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ミュージカル『RENT』は、不思議な作品だった。『ラ・ボエーム』とは、同じようでいて、違う。『ラ・ボエーム』が十九世紀半ばのパリを舞台としているのに対し、『RENT』の舞台は二十世紀末のニューヨーク。百五十年でこんなに色々変わってしまったのかと思えるところと、ああ、やっぱり同じ話なんだと思えるとこ...
ロミオとシンデレラ 第十七話【一歩一歩、一言一言】
目白皐月
巡音さんと話をしたその日の夜、俺は姉貴に日曜の予定について訊いてみた。
「日曜? 出かける用事も無いし、家にいるつもりだけど」
それが、姉貴の返事だった。
「じゃ、その日は家にいるんだ。俺、日曜に学校の友達を家に呼ぼうと思ってて」
「邪魔だから出かけててほしいってこと?」
「逆。家にいてくれ」
...アナザー:ロミオとシンデレラ 第十三話【来て一緒に歩こう】
目白皐月
その日の夕食の時間――お父さんは仕事、ルカ姉さんも仕事、ハク姉さんは自分の部屋、したがって、お母さんとわたしだけ――の時、わたしはお母さんに、日曜の予定について話すことにした。
「次の日曜は、図書館で調べ物をしようと思っているの」
図書館で調べ物は、前から度々やっているから、変に思われないはずだ...ロミオとシンデレラ 第十六話【道は歩くにつれてできるもの】
目白皐月
図書館に着いたわたしは、座席に座ってひとしきり勉強した。集中しきっていたため、時間の経過に気づかず、気がつくと閉館の時間になっていた。いけない、もう外は暗くなりかけている。荷物をまとめ、わたしは帰路についた。
帰り道では、行きのような妙な人に遭遇することはなく、家まで真っ直ぐにたどり着いた。玄関...ロミオとシンデレラ 外伝その七【ある日のアクシデント】後編
目白皐月
注意書き
これは拙作『ロミオとシンデレラ』の外伝です。
リンの長姉、ルカの視点で、彼女が十五歳の時の話です。
この話に関しては、『ロミオとシンデレラ』を第十四話【鏡よ、答えて】までと、外伝【わたしはいい子】を読んでから、読むことを推奨します。
なお、ルカさんの性格は、【わたしはいい子】の時...ロミオとシンデレラ 外伝その七【ある日のアクシデント】前編
目白皐月
何とか電車には間に合い、遅刻もせずに済んだ。ああ良かったと思いながら教室に入る。……あ。
巡音さん、今日は来ているんだ。自分の席で、今日も本を読んでいる。もう大丈夫なんだろうか。
「おはよう、巡音さん」
声をかけると、向こうは驚いた表情でこっちを見た。弾みでぱたんと本が机の上に落ちる。……ガル...アナザー:ロミオとシンデレラ 第十二話【雪の中で咲こうとする花】
目白皐月
お母さんはまだ心配そうだったけれど、わたしはもう大丈夫と何度も言って、この日は学校に行った。
学校に着いて教室に入ると、わたしはいつものように持ってきた本を広げた。そう言えば、この本は何だったっけ……。思わず本の表紙を確認してしまう。ガルシンの短編集だった。……なんでこんな本、持って来ちゃったん...ロミオとシンデレラ 第十五話【その耳に届くただ一つの調べがあれば】
目白皐月
「……何だこりゃ」
俺は思わず呟いていた。目の前にあるのは、巨大な茨の藪。そして、道はその茨の中に消えている。
「この先に行けってか?」
目の前の茨には、鋭い棘がびっしり生えている。こんなのに触ったら手がズタズタになりそうだ……そう思いながらも、俺は手で茨に触れてみた。……あれ。
茨はあっさり...アナザー:ロミオとシンデレラ 第十一話【目覚める必要】
目白皐月
夢の中で、わたしはタイスになっていた。場所はタイスの部屋。中央に大きなベッドが置いてあって、わたしはそこに座っている。
どうしてわたしは、ここにいるのだろう? 考えてもわからない。わたしは立ち上がって、部屋の中を歩き回った。がらんとしていて、ほとんど何もない。壁際に、大きな鏡がかかっているぐらい...ロミオとシンデレラ 第十四話【鏡よ、答えて】
目白皐月
注意書き
これは、拙作『ロミオとシンデレラ』の外伝です。
リンの継母である、カエ(オリジナルキャラ)の視点で、第十一話【冷たくもなく、熱くもない】のサイドエピソードとなっています。
したがって、『ロミオとシンデレラ』を第十一話まで読み進めてから、読むことを推奨します。
【母の苦悩】
月曜...ロミオとシンデレラ 外伝その六【母の苦悩】
目白皐月
火曜日。めまいは治まったので、学校に行こうとしたのだけれど、お母さんに止められてしまった。
「昨日倒れたのよ。リン、大事を取って今日も休みなさい」
「……もう平気よ」
「いいから、今日は家にいなさい。学校には連絡しておくから」
結局、わたしは休むことになってしまった。何だかちょっと後ろめたい。朝...ロミオとシンデレラ 第十三話【わたしの魂は空虚で】
