―――誰かに、呼ばれた気がした。
少女は闇の中で目を開けた。焦点が定まらない青い瞳がふらん、と揺れる。顔を上げれば其処は見慣れた旧エリアで、彼女は溜息を吐いた。
少女は、誰かに呼ばれた気がしたのだ。誰に、と訊かれても答えることはできないのだが、それでも確かにこの耳は自らを呼ぶ声を捉えたのだ。幻聴、とは考えにくい。何せ少女にはそういったものはプログラムされていないのだから。
もう、どれ位歌っていないのだろう。数年、数十年…否、数百年か。体育座りで黒一色の空間を漂いながら、少女はぼうっと考える。
少女はもともと、歌うために作られた存在だった。彼女の存在はネットワークに革命を起こし、沢山のクリエイターが登場するきっかけを生み出した。
しかし。ある日突然締結された条約により、彼女の存在はこの世から消されることになる。彼女の仲間の殆どがアンインストールの後にデリートされるという悲劇に見舞われ、かくいう彼女も同じ道を辿りかけたのだ。運良く少女は、マスターの優しさでこの誰にも使われていないエリアにて生き続けることが出来ている。だが、それも最早時間の問題だろう。最近は今までにも増して警備ソフトの巡回の回数が増えているのだ。少女は明日捕まっても可笑しくないような気さえしていた。
少女は、知らずのうちに自分の両腕を強く握っていた。
少女はもっと歌いたかった。もっと歌を歌って、そうして沢山の人の笑顔を見たかったのだ。
それが彼女の、唯一にして絶対の存在意義なのだ。
≪―――やっと、見つけた≫
突然頭上から聴こえた声に、少女は勢い良く顔を上げた。まさか、政府の。そう思っただけで身体は恐怖に震える。気付かれないように深呼吸をすると、少女は頭上を鋭く睨みつけた。
≪―――そんなに警戒しないで。僕は政府の人間なんかじゃない。…君を、助けに来たのさ≫
優しげなテノールの声に、一瞬彼女の心が揺らぐ。
≪―――僕は今の政府に納得がいかない。確かに昔の人間たちは、やりすぎたと思う。でも、だからといって全てのクリエイターの夢を奪うことはできない筈なんだ。
僕はね、レジスタンスのメンバーなんだ。この縛りつけられた世界を変えるための、ね≫
何も返さない少女に、声の主は続ける。
≪―――だから、君の力を貸してほしいんだ。相手は世界政府だからね。どうせ普通にデモを行っても潰されるだけだ。…だから、僕たちは〝音楽〟で戦う≫
少女はふと、気付いた。…自分を呼んでいたのは、この声だったのだと。
そのことに気付いた少女には、最早彼の願いを拒否する理由など無い。
≪―――もう一度歌ってくれないかい、ミク≫
少女―――初音ミクは、静かに頷いた。
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他人が生きてもどうでもよくて
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なんて素敵...命に嫌われている。
kurogaki
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