けわしい表情のベニスズメさんは、リンちゃんの方を振り返って、言った。
「仕事、長いあいだ、お疲れ様でしたね。リンちゃん。気をつけて帰ってね」

そして、あたふたとホテルの部屋を出て行ってしまった。

ひとり取り残されたリンちゃんは、しばらくポカンと、ベッドの縁に座ったままだった。
さっきから、手に握ったままのスマホに目をやる。

「うん、サナギがどうかしたのかな。ベニスズメさん、なにあわててるんだろ」
そう思いながら、ふたたび彼女に電話をかけてみようとして、彼女はふと、思い出した。


●おかしいなあ、このスマホ

そういえば…。昨日の夜、時間を確かめようとした時には…。
このスマホはバッテリー切れだったはず。
それが、今は、まだバッテリーの残量は、充分残っているのだ。

「あれ…え? おっかしいなあ。昨日の夜…」
寝ぼけていたのかな?と思いながら、画面を見つめる。

と、その時。
着信音が鳴った。
ミクさんからの電話だった。

ハッとして、電話に出る。ミクさんの声が耳に流れ込んでくる。
「あ、リンちゃん。リンちゃん?」
「はい!」

不安な心に、助けが来てくれたように感じて、リンちゃんは大声で答えた。


●早く、そこを出たほうが…

明るいがちょっと張りつめた感じの声で、ミクさんが聞いてくる。
「リンちゃん、いま、どこにいるの?」

「え? い、いま、ホテルの部屋にいます」

リンちゃんの答えに、どこかホッとした感じで、続ける彼女。
「ああ、そう。そこ、仕事してたスタジオのとこにある、ホテルね?」

なぜ、ミクさんがそれを知ってるのか、不思議だったが…。
「ええ、そうです」
とリンちゃんは答えた。

「そう。リンちゃん、早く、そこを出たほうがいいよ。それから、みんな無事?」

無事…? また、不安な気持ちになってくる。
「え、ええ。あたしは元気だけど。ただ、サナギが…」

通話の向こうで、ミクさんは不安げな声になった。
「サナギちゃん、サナギちゃんは、どうしたの?」(ノ゜ο゜)ノ

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玩具屋カイくんの販売日誌(259) ささげものの攻防 

ミクさん、久々の登場です。でも彼女、何かを知っているのでしょうか...

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投稿日:2015/10/12 00:35:11

文字数:856文字

カテゴリ:小説

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