目白皐月
注意書き
これは、拙作「ロミオとシンデレラ」の外伝です。
オープニングはミクが高一の時で、そこから子供のころを回想するストーリーとなっています。
【ミクの思い出】
日曜日。わたしは、ふと思い立って、部屋の片づけをすることにした。わたしの家では定期的にお手伝いさんが掃除をしてくれるのだけれど...ロミオとシンデレラ 外伝その五【ミクの思い出】
目白皐月
注意書き
これは、拙作『ロミオとシンデレラ』の外伝です。
クオとミクが中学三年の時のエピソードで、クオがミクの家に預けられたばかりの頃を書いています。
【クオの決意】
「クオはどこを受験するんだ?」
俺が伯父さんの家に預けられて数日後、伯父さんは俺にそんなことを訊いてきた。
「実はちょっと...ロミオとシンデレラ 外伝その四【クオの決意】
目白皐月
月曜日、登校してきたわたしは、リンちゃんの席が空なのに気がついた。……いつも、わたしより早く来るのになあ。お手洗いにでも行っているのかな。
自分の席に座って、わたしはぼんやりしていた。普段はリンちゃんとお喋りしている時間。ちょっと手もちぶさた。
結局、始業のベルが鳴る時間になっても、リンちゃん...アナザー:ロミオとシンデレラ 第十話【ミクの苛立ち】
目白皐月
その日の昼、ミクからメールの着信があった。見ると、「今日のお昼、一緒に食べない?」と書かれている。ミクからお昼のお誘いか……。
ミクは大体いつも、昼飯は巡音さんと一緒に自分の教室で食べている。故に、俺に声がかかったということは、向こうに何か用事が入ったんだろう。……俺っていざという時のためのキー...ロミオとシンデレラ 第十二話【クオの当惑】
目白皐月
月曜の朝、登校してきた俺は、学校の校門のところに、見覚えのある車が止まっているのに気づいた。あれは巡音さんのところのだ。
見ていると、運転手さんが車から降りて後部座席のドアを開けた。車の中から巡音さんが出てくる。運転手さんは一礼して車に戻り、そのまま発進して行った。巡音さんは、校舎に向けて歩き出...アナザー:ロミオとシンデレラ 第九話【凍るか、燃え上がるか】
目白皐月
結局、日曜日は一日ぼんやりとして過ごしてしまった。そして、次の日。月曜になっても、気分は晴れない。
「リン、ちゃんと食べないと駄目よ。昨日もろくに食べてないでしょう?」
お母さんにそう言われたけれど、わたしは食が進まなかった。お父さんがいないのをいいことに、わたしは朝食を半分以上残して、席を立っ...ロミオとシンデレラ 第十一話【冷たくもなく、熱くもない】
目白皐月
注意書き
これは、拙作『ロミオとシンデレラ』の外伝です。
外伝その二『ママ、かえってきて』から、三年後のハクを書いたもので、こちらもハク視点となっています。
三年生になったので、少し漢字が増えました。
【やさしいうそと、むごいうそ】
あたしたちの、新しいママだという、カエさんという人が来て...ロミオとシンデレラ 外伝その三【やさしいうそと、むごいうそ】
目白皐月
日曜日がやって来た。今日は外出の予定はない。家で本でも読むか、オペラのDVDでも見てようかな……そんなことを考えながら、わたしは階下に降りて行こうとして、凍りついた。食堂から、お父さんとお母さんの話し声が聞こえてくる。ううん、これは、話しているんじゃない。
……喧嘩、しているんだ。
「朝からそん...ロミオとシンデレラ 第十話【嵐】
目白皐月
その次の日の昼休み。俺は購買部でサンドイッチとおにぎりを買うと、校庭でそれを食べながら音楽を聞いていた。ちなみに今日も聞いているのは『RENT』のサントラだったりする。何度聞いても『RENT』の曲はいい。
食べ終わった後も、俺はずっと『RENT』を聞いていた。……あれ、誰か来たぞ。
顔を上げる...アナザー:ロミオとシンデレラ 第八話【芸術家の暮らし】
目白皐月
帰宅すると、家庭教師の先生はもう来ていた。制服を脱いで私服に着替え、勉強道具を持って学習室に移動する。
学習室はそこそこの広さがある。何年か前までは、姉妹三人でここで揃って勉強していた。今は、ここで勉強するのはわたし一人だけ。ルカ姉さんはもう社会人だし、ハク姉さんは部屋から出てこない。
……だ...ロミオとシンデレラ 第九話【ロウソクに火をください】
目白皐月
わたしは現在、クオと喫茶店で作戦会議の真っ最中。作戦というのは当然、リンちゃんと鏡音君の仲を親密なものにするためのものだ。
同じクラスとはいえ、基本的に二人は全くといっていいほど話す機会がない。というより、リンちゃんはわたし以外と喋ることがほとんどないのよね。だから何としてでも、二人っきりにして...アナザー:ロミオとシンデレラ 第七話【作戦会議中のミク】
目白皐月
俺は、喫茶店でミクと向かい合っていた。言わずもがな、ミクに「作戦会議よ!」と引っ張り出されたわけなんだが。というか、何で喫茶店なんだ?
