5月10日

 昼休み、校舎の屋上。
屋上では、特に友達との約束事がなければ、レンはたいがいキャンパス中央の桜を眺めている。桜から最も近い場所を定位置として。
レンは腕組みをした状態で120cmほどの高さのコンクリートフェンスの上に腕を預け、顎を交差した腕の上に乗せて桜を眺めているのが好きだ。もうすっかり葉桜になってしまっているのに、どうしてこうも引き込まれるようにこの巨木を眺めてしまうのか、その理由がレン自身にも解らない。

 そのレンとは反対側、すなわち桜から最も遠いところから、レンと同じように桜を見つめている少女がいた。ネルだ。なるほど、体と視線は桜の方を向いているが、気持ちはそうではなかったようだ。右手親指がせわしなく動いている。ケータイに何かメモを入力しているようだ。


  届けこの想い

   近づくとキモチを伝えられない
   遠ざかるとコトバは届かない

   君のキモチを知りたいの、でも
   ケータイでコトバを聴く勇気がないの

   どう伝えたらいいの?この想い

   せめて
   君と同じ視線で
   同じものを見ていよう
   君と同じこの時を
   大切にすごそう

   きっと気づいてくれると信じて


 打ち終わってネルはほくそ笑む。
(アタシってば詩人?)
完全な自己陶酔。

 「こらぁーっ、秋田!5限目始まったのにそこで何してる!」
突然の、階段の方からの怒鳴り声。
えっ、5限目始まった?やばっ!
ところがどうしたものか、ネルは反射的に声がした階段の方向とは反対側、つまりレンがいる方に走り出してしまった。走りながらネルは必死に自問する。(えっ、コレって逃げてんじゃん!どうしてこっちに走ってるの、アタシ。レン君に助けてもらおうとしているの?これがアタシの深層心理なの?やっぱこの際、コクっておいた方がいいのかな!ええい、勇気をふるって!!)

「あっ!」
運があるのかないのか、口を開いたその瞬間、何かに躓いて体勢を崩してしまった。
0.1秒後。
(ああっ、このままじゃ無惨に転倒!?レン君にかっこわるい私を見られちゃう!)
0.13秒後。
(ちょ、ちょっと待てよ?このシチュエーションって、もしかして少女漫画とかライトノベルとかでよくあるアレじゃん?レン君動きが素早いから、アタシを転倒寸前のトコでささっと抱きかかえちゃうかも!アタシどうしよう!?きゃっ)
0.16秒後。
(レンくーん… ああっ、こっちを見ていない!)

15分後。
「あっ気がつきましたね。じゃ、もう大丈夫ですね」
ハク先生の声。保健室ということか。
「あ、あれ?アタシ…」
狐につままれたようなネル。
「どうしてここに?なんで寝てたんだろう…」
「屋上で転んだんですってね。そのとき、秋田さんは気絶してしまったみたいですよ」
「確かに、転んだトコまでは覚えているんですけど…」
「それで、レン君があなたを抱きかかえて、ここまで」
(ええええええええええええええええええええええええーーーーーーーーーーーーーーっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっ)

 ネル一生の不覚。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

【小説 桜ファンタジア】 届きそうにない想い

桜ファンタジア制作委員会というのがあって。。。
http://piapro.jp/a/content/?id=nxq2li06a3xwwxam

そこに参加して、petnokaは歌詞を担当させていただいているんですけど、歌詞ばかりではなくファンタジアの設定資料まで作ってしまって。
http://piapro.jp/a/content/?id=h3yv7v4kqyo0w4zl

その流れというか、勢いだけ(笑)でリンレンショートストーリー"ズ"を書いていこうと思っています。。。

コレは第二弾になります。
第一弾はコチラ。。。
http://piapro.jp/a/content/?id=psy4l7int2vczb3o

お暇でしたらば笑って読んでやってください <(_ _)>
あっ、できましたら先に設定資料をお読みになっていただいてから。

閲覧数:442

投稿日:2008/02/23 23:49:05

文字数:1,308文字

カテゴリ:小説

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  • petnoka

    petnoka

    ご意見・ご感想

    move26さま

    ご高覧ありがとうございます <(__)>

    2008/02/25 12:29:31

  • △P

    △P

    ご意見・ご感想

    トップページに出てたから来たよ~

    2008/02/24 00:16:37

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