第九章

いつからだったろうか、彼からのdmが途切れる様になってきたのは。
私はすっかりと「孤独」に満ちた日々を相も変わらず過ごしていた。
季節はすっかりと桜の咲く時期になっていた。
「孤独」にされる事にもすっかりと慣れてしまい、誰とも会話もしない日々だった。
それでも、陽は昇り日常は訪れ、時間は過ぎ、一日が終わっていく。
桜がとても美しく咲いていた夜、私は日記を書いていた。
その日の日記には「神」に対し、怒りを露わにした言葉が連なっていた。
神は何故私をいつも「孤独」にするのか、何故いつまでも「孤独感」を抱かせる様な人に
出逢わせるのか、私はその日初めて「死」と言う物を考えた。
「今」死んでしまえれば、きっと私はもう二度と「孤独」を感じる事はないだろうな、
そう思ったのかもしれない。
インスタを見る事も随分と減った様に思う。
「どうせ」独りだから、と。
そんな中でパートナーとの日常を繰り返し、私は「死」について考える事が増えた。
「独り」の時間の中で「私が死を選べば」きっと楽なんだろう、そう思う日々に
疲れてしまっていた真夜中に、私は自分の手首を見つめ続け、私なりの「正解」を
探し続けていた。
気が付いた頃、私の手首には沢山のかすり傷の様な物が残されていた。
痛いとも思わずに傷を付けていた様だった。
「心」の方が痛かったからだろう。
初めてリスカをしてしまった、そんな夜に私は暖かくなって来た外へと出た。
桜の花弁を掴みたくて手を伸ばしても私の傷だらけの手に掴める筈もなく、
美しく咲く桜と夜空を見上げ、あんなに毛嫌いしていた「神」に「答え」を
求めて居るかの様に手を伸ばす。
「私は生きてていいの?」帰って来る筈のない答えに私は心に痛みを感じた。
随分と長い事夜空を眺め続け、あんなに温かく美しく光っていた月が私を嗤って居る様に感じた。
月の光が不快に思え、ずっと頭の中にある「死」と共に家へと入る。
自室へ戻り、私はまた手首を見つめ続けた。
パートナーは私に対して関心がある訳では無い。
どれだけの傷を付けても気付く事もないだろう。
そう、思った私はまた傷を増やして行く、そんな真夜中。
時計の音だけの空間で、私は自分の納得のいく迄傷を付け続けた。
涙など出る筈もなく、少しばかりの痛みを感じた手首に私は何故だかホッとした。
私の中の「答え」は私自身を傷付ける事だった。
深夜帯だったが、眠る事も出来ずにいたが、兎に角眠らなくては、
そう思い、手首を隠す様にベッドへと向かい眠る事に集中する事にした。
眠れるかな、なんて暗闇の中で考えが廻る。
そんな時に限ってパートナーからの「若かったら別れてた」そんな言葉が浮かんでは消える。
私はその夜、眠れる事が出来ずに朝を迎える事となった。

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月は嗤い、雨は鳴く

彼からの連絡が途切れ、「死」を考え始める主人公。

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投稿日:2024/04/14 01:57:11

文字数:1,163文字

カテゴリ:小説

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