<Dear My Friends!第2期 第32話 思い出作り>

 マカの行動は実に早かった。一国を半ば制圧する勢いのある“一軍”である“テイマー軍”を、たった1週間で隣国に引き揚げさせてしまったのだ。無論、移動が厄介な食料、機材はそのまま放置され、搭乗型ギアや無人ギア等は、テイマーのための再起動を禁止された状態で、ベースキャンプ跡地などに残されており、UTAUによって再利用する目的で管理されていた。

 はっきり言うと、時間短縮のため、軍用機などで“人だけ”隣国に輸送させてしまったのだ。無論、ヤマト国にはUTAUだけでなく民間人も、生活や商いを行っていたので、この1週間で、かつてのヤマト国は活気を取り戻すきっかけを作って貰った事になった。

 無論、特にUTAUにも民間人にも“恩讐”がないと言えばウソになるが、ミゥからの直接の声明及び政府からの公式見解等、この1週間で行われた政治的展開は、非常に迅速であり、人心についても、ヤマト国ならではの“混乱を一刻も早く沈静化し、復興を願うことを最優先にするべき”の声で一致し、恩讐については、この引き揚げが終わった後、政治的に隣国と話し合う事に帰着した。

 実は、この展開に一番驚いていたのは、無論ミゥであり、UTAU側全員である。あれだけ優勢極まる状況まで追い込んで置いた一軍を、確かに時間跳躍の素材という大事な素材であっても、少女一人とミゥの力のためだけに、あっさり全部を撤収させてしまったのである、自分達の犠牲と苦労は何だったのだ、内心、そう思っていた。だが、イアさんとルカ姫には申し訳ないが、自分達にとってもこの国にとっても、明らかに為になる取引だったので、全員黙っていた。

 さて、テル側の面々だが、ミズキ達と合流して事情を聞いたときからわかっていた展開とはいえ、やりきれない気持ちで一杯だった。特にルカ姫の落ち込みようは、当初酷く、あの明るいルカ姫から想像できない位、じめっとしていた。

 イアは材料として使われてしまう、これはもはや変えられない事。だから二人以外の全員が、このゴタゴタが終わる1週間、最終日にベースキャンプ『デンカガイ』に帰ってくる事を条件に、ルカ姫とイアに、このアキバを含めて1週間で帰ってこられる地域で『思い出作り』をする事を勧めたのだ。

 アキバ周辺を含め、各地区には激戦地区もあれば、チンシャンが当初寄ることになっていた中立地域の飲食店街、他、少ないながらも様々なお店もあったのだ。

 お金はUTAU側が用意してくれた。ルカ姫は泣きはらした顔だったが、イアの言葉で頷き、1週間、イアと遊ぶ事になった。マカの勧めで、残党兵に狙われないように、チンシャンを護衛に付けてくれたのだ。チンシャンの存在と言葉があれば、そのような問題は起こらないからだ。移動用の車はUTAU側が用意してくれた。運転手は彼女だった。

(ヤマト国 オーエド地区 アキバ ベースキャンプ『デンカガイ』)

ルカ姫:あ、あの、心から嬉しいんだけど、本当にいいんですか? こんな急がしい1週間、私たちだけこんな遊びに行って…
テル:構わないよ、忙しい事は全部UTAU管轄の事で、どのみち我々は、簡単な手伝いしか出来ないから
ルコ:そう、狂うほど忙しいのは、我々とテイマー側と政府だ。君たち二人は、しっかりと思い出作りしてきなさい。それが君たちの仕事だ。一番近い間柄であるんだから

イア:ありがとうございます
ルカ姫:感謝します

ミズキ:まぁ、あのマカの変貌ぶりというか、これまでの我々への当たり方とは全然違うので、驚いているんだけど。イアさん? 貴方の事は、どういう意味合いであれ、大切にしてくれ、との助言もあったからなんだけど…。チンシャンまで護衛に付けてくれたし
チンシャン:私の事は気にするな。ドライバーも護衛も何でも引き受ける。それでこれからの関係が少しでも治るのなら、安い物だ。マカの為では無い。私自身のためだ。私も、君たちと一緒に、過去のアキバに行くつもりだからな。同行するメンバーと最初から喧々ガクガクは嫌だからな。流石に…

イア:では、1週間、戻って来られる範囲ですが、遊びに行ってきます
学歩:ああ、たっぷり遊んでくるでござるよ
リン:しっかり遊んできてね
レン:二人とも、ルカ姫を頼んだよ?
ルコ:マップなどはチンシャンのタブレット端末に入っているから、困ったら彼女に聞いてくれ

