「ミクっ!!!!」
大声で呼ばれた…叫ばれたミク、彼女の白い右腕から赤い鮮血がとめどなく溢れている。
衝撃的な光景にリンとリント、メイコにルカは驚愕の表情を浮かべ、特に幼いリンとリントはあまりの衝撃でだろうか泣いている。
しかし彼は、彼だけは違った。
その瞳にはミクが映っている。しかし、その瞳には何も宿していない。
彼は…カイトはただその光景を眺めているだけだった。
「ミクっ、ミク…うぅ~。」
リンがミクの側に駆け寄り、左腕に腕をからめ泣きながら頬ずりをしている。
リントは、その光景を涙を流しながら見ていたが、ふ、とカイトの方を見て言った。
「あんたが…人形が怪我すればよかったのに!
ナミダ一つ流さない、表情一つ変えないなんて、あんたは人間じゃない。」
カイトは何も返さなかった。
リントはカイトを一睨みし、ミクのもとに走っていった。
”悲しいことだというのは分かる、けど、俺が悲しいのかはわからない。”
彼は、以前自分が言ったことの意味すらもう分からなくなっていた。
なぜ人は涙を流すのか。
涙を流さない自分は人間ではないのか。
人間とは何か、それを知る者はこの世にはいないと知りながら。
カイトはただじっと皆を見ているだけだった。
そして、なんとかけがの応急処置が終わり、ミクが左腕に右手を添えた姿でカイトの方に向かって歩く。
「ごめんね、迷惑かけちゃって。」
「別に…構わない。」
”ありがとう”
その言葉に、彼の表情は全く変わらなかったが…彼の右手がミクの左肩にそっと触れる。
ミクはつらい表情のまま、嬉しそうに笑った。
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