すこしふしぎなおはなしです
ある晴れた放課後のこと
日傘を差した少女が言った
「環状道路に気を付けて」

はて　どこかで会ったような　そうでもないような
首をひねりつつ信号を待つ
刹那　轟音とともに
自動車が歩道に突っ込んできた

ラララ……

「へえ　間一髪だったね」と友達が言う
降り出した夕立を軒先でしのいで
ようやく到着したドーナツ屋の行列は
ちょうど目の前で品切れで
駅の方角から16時の鐘の音
いよいよ雨足は強まりだし
「もう帰ろうか」と踏み出した足元に
見覚えのある形の傘
それを手に取って開くと雨音が止んで
気づけば友達は消えていた
辺りを見回して戦慄する
あまりにも青い昼過ぎの空

ああ　これはどういうことでしょう
もし今が15時ならば
さっき目の前で売り切れた
名物ドーナツを買って食べよう

鶏が先か　卵が先か
堂々巡り　言葉とメロディー
回る　因果は回る
円を描いてロンドを踊る

すこしふしぎなおはなしです
ある晴れた放課後のこと
日傘を差して待っている
「環状道路に気を付けて」