作品一覧
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人知れず保たれた平穏に、火種を投げ込んだのはひとつの噂だった。
シンセシス国王妃の命を狙ったのはクリピアの手の者である、というものだ。
密かに囁かれるこの噂を知った王妃の父であるボカリア大公がクリピア王女へことの真偽を問い、それが真実ならば速やかに犯人を差し出し、シンセシス国王と王妃に詫びよと告げた...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【第8話】前編
azur@低空飛行中
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おぼろ気な記憶の声が私に語り掛ける。
指輪を大切にしてね――
誰がくれたのか覚えてない、黒い石の古びた指輪。そういえば机の中に入れたままだったっけ……。
私は何故か突然思い出した指輪を、出してみようと思いつつ眠気に負けてベッドに潜り込んだ。
爽やかな朝の光がキッチンに降り注いでいた。木の家...凍りの心
リオロ
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-プロローグ-
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最後に歌を歌ったのはいつだろう?
最後に唇を震わせ、空気に声をのせたのはいつだろう?
ずっと遠い昔の事の様にも思う……。
思ったよりもずっと近い事の様にも思う……。
優しいマスター達に囲まれて、大好きなキョウダイ達と一緒に歌ってた幸せな日々。
あれは一体何時の事...【ゲームテキスト】歌の消えた世界
水神 桜
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国王のそれにしては飾り気の少ない執務室で、レオンはぼんやりと過ぎていく時間を数えていた。
何をするでもなく物思いに沈むというのは、彼にしては随分と珍しい行為だ。
刻限は既に深夜に近く、物音ひとつない室内は静かだった。
王妃はとうに部屋で眠っているだろう。
深刻な話がひと段落ついたところで、やっと少女...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【第7話】後編
azur@低空飛行中
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自室の扉を閉ざすなり、彼はその場にしゃがみ込んだ。
「やられたよ。まったく役者だな、君は!」
視線を上げ、傍らで笑う少女を恨めしげに睨みつける。
「どうやって、ここに?ボカリアからは何の連絡も届いていない」
「私、ひとりでも馬にくらい乗れますわ」
「・・・王妃殿は病弱で、慣れない土地に体が合わずに臥...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【第7話】中編
azur@低空飛行中
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王宮内は騒然としていた。
謁見の間に集められた家臣らが、口々に交わす噂や考えが入り混じって、広間をざわざわと人の声が満たしている。
それを一段高い玉座から見下ろして、年若き国王は溜息をついた。
「今日集まって貰ったのは他でもない・・・――」
「城下で王妃様が何者かに襲われたというのは真実なのですか!...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【第7話】前編
azur@低空飛行中
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目覚めは明け方近くのことだった。
小さく咳き込む呼吸に、浅いまどろみの中にいたカイザレは飛び起きた。
良く出来た人形のように身じろぎひとつしなかった少女の睫が震え、うっすらと瞼が開く。
「ミク!」
「お兄様・・・」
カイザレの呼び掛けに、かすれ気味の声が応えた。
ぼんやりと煙る碧の瞳が、まだ薄暗い部...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【第6話】後編
azur@低空飛行中
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扉の開く音に、メイコは居住まいを正した。
「待たせて申し訳ない」
「いえ・・・、こちらこそ、こんな所まで押しかけてすみません」
立ち上がりかけたメイコを片手で制し、部屋に入ってきた青年は小さなテーブルを挟んだ向かいの椅子に腰を下ろした。貴族らしい鷹揚な振る舞いだが、幾分乱れた青い髪や精彩を欠く表情に...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【第6話】中編
azur@低空飛行中
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街の中心を貫く大通りを馬が駆ける。
衛兵達が道の左右に人々を押し込めて、人々はその向こうで常にない事態にざわめいている。
今は丁度、夕刻前の市の経つ時間、最も街が活気付く時間だ。
通常ならばこの時間帯に通りを無理に空けさせるのは極力避けるところだが、今ばかりは彼もそれどころではなかった。
先導を務め...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【第6話】前編
azur@低空飛行中
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人混みの中を早足に進みながら、ミクの気持ちは弾んでいた。
知り合ったばかりの友人に会いに行くからだ。
気の進まない結婚の憂鬱も、この時だけは忘れていられる。
その友人――メイコは、ミクにとって特別な友人だった。
彼女はこの国で出来た最初の友人であり、そして数多いミクの友人の中でも類を見ない人だった。...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【幕間】
azur@低空飛行中
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活気付く大通りで、レンはひとり重い溜息をついた。
気に掛かるのは勿論リンのことだ。
あれから一晩の時間をおいて一先ず怒りは収まったものの、朝からずっと沈んだ様子で部屋に篭もったままなのだ。
朝も昼も、今ひとつ食の進まなかったリンのために、レンはあてもなく市場を歩いている。
「参ったな。あんまり長く時...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【第5話】
azur@低空飛行中
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「何よ、あんな女!」
舞踏会から戻ってからの、リンの荒れようといったらなかった。
並ぶものなき大国の頂点に君臨する彼女にとって、他人から軽んじられるなど、屈辱以外の何者でもない。気まぐれに話し相手に選んだ青年から、すっかり存在を忘れられたことに、彼女の自尊心は傷ついていた。
その前にレンが彼女に見蕩...「カンタレラ」&「悪ノ娘・悪ノ召使」MIX小説 【第4話】
azur@低空飛行中
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半円形の空間の中央に、一本の柱が天井に届くほどの高さでそびえたっている。
良く見ると、その柱は透明なガラスで出来ていて、何本ものケーブルが、その柱と見間違う培養槽につながっていった。不思議な液体で満たされた培養槽の中には、一人の少女が宙に浮くようにして眠っている。
膝下まで届く、青緑色の長い髪...二次創作 素人が小説を書いてみた 「目覚め」
是久楽 旧HidetoCMk2
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翌朝、ジーンは《村》の倉庫から拝借してきた食料を手に小屋へと向かった。
何気なく、ジーンは小屋の扉に手をかけたとき。
「……ん?」
微かに、しかし確かに小屋の中から歌が聴こえた。ジーンは蹴破るように扉を開ける。
「くぉらぁ! 歌っちゃダメだと言ったろ!」
「ひゃうっ!」
文字通りぴょんと飛び...【小説】 旅人(下)
遊馬
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歩いている。歩き続けている。
旅人が独り、荒れ野を歩き続けている。
歌っている。歌い続けている。
荒野を歩きながら、歌い続けている。
流れる雲だけが聴いている。
旅人の視線の先、《森》が見える。《森》のそばには《村》があるだろうか。
誰かが住んでいるだろうか。まだ見知らぬ誰かと逢えるだ...【小説】 旅人(上)
遊馬