『さぁ 残さず食べなさい』

私が母から言われていた唯一にして最大の約束

そして命令







周りに生きた人はうろつかない,腐臭漂う背徳の館
本当に人は住んでいるのだろうか,と町では噂されている

彼女はソレの中にいた
ソレの中で毎日執り行われる神聖なる儀式
己から汚れを取り除く大切な儀式

晩餐


並べられるのは身の毛もよだつ程の大量の料理の数々
テーブルの前で独り,食い漁る女の顔には満面の笑み
彼女の名前は『バニカ・コンチータ』
この館の主

彼女は,かつてこの世に名を轟かせた
美食家として
彼女にとってはこの世の全てが食材で,この世に食せぬものなど何一つなかった

そんな彼女がこの館に閉じこもる理由
食を愛しすぎたゆえの天罰


周りが呼んだ名前は

『人食い女』

この世の一般的に云われる『食せるモノ』
その全てを食した彼女はあきあきしていた
美食を探し……

そして狂った


彼女が求めたのは

究極にして至高の悪食







『はぁ……』

どうされました? バニカ様

これだから頭の悪い召使は困るのよ
私のこの顔を見て何も分からないの?

どうしました? バニカ様

こっちの顔も見たくないわ
態度の悪いメイドめ


『……お腹が空いたわ
今すぐ食事の用意をしなさい』

しかし,バニカ様
昼食を5分程前に済ませたばかりではないのですか?

『五月蠅いわね!
食されたいの!?』

コックがいません
バニカ様

『一週間程前に新しいのを収穫してきていたじゃない』

もう,おりません

『まぁ,一週間続いただけでも誉めてやれなくもないのかしら……』

どうします?
新しいコック,穫ってきます?
それともとりあえず,ワタシ達が造ります?

『とりあえず造りなさい
その後でコックを穫りに行きなさい』

「「仰せのままに」」







偉大な方
バニカ様
敬い称えるべき唯一にして最大の存在
この世の食物は全てが貴方の為にだけあるのです
だから,ワタシ達は何も食べれなくても平気です
バニカ様
貴方が食し終わった跡のモノを食べればいいのですから
残りが無ければ,皿を食べましょう
それが貴方の教えてくれたこと







お腹が空いた
お腹が空いた
お腹が空いた
お腹が空いた
お腹が空いた
お腹が空いた
お腹が空いた
お腹が空いた
お腹が空いた
お腹が空いた

どれだけ叫んでもお腹はいっぱいにならない
どうして?
母様はいつも云ってたよ

『ヒトはヒトでなくならない限り,お腹が空いて死ぬことはないのよ』

と。


分からない
どうして?
今,私はお腹が空いて死んじゃいそうだよ?







この世の全てを食らい尽くすまで私は死なない
死ねない
私のココロが,胃袋がソレを赦さない
胃袋にはまだまだ空きが沢山あって,ソレが満たされることは未来永劫きっとない

猛毒
どうして皆食べないの?
少し舌がピリピリして,スパイスに丁度良いじゃない?


どうして皆食べないの?
確かにお肉と比べるとちょっと硬いけど,それがいいんじゃないの?


どうして皆食べないの?
そんなもの食べるモノじゃない?
何なのソレ
お腹が空いてるんだから仕様がないじゃない?


甘かったり辛かったり塩っぱかったり苦かったり酸っぱかったり

痛かったり


それこそが食
食の美しさ
舌先を駆け巡る本当の至福
表面だけじゃない
ココロの奥底までもを満たしてくれる最高の儀式

こんな素晴らしい儀式・晩餐は……

絶対に終わらせたりしないわよ?







『はぁ……』

どうされました? バニカ様

『お腹が空いたわ』

分かりました
コックに云いつけましょう



『?』

どうしました? バニカ様

『この料理おかしくなぁい?』

そうでしょうか?
ワタシにはよく分かりませんけど……


「コンチータ様」

『何?
15人目』

「あ,あのですね……
その……」

『早くしなさい
食されたいの?』

「ボクはこの屋敷に来てからまだ一度も休みを貰っていません」

『で?』

「ボクにも家庭と云うものがあります」

『……』

「そろそろ御暇を貰えませんか?」

『……ツカエナイヤツ』

?







