ある雨の日、魔人は変わらずただただ希薄に時を過ごしていた。
魔人の作る曲に歌はなかった。


変わらない風景を見ながら考え事をしていると、どこからか物音がした。
ただの物音ならネズミでも住み着いたかと切り捨てられたが、
どうやら声のようなものが聞こえる。

魔人の中で他の人の声はもう枯れてしまい、
記憶からも剥がれ落ちそうになるほど遠いものであった。

魔人は怖くなった。

自分だけの世界を誰かにかき乱されるのではないか、
もしかしたら自分を受け入れてくれるのかもしれない、

そんな二つの矛盾した感情に潰されそうになった。

しかし逃げて隠れていたら荒らされてしまうかもしれない。
そう考えて魔人は声のした方へと向かった。

そこには小柄な少女が倒れていた。
天井に穴が開いていることから落ちてきたらしい。

魔人はどうしたらいいのかわからなかった。
天井に穴が開いたのはいい、直せばいいのだから。
問題はなぜ落ちてくるような場所にいたのかということだった。

それに魔人は気の遠くなる時間、人との関わりを絶ってきたのだ。
いきなり天井を破って落ちてきた少女とどう接すればいいのかなどわかるはずもない。


魔人は頭を抱えた。




その後、暇つぶしに覚えた知識を使い少女の手当てをした。
そのまま死なれても始末が悪い。

しかし魔人の悩みの種は消えない。
小柄な少女が簡単に来れる場所に城を作った覚えはない。

どうやって入ってきたのか、
何の目的があるのか、

魔人はしばらく答えの出ない自問自答を続けた。



少女が目を覚ました時にも魔人は自問自答を続けていた。

少女の目に飛び込んできたのは、難しい顔で悩んでいる少年だった。
服は黒のローブで、中背中肉、深緑のぼさぼさの髪、
しかし人ではない部分があった。

それは頭に一対の角があったのだ。

本来なら怖がるはずの姿でも、
魔人の悩んでいる滑稽な姿に思わず笑ってしまった。


魔人は突然聞こえた笑い声で我に返った。
少女が目を覚ましていることがわかると魔人は
何が目的でここへ来たのか、
どうやって来たのか、
疑問に思ったことが口から出た。

少女は落ち着いた後、疑問の答えを簡単に返した。

少女は雨の中で道に迷って途方に暮れている中、
この城を見つけたので雨宿りをしようとしたらしい。
落ちてきたのは入り口を探してもなかったので城壁をよじ登ったかららしい。

魔人はそんな理由で自分の世界に侵入されたということに苦虫を噛み潰した気分だった。
それに人であった頃の記憶が甦って来そうで怖くなった。

魔人は、少女にこの城は恐ろしいモノが出るから早く帰ったほうがよいと言った。
魔人は早く独りになりたかった。

しかし少女は頑として首を縦に振らなかった。
果てには魔人の必死な様に笑いをこらえているようだった。


ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

ありふれた臆病者と永遠の孤独と・・・-2-

不老不死物が好きです。つー

スペクタクルPのThe beast.をリスペクトしてます。

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投稿日:2012/02/02 01:17:51

文字数:1,195文字

カテゴリ:小説

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