「レン、早く行こー!」

 階段の下からリンの声がする。
 普段は寝坊するくせにこういう時だけは早起きだ。それもこっちは寝坊していないのに急かされる始末。

「楽しそうな寝顔も見てみたいのに……」

 こんな本音を聞かせたらどんな顔するんだか……。
 恥ずかしがるかな? もしかしたら引っぱたかれるかも知れないな。
 どっちにしたって言う気はサラサラない。警戒されたらおしまいだし、人に秘密にしてこその楽しみなわけで。

「レン~! 早くぅ~!」

 リンが下からなおも催促してくる。

「今行くよーっ!」

 と言いつつ、顔はベッドの上に着地。
 まだちょっと眠いのに……。着替えは済んでいるけどさ。
 今日こそは! なんて考えながら寝なきゃよかったかな?
 催促する声からして楽しそうに寝てたんだろうなあ。見たかったなあ。
 普段の寝顔も好きだけど、“楽しみ”の時の顔も見てみたい。
 うなされていたりすると心配になって、それで思わず起こしてしまったのが何回かあったっけ? 不気味な笑いをしているのにも遭遇した事がある。

「あれは不気味だった」

 少し早めに起きて眺めていると不意に悪戯をしたくなったりもする。大抵は溜息と共にやめるけど。嫌われたくないから。



「……」



 ヤバイ。今口元緩んだ。その上戻らないし。

「戻れっ」


 ――パシンッ


 叩くついでに緩んだ頬を両手で挟んでこねくり回してみる。
 戻ったかな? うん。
 いやもうちょっと念入りに……。

「――何やってるの?」

 …………。

「……ふごいタイミングだね」

 見られてしまった……こねてる所を。

「ふふ」
「ふふ?」

 笑いたければ笑えばいい。それこそ思いっきり。そうすれば少しは報われる。たぶん。

「カワイイ♪」


 ……。


 …………。


 はい?


 カワイイって言った今? この人カワイイって言ったよね?

「弟よ! キャワイイぞ~!!」
「かわいい言うなっ!! って、ちょっ」




 ええーーーーーっ!!




「レンかわいい」

 かわいいのはリンだっ。そもそも俺はそんなキャラ属性じゃない! というか、

「なぜ抱きつくんだっ!?」

 抱きついた所じゃない。押し倒されたよ俺。
 う、嬉しいっちゃ嬉しいけど……。
 あったかいし、柔肌だし……って、何考えてる俺っ! リンをそんな目で見るんじゃないっ!

「なぁーーっ!」

 とりあえずもがいてはみるけど効果は薄い。
 胴体のど真ん中に抱きつかれているわけだから、手足をバタバタさせたって振りほどけるはずもなく、振り解くのをリンが許すはずもなく、されるがままの俺。

「ふふふのふ♪」

 なんか楽しそうだしこの人。
 ああ……なんだろうこの一人だけ盛り上がっちゃってる感は。
 恥ずかしいやらなんやらで体温だだ上がりだし。

「暑い……」
「え?」

 そこ胸元から見上げなくていいから。
 天井見上げてなきゃ、ばっちり目合ってたよ。まあ、見えてるのは天井じゃなくて自分の腕だけどね。

「し、重い……」
「む」

 起き上がったのはいいけど下りてよ……馬乗りになる前にさ。

「重いとか酷ーい」
「本当なんだから仕方ないだろ」

 暑い以外は嘘ですごめんなさい。

「もう知らない!」
「あ……」

 退いてくれたのはいいけど、怒らせてしまった。

「はあ」

 誰かこの心境を表す為の曲を作ってほしい……。
 ただこの口が作るのは、旋律にすらならない胸の内から漏れた空気の流れだけ。

「はあ……」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

【小説】リアル・オア・パラレル【01】

レンを主人公にしてオリジナル小説を書いちまったぜ( ̄▽+ ̄
大分暴走すると思いますが、微笑ましく見てやってくれると嬉しいです。
キャラが崩壊しないよう頑張ります。

とりあえずの設定↓
レン・リン:二卵性双子。高校一年生
終わり(少っ

次回! ついにあの人が登場!? レンが乱歩する!! ?
お楽しみに♪( ̄▽ ̄)b

閲覧数:156

投稿日:2010/10/12 23:43:16

文字数:1,500文字

カテゴリ:小説

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