♪譜手音シヲ目線

「はぁ!?ふざけるな!!貴様俺との約束を放棄すると!?」
「だからごめんって!ウチだっていそがしーの!」
たまには外に行くのもいいかも、と近くを散歩をしていた。近くの広場でケイの声がするから覗くと、知らないお姉さんと口げんか…かな。
「今度付き合ってあげるから!それじゃ!」
「おい!待て!!くそっ。逃げ足の早い…」
何か約束をしてたみたい。お姉さんは私の来た道と反対方向に走っていった。付き合うって、なんだったんだろう。
ケイもしばらくして、どこかに歩き出した。なんとなくコッソリ着いていってみる。
家から学校以外の道は通ったことがないから、ケイの後を着けるのはなんか新鮮。
ケイは周りをキョロキョロしながら歩くから、かなり離れてギリギリ姿が見える程度の距離を保って歩く。突き当たりの分かれ道で立ち止まって、右に進んだ。わたしもそれに倣う。少しだけ顔を出して確認。
「いない…」
曲がった先は誰もいない。目の前を猫が横切って、正面から気づかなかった細い家の隙間に入っていった。こっちかな。
思ったより長く影の道を歩いて、大きい道に出た。ケイの姿は見えないけど、かすかに道の向こうから声が聞こえた。私が進む方向に猫が先導。道案内してくれてる、なんてよくあるアニメみたい。
「にゃんこ~!おやつだよ~!!」
「今日は隠密修行はないのですか!」
大きなおうち…お屋敷っていった方がしっくりくるような所の前にケイはしゃがんでいた。…また違うお姉さんと一緒。
「今日はオフなの。また今度来たとき付き合ってあげるからさ」
そう言って、お姉さんは大量の煮干しを猫にあげた。野良猫かな、どんどん集まってる。「今度は付き合ってくださいよ!」
「はいはい、わかったわかった」
軽くあしらわれて、ケイは立ち上がった。
いろんなお姉さんに「付き合え」ってもしかして、ケイって女たらし?
って。ケイがこっちに来る!隠れなきゃ!!そろそろ帰るのかな。
ベタだけど、電柱の後ろに隠れてやりすごす。ケイは唇を突き出してつまんなそう。たまに立ち止まって素振り?の動きをしてる。
そんなケイを見てると、今度はまた違う女の子が、しかも自分からケイに近づいてきた…
「け、ケイ君?」
「あぁ、ヨドミ殿!お久しぶりです!!王はご一緒ではないのですか?」
「兄ちゃんは、…足の小指骨折したとかでお家で寝かせています」
「なんと!どうされたのですか!!」
「えっと、うぅ…言いにくいんですけどごにょごにょ」
何を話してるんだろう?気になるけど女の子の声が小さくて聞こえない…
「それは災難でしたね、しかも敵を庇うなどと王はなんと懐の深いお方…!」
「えっ、えっ。ほんとに全部兄ちゃんが悪いだけで…」
「いやいや、言わずともわかりますよ!流石王です。そういやヨドミ殿、俺にお声かけくださるとは、何か用があったのでは?」
「と、特にないの!兄ちゃんのこと知らせたかっただけで。忙しいところ引きとめてごめんね」
また!と別れたケイの後を追いかける。ケイの行く先女の人ばっかりだ。もしかしてモテるのかな。カノジョとかいるのかな。わたしケイのこと知ってる気になってたけど、わたしの前でのケイしか知らないんだ
「どうしたいの、わたし」
「あーッ!姫サマ!!何をされてるのですか!!」
やば!声に出ちゃってたんだ!気づいた時にはケイが目の前に立ってて
「どうされました?」
「あ、…ぅ、えっと」
そんな跪いて上目遣いしないでよ!ストーカーしてなんて言えない!
「…散歩だお。ちょっと道迷ったりして疲れちゃった」
「なんだそうでしたか!では、失礼します」
腕を引かれたと思ったら、あっという間にお姫様抱っこ
「な、何するんだお!!」
「一緒に帰りましょうか」
ニカッ、っていつものケイの笑顔。この表情は、今日初めて見た。私だけの、とか自惚れてもいいかな


「ケイってさ、シヲちゃんといるとき一番楽しそう」
「なんで解るんだ!?霊感か?」
「…馬鹿、顔見てたらわかるよ。双子じゃなくても」

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  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

ようこそ☆亜種藍荘へ! 27

出てきた女性は、浅箴くのい、仁紋音イチ、莫音ヨドミ

お久しぶり投稿

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投稿日:2013/03/06 21:21:50

文字数:1,675文字

カテゴリ:小説

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