このまま放っておけば、邪教またはその息がかかった者が
ティエラを狙ってまた村を襲ってくるのは、火を見るよりも明らかだ。
村人の話によると、最近近くの荒野に不気味な神殿が
突如建築されたらしい。
おそらく、そこが邪教徒たちのアジトだと踏んだウィルは
赴くことを決意した。

するとティエラは、ウィルに同行を申し出る。
彼女はかつてより「宝具を持つものは、人の幸せや、世界のためにその力を使わなければならない」と
教育されていたので、今がその時だと思ったのだ。
当然、村人やウィルは止めるように説得した。確かに彼女は
腕っぷしが弱い。しかし、魔法の知識を主に勉強してきたので
その方面で役に立てると主張した。
結局、ウィルのそばから離れずに行動することを心がけ
戦いで死んでも責任は取らないことを条件に同行を許されることになった。
それが冒険者の、掟だからだ。

邪教神殿に向かう途中の荒野で、ティエラは腕っぷしと体力のなさから
迷惑をかけていたが、彼女の魔法による一撃は堅牢な防御体勢を取る魔物を
しとめるほどの威力があった。
彼女が戦い慣れしたころ、不気味な神殿が姿を現した。
とはいえ近くで見ると、陳腐さが所々で見られる。
おそらくは、本格的に神殿を建造したのではない。急造するためにあらかじめ
作っておいた部品を組み合わせたのであろう。

邪教神殿では、邪神を崇拝する者たちや彼らに飼いならされた
魔物たちが行く手を阻んできた。
しかしウィルの剣技とティエラの魔法は、妙にうまくかみ合いながら
神殿の奥に進んでいった。

邪教神殿の最奥にたどり着いたウィルたち。
そこでは信者たちが、高笑いをしていた。
無理もない。自分たちが探し求めていた「六元素の宝具」が
2つまとめて、向こうからやってきたからだ。
信者たちは、宝具を奪うために一斉に襲い掛かろうとしたが
大きな声を聴くと、恐れとともに動きを止めた。
この神殿を取りまとめる、神官がやってきたのだ。
邪教神官は、ここまで来たウィルたちに敬意を表するとして
自らが相手をすることを宣言した。

ウィルとティエラの連携によって、邪教神官に膝をつかせることができた。
信者たちの間に、どよめきが走る。
これまで邪教神殿は、彼の強さによって取りまとめられてきたからだ。
ティエラは投降することを勧めた。邪教を信仰し、自らを誘拐した黒幕とはいえ
人を殺すのは恐ろしい。宝具をあきらめてくれれば、兵士団には通報するが
ここで命を取ることはないと提案したのだ。

しかし邪教神官は、最後の力を振り絞って声を荒げる。
宝具を集め、世界を邪神の理で染めることを誓った彼らにとって
その理想を叶えるためなら、罪をかぶるのみならず
命を犠牲にすることすら、いとわないからだ。

邪教神官は、自らの肉体を犠牲にして上級のデーモンを召喚した。
しかし不完全な状態で召喚されたために暴走してしまい、その力で
周りにいる信者が絶命し、神殿が破壊されそうになってしまう。
ウィルたちは、デーモンを討ち倒すことによって暴走を止めることにした。
暴走し、不完全な状態で顕現したとはいえ上級のデーモン。
ウィルたちは、まさに命がけの戦いを強いられた。

デーモンを倒すことには成功したが、結局戦いの余波により
邪教神殿は跡形もなく崩れ去る。
ウィルたちは、命からがら神殿から脱出することができた。
彼らの脱出劇を、不敵な笑みを浮かべて見つめるものが
いるとも知らずに。

大地の巫女が戻ってきて、村は喜びに包まれた。
ウィルも、この村の規模からするとかなり奮発した報酬を
手に入れることができた。

ティエラは、村を出る決意をした。
宝具を守る力を手に入れて村人たちを危険にさらさないためである。
しかし彼女は村の中で大事に育てられたため、旅をするための知識がなかった。
そこでウィルは、ティエラの護衛をかって出ることにした。
彼自身、ペンダントの出自が気になっていたからだ。

こうしてウィルにとっては初めての、少し賑やかな旅が始まるのであった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

疾風の剣士 後編

ゲームのあらすじを書いたつもりが、小説みたいになりました。
せっかくなので、投稿します。

伏線っぽいものを仕掛けたり、続編を示唆する
終わり方をさせたりしましたが、続きを書く気はありません。
あくまでも、練習用として考えたはずだからです。

閲覧数:280

投稿日:2020/05/03 11:08:47

文字数:1,684文字

カテゴリ:小説

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