百鬼夜行
[A]
今宵もそろそろ始めましょう
何処(どこ)とも知れぬ闇の中
鬼火の示すその先へ
案内(あない)は我等にお任せを
[A]
徒然なるまま列を組み
潜む悪行道連れに
彷徨い続ける暗がりは
貴方のほんの一寸先
[B]
さあさ、皆で行きましょう。
どうぞお先に通りゃんせ。
[S]
朱色目玉の雪女　　
闇から生まれる白烏(しろがらす)
黒い座敷の鬼童（おにわらし）
翼をもがれた青天狗　
[S]
みんな皆抜け出せない
百鬼夜行は止まらない
みんな皆帰れない
百鬼夜行は終わらない

[A]
ようやく来たる丑三つ時
宵に集いし異形列
月も花も雪もなし
御神酒(おみき)は既に血潮酒
[A]
祇園精舎の鐘の声
諸行歓喜の響きあり
何所も彼処も無礼講
酣(たけなわ)知らぬ大宴会
[B]
さあさ、皆で潰れましょう
どうぞ宴に入りゃんせ。
[S]
社を忘れた狐たち　
邪道をうねる蛇腹蛇
金(かね)をもたらす猫娘
犇めき蠢く魑魅魍魎
[S]
みんな皆笑いごと
百鬼夜行の隠れ道
みんな皆独り言
百鬼夜行の迷い道

[B]
今宵は何処(いずこ)で逢えるでしょう
貴方も我等と神隠し
[S]
蘇芳晴れ着の轆轤首
紫苑沼には女郎蜘蛛
飴色仮面はのっぺらぼう
浅葱の杯(さかずき)滑瓢(ぬらりひょん)　
[S]
みんな皆戻れない
百鬼夜行は止まらない
みんな皆後の祭
百鬼夜行は終わらない