十五枚目:
私には殺したい程憎い女がいた。
職場の同僚なのだが、
自分が犯したミスを私のせいにしたり、
周りが見てる前で私の悪口を言ったり、
私に関する根も葉もない噂話を広めたり、
事ある毎に嫌がらせをしてきて本当にウザかった。
彼女からの嫌がらせの他に、
日々のストレスもあって、
会社から帰宅しても、心身共にボロボロで全然気が休まらなかった。
寝る前はいつも彼女の事ばかり考えて、
全く寝付けなかった。
精神科に何度か通ってみたけど、医師に伝えても軽くあしらわれるばかりで、私の気持ちが晴れることはなかった。
私は彼女を呪いたくなった。
「早く消えてしまえ」
「悲惨な終わりを迎えてほしい」
「私は、アイツのせいで何もかも失ったんだ。
今も幸せそうにのうのうと生きているアイツが許せない。アイツにはお咎めなしかよ。
なんでいつも私ばかり...」
「死ね、死ね、死ね」
そう願いながら、頭の中で彼女が死ぬ様を連想した。
それから五ヶ月が経過した頃、
彼女の訃報が知らされた。
死因は、他殺だそうだ。
同僚から聞いた話なので、詳細には分からなかったが、私は、ようやく苦痛から解放されたと思い、
ほっと胸を撫で下ろした。
けど、それで終わりじゃなかった。
毎晩、アイツに殺される夢を見た。
首を絞められたり、ナイフで滅多刺しにされたり、
崖から落とされたり、毒殺や銃殺など、
日によって展開と結末は違った。
多分、無意識下で恐れていたんだと思う。
当時付き合っていた彼氏にもその事を伝えたが、
全く信じて貰えなかった。
どれだけ必死に訴えても、誰も助けてくれない現実に失望した。
じゃ、私が悪いのか?
私が、私だけがおかしいのか?
そう思ったりもした。
都市伝説やその手の話には興味があったが、
怪奇現象や霊能力に関しては信じていなかったので、
怪談とかでよく聞く、近くの神社でお祓いをする
といった事はしなかった。
心身ともに疲弊していた私は、
自殺を考えるようになった。
もう、何もかもどうでもよくなった。
家族や恋人、職場の人達に迷惑が掛かるとか、
他人を思う余裕もなくなっていた。
ここは、借りアパートの二階にある狭い部屋。
私はふと、窓の方を見る。
次の瞬間、私はベランダから飛び降りた。
気づけば、病院のベッドの上にいた。
心電図の音で、まだ生きている事を知る。
腕には点滴の針が刺さっている。
色んな思いが頭を巡り、涙が止まらなかった。

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名無しの手紙(十五枚目)

閲覧数:86

投稿日:2023/02/09 14:17:29

文字数:1,024文字

カテゴリ:小説

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