(汚い部屋だな……)

部屋の中は酷い惨状を呈していた。
床には雑誌やお菓子の空き袋などが散乱している。流し台は洗っていない食器が乱雑に積まれ、タンスからは強引に押し込められた衣類が飛び出している。何故かベッドの上はきれいだったが。

(掃除できないロボットっているんだな……)

そういえば、実体化亜種ボカロの中には、民間で作ったが故に欠陥を持つ場合があるという……という話を思い出したら、なんだか急速に同居人がどんな奴なのか心配になってきた。

「……まあ、何はともあれお片付けだ」

このままでは文字通り足の踏み場もない。俺は同居人に無断で掃除を決行した。

◆◆◆

「お、終わった……」

ついに最後のゴミをまとめ、部屋をあるべき姿に戻した俺は、畳の床の上に大の字になった。

「長い、戦いだったぜ……」

全身を心地よい達成感と疲労感が包んでいる。
人造人間が疲労というのもおかしな話だが、恐らく貯蔵されたエネルギーが少なくなってきたことを示す為の措置なのだろう。
ふと、現在のロボットはガソリンなどではなく、人間のように食事という形でエネルギーを摂取するという話が思い出された。俺の身体にも同じシステムが使われているのだろうか。

「ただいまーってうわっ!何よこれ!?」

とりとめのない思考をしていた俺の耳に、叫び声が届いた。恐らく同居人のものだろう。
そいつはずんずんと部屋に入り込むと、二、三度部屋を見回し、床の俺を睨みつけた。

「あんた誰よ!よくも私の城を台無しにしてくれたわね!!」

「そこは普通感謝して然るべきだろうが!因みに俺は語音シグ!今日から同居人が来るって聞いてなかったのか!!」

というか、あの部屋を城だと?抱いていた懸念が現実になりそうで嫌だ。

「ああ……あんたが例の……」

俺が名乗りを上げて立ち上がるのをじろじろ眺め、奴は言った。

「女装とか似合いそうね」

「なんで初対面にしてピンポイントで攻撃できるかなぁ!?」

この身体になってからさり気一番気にしてた事にざっくり切り込まれ、俺は床に倒れ伏したくなった。

「……ところであんたはなんていう名前なんだよ。俺はもう名乗ったぞ」

「見てわからないかしら?」

「ああ?そんなんわかる訳……」

と言いつつ、俺はそいつの姿を確認する。なんというか、シルエットは殆ど初音ミクそのものだが、髪の色が黒く、服も濃い黒を基調としていてなんだか攻撃的な印象を与える。

(見た目がそっくりで色が変わってる……となると、闇化した初音ミクだとか、そんな感じの設定かな)

びんぞこにねじ込まれた知識を検索すると、それらしいのが見つかった。

「なるほど……あんたが外r「外れって言うなああああああああああ!!!!」

突然のアッパーに対応できず、俺は再び床に倒れこむ羽目になった。視界に星が飛んだ。

「な、何しやがる……!」

痛む顎をさすりながら必死に立ち上がる。びんぞこよ、痛覚まで
正確に再現する必要はなかったと思うぞ……

「人の名前を間違える不届き者に当然の制裁を与えたまでよ。私は雑音ミクに決まってるじゃない」

「ああ、そっちか……」

外れミクと雑音ミクって違いが分かりづらいよな……
つうか制裁とか言ってたがこいつ絶対間違えるの狙いでやっただろ。そうとしか思えん。

「それはそうとして、シグだっけ?あんたの設定ってちょっと私と被ってて気に入らないのよね。悪の組織に作られたとかなんとか」

「そう言われても……」

事実だし。
っていうか、設定として出回ってんのかよその情報。本当に機密性もへったくれもないなこの悪の組織。
俺が呆れている間にも、収まりがつかないらしく雑音は文句を呟いている。

「私の部屋も勝手に掃除するし……あ、もしかして私の下着見た!?」

「片付けないお前が悪い。貧乳には興味ないしな」

バッサリと言い切ると、雑音が冷ややかな眼差しを浴びせかけてきた。

「最低ねあんた……」

「最低で結構。さてと……」

同居人の顔も確認した事だし、俺はピアプロ内を見て回ろうと立ち上がった。
一応知識としては把握出来ているものの、やはり一度はちゃんと行ってみないと不安なものだ。

「あ、待ちなさいよ。私が案内してあげるわ」

「え?そりゃどういう風の吹き回しだよ?」

さっきまでの話しっぷりなら絶対「はいはい、いってらっしゃい」とか適当に言うと思ったのに……と伝えると、雑音は短くため息をもらした。

「本当は私もそうしたい所だけど、実は今日あんたの歓迎会が予定されててねー。流石に主役が道に迷ってこれませんでしたー、じゃ格好つかないでしょ?」

「歓迎会ねぇ……そんなのやるのか」

「ええ。まあ大抵の奴は自分が騒ぎたいだけだけどね。さて、行くならちゃっちゃとまわっちゃいましょ」

「ああ」

どちらにせよ、案内人がいるのはありがたい。
俺は雑音に先導され、ピアプロ巡りに向かった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

小説【とある科学者の陰謀】第二話~潜入~その二

第二話後半です。ようやくボカロ出せました。非公認亜種ですが……

雑音ミク?何それ?って人もいると思います。ぶっちゃけ自分も出した割には良く知らないので性格は完全に適当です←
前回も書きましたがまずいようなら書き直します。

閲覧数:165

投稿日:2011/05/17 23:28:04

文字数:2,061文字

カテゴリ:小説

  • コメント1

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  • 絢那@受験ですのであんまいない

    同居人が雑音ですか…大変ですね。
    ていうかシグ!下着見たのか!なんてずるいんd((決して百合ではありませんので…

    私の部屋もベッドだけきれいです。床すごい汚いwww
    まあベッドさえあれば本も読めるしお菓子も食べれるし宿題もできるので。勉強机なんかとっくのとうに用無しになってるwww

    畳ですか~。いいな、私の家ぜんぶフローリング…畳の上でごろごろするの気持ちいいですよね~。

    2011/05/18 21:44:05

    • 瓶底眼鏡

      瓶底眼鏡

      悩みに悩んだ末彼女が一番かなーと思ったので……自分の方針としてシグは徹底的に酷い目に合わせ続けるつもりですし←
      本当にずるいですよね!自分も見たことないのに!←お前が言うと色々まずい

      そうなんですか!自分もベッドで寝ていた頃はそうでした!諸事情あり今は布団敷いて寝てますが←何があった
      勉強机?ああ、パソコン台の事ですね!←

      畳は日本人の心ですからねー、人造人間になっても落ち着くみたいですねー←

      2011/05/18 23:22:03

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