ライフリング

　生きることに意味がないと知ったのは
　君が死んだ夜のことだった
　ひとかけらのパンも残さなかった君は
　誰の心にも残りたくなかったのかな

　金は便利だ
　そう思わないか
　通貨ではなく尺度として
　君の命の
　価値をはかる奴らに
　僕は小銭を投げつけてやる

　君のいない世界で
　君に届かない歌を作る
　君が聞いてくれないから
　僕はこんな詞しか書けなくなってしまった
　生きることに意味はない
　うるさい、知ってるよそんなこと
　それでも僕が生きるのは
　君みたいになりたくないだけなのかもな


　死ぬことに意味がないと知ったのは
　僕が子供のころのことだった
　夏休みの最初に捕まえた蝉が
　秋の初めには、乾いて死んでしまったから

　金は便利だ
　そう思わないか
　通貨ではなく代用として
　愛の代わりに
　万札を差し出した
　相手の笑顔に違いなんてない

　君のいない世界で
　君に届かない歌を歌う
　君が聞いてくれないから
　僕はこんなしゃがれた声になってしまった
　死ぬことに意味はない
　だから生きろとでも言いたいのか
　それでも僕が生きるのは
　もしかすると死にたくないだけなのかもな


　預金通帳　交通量　コンビニエンス
　爪先の痛み　りんご飴　盗まれた傘
　愛してる　愛してる　愛してる　嘘つき
　パチスロ　曇り空　雨　雨　夏の夕暮れ


　君のいない世界で
　君に届かない歌を作る
　君が聞いてくれないから
　僕はこんな詞しか書けなくなってしまった
　生きることに意味はない
　うるさい、知ってるよそんなこと
　それでも僕が生きるのは
　僕が生きると決めたから
　
　君のいない世界で
　君に届かない歌を歌う
　君が聞いてくれなくても
　誰も聞いてくれなくても

　僕は僕が決めた道を歩き続ける