ルカ姫:では、行ってきます!
イア:行ってきます
チンシャン:では、行くか

 こうして、『思い出作り』がスタートしたのだった。

***

(ヤマト国 オーエド地区 アキバ周辺 中立地域商業区への移動中 車内)

 ブロロロロ…

 車はチンシャンのコレクションのガソリン車、というわけには行かなかったのは言うまでも無い。彼女がバイクで来た時に言っていた通り、ガス欠は遠隔地では命取りであり、インフラも無いからだ。

イア:あの、チンシャン? 運転しづらくない?
チンシャン:大丈夫だ。これでも元テイマー側の指揮官だ。ほぼ全ての移動用車両は操縦できる。安心しろ
ルカ姫:ま、まぁ、あのガソリン車まで運転できるのだから、そうでしょうね

チンシャン:ところでルカ姫、どうにも不釣り合いだから、一応訊きたいのだが、なんで“姫様”と呼ばれているキミが、ずっと昔に存在していた“ガソリン車”を知っているのだ? キョウも言っていた通り、この車を今の時代で知っているのは、こだわりのある私か、よほどのマニアか、技術者くらいだぞ?

 ルカ姫は、もう、話したくて仕方ない“冒険大好き人間”の血が騒ぎ、悲しい顔が吹き飛んで、チンシャンに元気よく語り始めた。

ルカ姫:そっっっれはですね~♪ 私が、この世界かわからないけど、たぶん昔だと思うアキバに行って事があるからなんですよ~♪

 キキィィィ!!!!!!

イア:!?
ルカ姫:うわ!

チンシャン:そ・・・・・それは本当か!!!!!!!!

ルカ姫:!? は、はい・・・・・
チンシャン:な、なら、“カリマ”という男が有名になってなかったか!?
ルカ姫:カ、カリマ!? 滞在時間が短かったから、そこまで詳しくないけど…
チンシャン:な、なら、政府に何か、大きな動きでもなかったか? その、ここで見たことがある“ギア”とか“テイマー”とか、そういう言葉を、“テレビ”、で見なかったか?
ルカ姫:え!? 私の仲間の魔法使いとか剣士が、アキバの街道で大立ち回りしても、見ていた人を“見せ物”程度に思わせる事が出来た位だから、そういうのは、いなかったんじゃないかなぁ…

チンシャン:・・・そうか・・・・なら、そこは、おそらく、“違う世界の過去のアキバ”だと思う

イア:・・・なんで、そうなるんですか?

チンシャン:名前とやったことだけになるが、その『カリマ』という博士が、我々、テイマーやギアを研究開発し、そして、この国や我々近隣国を巻き込んだ大乱を引き起こすように政府に力を与えた、全ての『元凶』。そう言い伝えにあるからだよ。その運動が、アキバから始まったそうだ

ルカ姫、イア:え・・・・・・えぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!

(続く)

CAST

イア:IA-ARIA ON THE PLANETES-
ルカ姫:巡音ルカ
魔導師アペンド:初音ミクAppend
魔導師テル:氷山キヨテル
僧侶リン:鏡音リン
勇者レン:鏡音レン

異国の剣士 神威学歩:神威がくぽ
裁判官 勇気めぐみ:GUMI

ヤマト国からの旅人三人組
瑞樹(ミズキ):VY1
勇馬(ゆうま):VY2
兎眠りおん(りおん):兎眠りおん

ミゥ:Mew

欲音ルコ(ルコ):欲音ルコ

唄音ウタ(デフォ子):唄音ウタ
桃音モモ(モモ):桃音モモ
雪歌ユフ(ユフ):雪歌ユフ

義 井具蔵(ヨシ イグゾウ)(イグゾウ):某演歌歌手

ゾラ・キョウ(キョウ)=生まれ変わったルォ:ZOLA PROJECT (KYO)

チンシャン:某女性中華ボカロ
マカ:某少年中華ボカロ
ティエンイ:某女性中華ボカロ(ルォの姉(こちらが本家“ルォ・ティエンイ”で、女性中華ボカロになります))

その他:エキストラの皆さん

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

Dear My Friends!第2期 第32話 思い出作り

☆オリジナル作品第16弾である、「Dear My Friends!第2期」の第32話です。

☆ここから先の数話は、イアとルカ姫、そして護衛のチンシャンの『思い出作り』の話です。でも、その前に、

☆第1期、第2期、通しての、全ての元凶のカミングアウトです!

閲覧数:106

投稿日:2015/05/13 16:35:45

文字数:3,396文字

カテゴリ:小説

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