バニカ様
それはワタシ達が敬い称えるべき唯一にして最大の存在
ワタクシ達は己の命に代えてでも貴方に御仕え致します
裏切り者?
そんなモノ,おかしいですよ
だって貴方の側で御仕え出来るなんて光栄なことを自ら手放す馬鹿はいない筈で
すから
もしいたとしたらそんな馬鹿には酬いを受けて頂きましょう

「 」







ねぇ,母様
どうして,そんな恐い顔をしてるの?

痛いよ
冷たいよ
熱いよ
寂しいよ
苦しいよ

ひもじいよ


『さぁ,残さず食べなさい』

分かった
じゃあ,この黒い骨も食べて良いんだね?
灰色のお皿も食べて良いんだね?

本当にいいんだよね?
前,食べたらお腹が痛くなっちゃったよ?

ねぇ,母様

……痛いよ







バニカ様

『なぁに?』

本日の夕食でございます

『あら,美味しそうね』




今日のメニューは特別製なのよ?
アノ召使とメイドが造ったのにとっても美味しいの
凄いことなのよ
コレって
今まで彼奴等が造った食事は食べられるようなモノじゃなかったのよ
……まぁ,全部食べるけどね?

色は悪いし,鮮度も悪い
火もちゃんと通ってないからソレの汚れを舌が感じとっちゃう
ものすごく苦いのよ
汚れって……

蒼白く輝いてる今日のオードブルのサラダ
とっても綺麗ね
あの召使によると毛髪らしいわ

白い,汚い形の骨が出てきたわ
食べるけど……
それにしても汚ならしい形の骨ね
これだったらこの前食べたマウスの方が上品じゃない


美味しかったわ
でも,今日の夕飯はやけに少なかったわね
『おかわり』が欲しいわ……


ねぇ
ちょっと
其処の召使さん?

貴方はどんな味がするのかしらねぇ?














『あなたの名前は?』

バニカよ
バニカ・コンチータ

『あなたはワタシ達をどうするの?』

そうねぇ
折角買ったんだもの,すぐに食べるのは勿体ないからまずは使用人にするわ

『ボク達はお母さんのトコに帰れないの?』

……帰れるわよ

『ホント!?』

ただ,今までのお母さんとは違うわよ

『?』

食べることが大好きなお母さん
どぉう?

『……?』




『こんちーた様
本日の朝食です』

ありがと

『こんちーた様
本日の昼食で御座います』

どうも

『こんちーた様
本日の夕食です』

御苦労




召使! メイド!

『は,はい!』

何,寝てるの!?

『いえ,今は夜の2:00です』

『この時間は寝る時間ではないのですか?』

私が夜食を食べたいと思ったから今は夜食の時間なのよ!




召使,メイド

『はい』

御前等の食事は不味よ

『……はい』

コックを連れてきなさい

『?』

御前等を食事係から外すわ

『!』

1年間も大変だったでしょう?

『……』

今日は共に食事をすることを許しましょう

『!?』

ただし,今夜だけ
……今夜だけ







はぁ……

『 』

お腹が空いたわ

『 』

誰か,食事を造りなさい!!


どうして?
私,何かした?
信用してなくもなかった召使とメイドは消えた
何処にいったのかしら?
食材は尽きた
ヒトなんてこの屋敷には最初からいない

屋敷の外に行こうかしら?
そしたらきっと沢山食材があるはずよ
だってこの世に食せぬモノなんてないんだから
つまりは,この世の全ては食物なんだから!!!

でも私は外に出れない
何で? って
それは……

だって皆私から逃げていくでしょう?
だって皆私を嗤い者にするでしょう?
だって皆私を見て,地獄を見たような顔をするでしょう?

だってだってだって……

母様が言ってたんだもの

『良いこと?
絶対にこの館からは出ないこと
もし出たら貴方は一生不幸の身で生きていくことになるわよ』

あの日,母様が留守の時に外へ出た
市場へ行った
御小遣いを全部持っていった
そこで美味しそうな,『黄色』を2つ見つけた
御小遣いを全部はたいて買った
家に持って帰ると,母様は怒った
ものすごく怒られた
怒られて怒られて怒られて怒られて怒られて怒られて怒られて怒られて……

母様は痛かった
痛くて痛くて痛かったけど……


赤くて美味しかった
とっても美味しかった
でも,何だか塩っぱかったのを覚えてる……

骨まで食べたのはその時が初めてだったかな?
ちゃんと母様の言いつけを守ったんだよ!
……偉い?

