きみと出会ったのは偶然でもなく必然でもなく…


「…ってどういう意味なんだろ。
ねぇ、ミク」
そう言って私はスペースキーを押した。
右にスクロールするシーケンス画面。
『あ~~~』
ミクがCの音で声を奏でた。

「そうよね、ミクはしゃべれないんだよね。
う~ん残念」


「じゃ、またね」
私はそう呟くとパソコンの起動を終了した。
パソコンが終了する時、私はいつもミクの壁紙が消えるまで見つめてる。
学校帰りの友達をいつまでも見送る。
そんな気分。



私が彼女を初めて見たのは地元のオモチャ屋さん。
いとこの子どものれいたくんをオモチャ屋に連れて行った時に偶然発見した。
ねんどいろ。
2投身にかわいくディフォルメされたフィギュア。


「かわいいね、これ。
何のキャラクターなんだろう?」

「おねえちゃん、これおねえちゃんと同じ名前だよ?」


フィギュアの足元には手書きポップがあって、こう書いてある。
売り切れ必至!初音ミクねんどいろ!!


「はつねみく?
ほんとだね、おねえちゃんと同じだね」

「おねえちゃん、ピカチュウ!
ぼくピカチュウがいいよ!あれあれ!!」


レジにピカチュウを持って行く。
その時、不意にまた彼女が目の入った。


「おねえちゃん、それも買うの?」

「うん、なんかかわいいしね。
おねえちゃんと同じ名前だし!!」




「なんだ美玖、お前もおもちゃ買ったのか」


お父さんがれいたくんを抱っこして、ニコニコしながらしゃべりかけてきた。


「うん。この子、初音ミクていうんだって。
かわいいでしょ?」

「ふはは、山根未玖(やまねみく)が初音ミクを買うってか!
れいたくんは何を買ったんだい?
おぉぉうピカチュウかぁ、よかったねえ」


最近のお父さんはれいたくんにべったりだ。
ニコニコしながられいたくんと遊んでいる。
そんなお父さんを見て、同じぐらい自分がニコニコしてるのに気付く。
長い髪の毛。
くりくりした瞳。
何かよくわからないけどかわいい衣装。
何より名前が似ている。
私はひどくこの子が気に入ってしまったみたい。


「よろしくね、ミクちゃん」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
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ベッドルームコンソール1

閲覧数:163

投稿日:2010/03/14 16:03:19

文字数:906文字

カテゴリ:小説

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