ちなみに、作戦というのは言わずもがな、この前失敗した「レンと巡音さんをくっつけよう作戦」のことである。理由はさっぱりわからないが、ミクは未だに燃えているのだ。
...ロミオとシンデレラ 第八話【作戦会議中のクオ】
目白皐月
クオの家で映画を見てから、数日が経過したある日。俺は学校の図書室で『RENT』のサントラを聞きながら、歌詞をチェックしていた。この前見た舞台は字幕がいいかげんで、話の意味を取りづらかったんだよな。そんなわけでネット通販でサントラを購入したんだが、歌詞カードがついていなかった。幸い、歌詞を全部載せて...
アナザー:ロミオとシンデレラ 第六話【檻の虎に太陽を見せて】
目白皐月
登校して、ミクちゃんとお喋りして、授業を受ける。授業が終わったら、部活のある日は部活動。それが無い場合、大抵は真っ直ぐ家に帰る。帰宅後は家庭教師の先生について勉強。それが、わたしの日常。何事もなく、日は過ぎていく。
そんな、ある日の放課後。授業が終わって帰り支度をしていると、携帯にメールが届いた...ロミオとシンデレラ 第七話【わたしが街を歩くと】
目白皐月
注意書き
これは、拙作『ロミオとシンデレラ』の外伝です。
リンの次姉、ハクの視点で、彼女の実母が出て行く前~出て行った後のエピソードです。
年齢を考えてひらがなばかりにしたので、読みにくいかもしれませんが、ご了承ください。
【ママ、かえってきて】
さいきん、ママがなにかおかしい。ぜんぜん...ロミオとシンデレラ 外伝その二【ママ、かえってきて】
目白皐月
注意書き
これは、拙作『ロミオとシンデレラ』の外伝です。
リンの長姉、ルカ視点の短編で、彼女がまだ子供の時の話です。
ちなみに……ルカが相当アレですので、そういうのでも構わない、という方だけ読んでください。
【わたしはいい子】
ある日のことだった。わたしがお部屋でお勉強をしていると、パパが...ロミオとシンデレラ 外伝その一【わたしはいい子】
目白皐月
その日の夜、俺は晩飯の後で、姉貴に訊いてみた。
「今日、クオから映画のDVD借りてきたんだけど、姉貴も見る?」
「何借りたの?」
「『ブレインデッド』ゾンビ映画。ピーター・ジャクソン監督」
ちなみに、姉貴は変な映画が結構好きだったりする。弟の俺でも、姉貴の映画の趣味をはっきりとは把握していない。...アナザー:ロミオとシンデレラ 第五話【ブレインデッド】
目白皐月
わたしが立てた作戦は完璧だった。まず、わたしがリンちゃんを「映画でも見ない?」と言って家に呼ぶ。そして同じ日に、クオがやっぱり映画を口実にして、鏡音君を連れてくる。後はわたしとクオが喧嘩をする振りをして、二人だけ部屋に残して出て行ってしまうのだ。これで、リンちゃんと鏡音君が部屋の中で二人っきり、と...
アナザー:ロミオとシンデレラ 第四話【ミクの不満】
目白皐月
「いやああああっ!」
びっくりしてそっちを見る。初音さんが悲鳴をあげていた。あれれ。巡音さんも画面を見るどころじゃなく、初音さんを見ている。
こんな反応するってことは、初音さんってホラーが全くダメなタイプ? クオ、お前、何考えてんだ。俺と巡音さんはどっちも唖然として、悲鳴をあげる初音さんを見てい...アナザー:ロミオとシンデレラ 第三話【何故ならそれこそが恐怖だから】後編
目白皐月