第六章

それから彼とのdmでのやり取りは深夜の2時頃まで続いた。
彼はとても不思議な感覚の人で、直ぐに仲良くなる事が出来た。
下心のなさそうな、会話をしてくれる人だった。
私の心を埋めてあげる、とも言ってくれた人。
「この人」の言葉を信じて良いのか分からなかったが、私はその素直な気持ちを伝えた。
「人間不信拗らせててごめんね」と。
お互いに眠たくなって来た頃、「すぐ既読がつくようなら寝たと思ってね」そう伝えてくれた。
案の定、彼はすっかり眠ってしまった様で、既読だけがどんどん付くようになった。
寝てしまったのか、と思ったが彼は今までの私の「心を埋めてくれた今日だけの人」。
私の心は、正直満たされていた。
しかし、インスタという「世界」では「今」だけの関係が多い。
私の経験上、次の日に連絡をくれる人はいなかった、だからなのか「期待」なんて淡い気持ちは
全くなく、今日までの会話で終わりなんだろうな、と煙草をふかし寝てみる事にしたのだ。
すっかりと明るくなった朝に目覚めた私はボーっとしながら携帯へと目を通す。
私の考えとは違い、昨日dmをした彼から連絡が来ていた。
思いもがけないdmに私は嬉しささえ覚えた。
彼は当たり前の様に「おはよ、昨日寝ちゃってた、ごめんね」と私にわざわざ伝えてきてくれたのだ。
やっぱり、今迄の人とは違うような彼に何故か安心感を覚え、その日は1日中彼とdmをしていた。
私は家事をしながら、どこかしらで「いつかは途切れてしまう連絡」なのかな、なんて不安にも似た感覚を覚え、
「期待」だけはしない様に、私が私でいられるように、どこかしらで「保身」するかの様な考えに至っていた。
人に「期待」してしまったら私はきっと「また裏切られた」なんて思ってしまうのが分かっていたからか、
「裏切られた」と思う前に、人に「期待」をしないように、努める事で精一杯だったのだ。
私の思いとは違って、彼は私に「孤独感」を与えない人だった。
彼は彼のペースで私に1日に渡り、ゆっくりと会話を続けてくれる人だった。
私は頭のどこかしらに「いつかは居なくなってしまう人」だとしっかりと入れ、彼とのdmに楽しさを覚えた。
「期待」してしまう己が怖かったのだ。「裏切られた」と思う事も同時に恐怖だった。
彼とのdmは今の所2、3日続いている。毎朝「おはよ」と連絡をくれる彼に安心感さえ覚えてしまった私は
彼に恋をしてしまったかの様に思えた。
人を信じていないのに愚かな考えだな、とは思ったのだが、彼に私の心の全てを話してみようと
思えたのは、彼とのdmが4日目の夜の事だった。
私は勇気を出して、私の重いであろう、「恋心」を伝えてみる事にした。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

月は嗤い、雨は鳴く

インスタで出逢った彼は、今迄の人とは何か違う感覚を覚える主人公。
この先、どうなっていくのか…「恋心」を抱いてしまった主人公だった。

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投稿日:2024/03/21 03:56:56

文字数:1,138文字

カテゴリ:小説

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