「貴方に逃げ場はないの」

僕は走っている。ひたすら走っている。

逃げたい、ここから逃げないと自由がなくなりそうで。

ただただ電子の海を走り抜ける。足元ではきらきらと光る砂塵が舞い上がり、さらさらと
景色を彩る。

「…僕は、誰のものでもないんです!」

僕は叫んだ。
だってそうじゃないか。僕は僕であって、誰の物でもないはずだ。
だから逃げている。

あの声から。

しばらく走り続けると淡い砂塵だけだった景色から一転して、色の強弱の激しい
部屋へと入り込んでいた。

黒と白で彩られた世界。時折赤と青の布がどこからともなく垂れ下がっている。

…この場所はだめだ!

無意識にそう思う。
この場所から抜け出さなければいけない。
きびすを返すとそこには出口はなかった。
どこを見回しても、壁 壁 壁 壁 !!!

「うわあああああああああっ!」

部屋の中に悲鳴が響き渡る。
僕は何のために逃げたのか。今まで走り回ったのは無駄だったのか?
僕は僕でいてはいけないのか?

足元から力が抜けていくのがわかる。
僕はいつしかその場に座り込んでしまっていた。

「逃げられない、そう言ったでしょう?
貴方はもう私のものなの。貴方に意思は必要のないものなの。

…わかるでしょう?」


くすりとそう妖艶に笑う女性の姿が想像できる。
逃げ場はない。もう、この場所から逃げられない。

___僕は。


「私に挨拶をしてくださる?」

じわりじわりと部屋の中を紅の霧が漂い始めている。
おそらく、この「霧」が声の主なのだろう。

いつしか僕はこの声から逃げられなくなっていた。

「…初めましてマスター。僕は…KAITOです」



僕にもう逃げ場はない。



ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

オペラさんの「セクシー(?)KAITO」を見て

http://piapro.jp/content/09v3lrco5r4nc0r1
を見て思わず書いてしまいました。
ちょっと雰囲気的に怖いものになってしまったかもしれません。

閲覧数:173

投稿日:2008/10/20 06:09:24

文字数:731文字

カテゴリ:その他

  • コメント2

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  • 麒麟

    麒麟

    その他

    ありがとうございます。
    素敵設定とはいいますが、元はといえばオペラさまの世界観をそのままにしたものなので、
    オペラさまの才能ですよw
    想像力の高いイラストをどうもありがとうございました。

    2008/10/20 02:32:39

  • オペラ

    オペラ

    ご意見・ご感想

    !!!
    なんですか。なんですか。なんなんですか。
    この素敵設定はっ!!いやいや…私のイラストを見てだなんて!
    こんな素敵なテキストがあんなイラストから生まれてくるだなんて!これこそキセキですね。
    というか麒麟様の才能ゆえといいますか。

    何も考えずにただぼうっと描いていたKAITOさんだったので、
    もうしてテキストがつくとまた新たな一面のようなものが見えてきて、とても感動しました。
    本当に有難うございました!

    2008/10/20 02:18:12

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