないよ」
「そっか。お前も早く帰れよ」
「ねぇ早く行こ」
「ちょ、急かすなって」
君はあの人と腕を組んで、教室から出て行った。
残ったのは僕ひとり。
まだ、君に触れた余韻が残る。
まだ、君が好きだから、諦めきれない、諦められない。
それでもまだ、君が好きだから。


その2
「ごめん、俺は君を好きになれない」
「……」
今日、初恋が終わった。
「ごめん、こんな話のあとだけど…そろそろ帰ろっか」
「うん…」
私が恋をしたあなたは幼馴染。
昔はこの通学路、2人仲良く手と手つないで歩いたよね。
でもいつからか、手を繋がなくなって、あなたは大人になって、私も大人になって、私はいつからかあなたを好きになった。
いつとも違う帰り道。
私はあなたの3歩後ろを歩いている。
だって、泣いている顔は見られたくないから。
「……ごめん」
あなたがポツリとつぶやいた。
「…うん」
「でも…ありがとう」
本当は、「そんなの全然気にしなくていいから」とか明るい言葉を言うべきなんだろうけど、私はただ、相槌を打つしかできない。
「ごめん」
「…うん」
おんなじことの繰り返し。でも明日から、私たちの関係は、何かが変わる。
不思議だね。もうこの恋は終わったのに。
涙が溢れて止まらないのは、きっと、それでもまだあなたが好きだから。


その3
『それでもまだあなたが好きだから』
リビングのテーブルの上にはそう書かれたあいつの手紙があった。
ちゃんと嫌いって言ったのが聞こえなかったのかしら。
小さい頃からずっと一緒で、いいところも悪いところもわかってる。

ーーホントに昔から変わらないなあ。

昔から少しぼーっとしてて、人の話なんて上の空。あいつの悪いクセだ。
バカ、バカ、本当にバカ。
この手紙にしたってそうだ。こんな短い文章、メールで送ればいいのに、わざわざ手紙で書くなんてこと。
きっと「何を考えてるかわからない無機物は嫌いだ」と言ったのを気にしてのことだろう。なんでこう、無駄なことばかり覚えてるかなあ?
そんなおせっかいは、あいつのいいところで、でも、それが私の調子を狂わせる。
嫌い、嫌い、あんな奴、大嫌い。
あいつはバカだからちゃんと教えてあげなくちゃいけない。
ねぇ、わかってる?
恋をしちゃダメなんだよ。
恋をしちゃ…ダメなんだよ。
ねぇ、わかって。バカ。
嫌いな筆跡で書かれた紙が、突如滲み出す。そして、テーブルの上に少しだけ暖かい水滴が落ちた。
「……バカ。泣かせてどうするのさ」
あいつが学校から帰ってきたら、あいつの嫌いなピーマンの肉詰めでも作ってやろう。
バカで私思いの、そんなバカな弟のために。

その4
いつもと違う学校帰り。
なんで違うか?君がいないから。
いつと隣で笑い合っていた。
でも君はいなくなった。
突然だった。
当たり前の日常。
当たり前の恋愛。
彼氏彼女の関係。
ずっと続くと思っていた。
でも、君は死んでしまった。
それでもまだ、僕は君が好きだから。
まだ、現実味がわかないんだ。
君がいなくなった現実を、受け止められずにいるんだ。
ねぇ、どうすればいいのかな。
今でもまだ、愛している。


その5
「アタシ、先生に何回ふられても、それでもまだ好きだからね」
「…ストーカー化だけはやめてくださいよ」
「それは大丈夫!」
「はは…」
先生は苦笑いをする。
噂だと、先生は妻子持ちらしい。
でもそんなの知ったこっちゃない。
だって好きなんだもん。
別に妻になれなくても、愛人ポジションでいいの。
愛されるのならなんだっていいの。
うむ、まだまだ道のりは長い!だわ!

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

それでもまだ好きだから

添削協力 友人y LOさん

気が向いたら続編書くかもです。

閲覧数:101

投稿日:2013/09/07 23:50:54

文字数:1,983文字

カテゴリ:小説

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