「 」

誰も何も言ってくれなかった…………














『どうして,そこまでして食べたいの?』
誰かが云ってた言葉


だって,残したら怒られちゃうもの


ただそれだけ







お腹が空いた
お腹が空いた
お腹が空いた
お腹が空いた
お腹が空いた
お腹が空いた
お腹が空いた
お腹が空いた
お腹が空いた
お腹が空いた
お腹が空いた
お腹が空いた
お腹が空いた
お腹が空いた
お腹が空いた
お腹が空いた

これっていけないことなのかしら?
じゃあ,何で?
何で皆私を叱らないの?
どうして皆私から離れて行くの?

私は良いことしてるのよ?
悪いモノを懲らしめてるの

意地悪するモノをなくしてるの
これで皆幸せ
そうじゃない?

そうじゃない……の?







私がその時見たのは私自信の右手
爪が真赤ね
あれ?
何でかしら?
笑顔が零れてくるわね

あははははははは
あっははははははは
あっはっはははははは
あっはっはっははははは
あっはっはっはっはははは
あっはっはっはっはっははは
あっはっはっはっはっはっはは
あっはっはっはっはっはっはっは


お腹が空いたなんて



食べるモノがもうないなんて




こーんな近くにあったのね
私がずーっと追い求めてきてたもの

究極にして至高の悪食


汚れを全く含まない純粋な完璧の存在
こんなに近くにあっただなんて……


『マダタベルモノアルジャナイ』



『コンチータの最期の悪食は彼女自信』
そんなこと云ってるモノは馬鹿ね
大馬鹿モノよ!
食材を乗っける皿の方が賢いんじゃないの?

私は終わらない
終われない
だって……


まだ食べてないがモノいっぱいあるもの




あの召使やメイドもちょっと味見程度に試食しておけば良かったかしら……?







母様
私は今は,何も食せぬ場所にいます
貴方は何処にいますか?
この道を進んだトコロにいるのでしょうか?
きっといます
……よね?

頭の上から差し込んでるこの光
少なくとも,この光の元があるところ
其処にはいないはずですよね

貴方がそんな処にいたら驚きですよ

赦せませんよ







私は貴方を赦しません
貴方は私に愛をくださらなかったから

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

悪食娘コンチータ  ……といえるか定かではないモノ…………

自分の大好きな『悪ノP』様の曲で書かせていただきました

もし、お暇ならば、読んでくださると嬉しいです
あと、良ければ感想などもいただけると更に嬉しいです!


マイワールド爆発中なので読み苦しいところも多々……
いえ、それの塊でしょうかw?

まぁ、兎にも角にもよろしくお願い致します!!!

閲覧数:1,029

投稿日:2011/03/16 21:48:20

文字数:4,616文字

カテゴリ:小説

  • コメント1

  • 関連動画0

  • なのこ

    なのこ

    ご意見・ご感想

    初めまして、なのこっていいます                                     

    とてもおもしろいです!!双子はミクを殺した後コンチータ様の元にきたんですか?コンチータ様は純粋だったんですね・・・                                        

    カイト家庭持ってたのwwwあのカイトがww                                 

    ブクマもらいます                                     
    あ、ユーザーフォローさせていただきます

    2011/05/22 18:44:57

    • アリサ

      アリサ

      感想&ブクマありがとうございます!

      な、な、なんと、フォローまでしていただけるなんて!
      感激です!!

      これからも頑張って行きたいと思います!



      久しぶりに、コレ見ましたw
      『あぁ、コンチータ書いてたなぁ』と少し懐かしいですww
      かなりの黒歴史だぁ……

      そして、今読むと結構グダグダ……
      最初の頃に書いたものは、結構短めです

      時が経つにつれて、だんだんと長くなっていきますww




      自分の中での勝手な設定なのですが、大罪者は皆、根は良い奴なんじゃないか……というものがありまして……
      でも、どっかでちょっと間違っちゃって、悪魔と出会って、最終的には滅んじゃう……みたいな?

      あくまで、個人的な考えですがww



      コンチータでは、全くのギャグバージョンのも書いていますので、気が向いたら読んでくださったら嬉しいd((

      すいません
      何でもありませんorz



      それでは、これからよろしくお願い致します

      2011/05/22 20:50:59

ブクマつながり

もっと見る

クリップボードにコピーしました