episode2-1
その日の夜…部屋で寝転びながらぼ~っと考える信介。『今日のあいつに(沖田信崇)逢った時…驚いた反面、不思議と懐かしい人に逢えた感じがしたのは何故だろう…。妙な感覚だったな…。しかし奴の腕前は、甘利塾から来たのであれば恐らく相当な使い手だろう。でも…相手が強ければ強いほど闘争心に火がつくような感じは何なんだ…?ついこの前まで、人を殺(あや)めた自分自身が許せなかったのに…。』一点を見つめる信介。『今日はなんか疲れたな…。』眠気に誘われて…眠ってしまった信介。静まり返った部屋に…カタッと例の刀の鍔(つば)が動く…。その瞬間スマホが突然に光を放ち出した。辺り一面が眩しい真っ白な光に包まれてスマホの中へと吸い込まれてゆく。最初の時と同じだった。当然、信介もスマホの中へと吸い込まれて…二度目のゲームの世界に足を踏み入れる事になった…。
……。「殿…。殿!もぅ~っ!いい加減、眼を覚まして下され!起きろ~っ!」聞き覚えのある声に眼を見開き、周りをキョロキョロと見渡す信介。「戻って来た~っ!」突然叫ぶ信介の声に…唖然とする濃殿と近侍従者(きんじじゅうしゃ)たち…。「な、何を…寝ぼけているのですか!戦から帰って来たと思ったら、半日以上寝ているこの不始末…情けないにも程がありますぞ!」濃殿が怒っている脇で…何やら考えてる信介。『現世では1週間も過ぎてるのに、ここでは半日か…?まるでゲームの続きをやるようだな…。時間軸が不思議でしっかり覚えておかないと、えらい事になるな…。』その時、信介のお腹が凄い音で鳴った。「…お腹空いた。」信介の情けない声に「…しょうがないですね。膳の用意が出来ていますから…遅くなりましたが、昼ご飯に致しましょう…。」そう濃殿が申されると…侍従者たちが次々と膳を運んで来る。『これが、この時代の最高の食べ物になるだろうな…。どれどれ、味はどうかな…?』そぉ~っとお膳に手を伸ばす信介…。お椀に盛り付けられた煮物を手に掴むと口の中に放り込んだ。「美味い!」思わず大きな心の声が漏れる。「あぁぁ~っ!もう~っ!子供みたいな事は止めて下され!…家臣たちに示しが着きませぬ。」濃殿が怒り散らす。ふっ…と家族団欒の賑やかな食卓を思い出す信介。『…そう云えば、我が家の食卓も賑やかで楽しい場であったな。…だけども、これは当主たるわが身だけの贅沢であって、民の皆さんが喜ぶ事では無いはずだ。…俺はこの時代で当主の立場を利用し有能な家臣と共に、誰も考えもしない国造りをやるために舞い戻ったんだ。…この1週間、出来る限りの知恵を絞って考えたプランを今やる時が来た。とりあえず…食ってからだな。(笑)』膳の支度が整うと…「どうぞ、お食べ下され。」濃殿が微笑む。美味しそうに食べる信介の様子を見て…ますます眼を細める濃殿。あれこれと一頻(ひとしき)り食べた後に、座り直して信介が言う…。「これから、この国の造り方とこの国の外の世界の話を致します。」信介のいつもと違う様子に気付いた濃殿が、座り直して凛とした姿で…「伺いまする。」と申し上げた。…静かに話始めた信介が人を殺(あや)めた時の心情を切々と語る事から始まり…この先の国の在り方や国自体の連携を強化する為の在り方、その為に「その国に無い物は他国が分け与える。」という信念を知らしめる事の重大さや侵略行為を阻止するための「自衛隊」の設立する事など…この1週間、信介なりに考え出した全てを話した。1時間ほどして話を終えると、あっけに取られた周りの侍従者たちの顔が居並ぶ。さすがの濃殿さえも呆然としている様子が伺える。「…なんとも壮大なお話で…言葉が見つかりません。実際にその様な世の中が来るとしたら…それは素晴らしき事だと存じ上げます。」丁寧に頭を下げる濃殿であった。「これからこの話を家臣たちの前で話そうと思ってます。家臣の中には恐らく…表向きは賛同する顔をして腹の底では忠誠心など微塵(みじん)も無い方々も多いと思います。それは無理も無い事でしょう…。武士とて飯を食わねば生きてはいけないのですから…。ただ、この話は…そんな次元の低い考えではやり切れない事を解る人だけ残ればいいと思っています。篩(ふるい)に掛けると思って頂いて結構です。この小童(こわっぱ)の言う事をどれだけ信じて貰えるか見物(みもの)では在りませんか!さぁそろそろ…武将の方々にお集まり頂こうか。信繁殿、大広間に皆さんを呼んで下さい。」「はっ!」『このお方は…本当にあの弱々しい殿なのか…?ひと夜、寝ただけでこんなにも人が変われるものなのか…?いやいや有り得ないだろ。でも、確かに殿様なのだが…。』あまりの信介の変わり様に納得がいかないような信繁であった。凛とした後ろ姿の信介に近寄る濃殿…。「恐れながら申し上げます…。このような大きな決断をよう独りで成されましたな…。それも、たった一晩で…。お見逸(みそ)れ致しましたと共に、殿を見直しました。ただ、これからは…少しなりとも私もお役に立ちとうございますゆえ、相談して頂けると嬉しいと存じます。私たちは夫婦なのですから…。」そう言って頬を赤らめる濃殿…。「あ…あぁ、分かった。」そう返事するしか出来ない信介も照れていた。「…殿。皆が集まったようでございます。」信繁の声がけに「それでは、行って参る…。」と信介が立ち上がる。その背中はひと際…大きく見える濃殿であった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

歴史を変える、平和への戦い

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投稿日:2024/03/17 17:33:01

文字数:2,233文字

カテゴリ:小説

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