「きらきら光る
夜空の星よ――」
笑っていた。歌っていた。君は笑い微笑み、やっぱり――
笑っていた。
ずっと君と暮らしてた。
ずっとずっと、あの孤児院で暮らしていた。
親はいなかった。友達さえいなかった。みんなが僕らをバカにした。
学校に行ってはなかったけど、通りすがりの奴らによくからかわれてた。
『お前、その傷なんだよ?え!?』
「これは・・・」
『なあコイツ、虐待されてたんだってよー!今はシセツで暮らしてるってさ!』
『シセツって?』
『頭のオカシイ奴が入るところだってよ』
「違う!僕が住んでるのはそういうとこじゃなくてっ!」
『頭のオカシイ奴かー。こいつも頭オカシイよなっ!』
『頭だけじゃなくて、手も足も、ぜーんぶオカシイだろ』
『それ言えてるー』
「いい加減にしろよ!そういう事言うのっ!」
『負け犬が遠吠えしてるぜー、負け惜しみとかバカみたいじゃん』
「だから・・・っ」
『なんだよ、悔しかったら次は金持ちの家に生まれてみろよ』
「・・・」
金持ちの家に生まれてみろよ。
そんな事無理なのに、あいつらは言う。
あいつらは、自分が親がいない奴より優れているって言いたいんだ、と自分に言い聞かせた。
でも。
やっぱり、悲しくて辛くて死にたくて寂しくて――・・・
ああもう、こんな事思っていてはいけない。イケナイ。
僕には、君がいるんだから。
守るべきモノが。
しばらくして。
僕らは孤児院から追い出された。
僕らは孤児院に入りきらなくなってしまったんだ、子供を捨てるやつらが多いものだから。
まぁね?それも仕方ないことっちゃ仕方ないことだけど・・・
国がいろいろバカをやってるみたいで・・・なんつうの?紛争が毎日起こってるらしい。
だから、みんな貧乏になってしまうみたいだ。
もちろん僕らも貧乏だよ?
お金なんて持ってない。というか、何も持っていない。
持っているのは、これだけ。
「星屑」。
君が道端で拾った、「星屑」。
あ、ホンモノじゃ無いよ?実際はただのガラスの破片。
でも君は、とっても嬉しそうに笑っていた。
「見てみて、星がおっこちてる!きっと、カミサマが救いをよこしてくれたんだわ!」
この笑顔を壊す事はできない。
昨日の夜も、笑顔で夜空を見上げ、「星屑」の事を話してた。
何も知らない、天真爛漫な笑顔を浮かべて。
だから、言わない。
「それ、ただのガラスの破片だよ」なんて。
君が、ずっと笑顔でいてくれるのなら。
ある昼さがり。
僕らはねぐらにしている公園で星屑を眺めていた。
太陽の光を反射して輝く星屑は、やっぱりガラスの破片でも綺麗だ。
僕らが持つものは、これだけで。
どんっ!
突然銃声が聞こえた。
「何があったの?」
君が不安そうな顔をしている。君は笑顔じゃなきゃいけないのに・・・
制服を着た大柄の男達が、僕らに迫ってくる。
「何故ここにいる?」
とっても、野太い声。
「こ、ここしか、いるところがないから・・・」
か細い、僕の声。
「出て行け」
「でていけ」
「デテイケ」
あっという間に、立ち入り禁止のテープがそこに張られてしまった。
僕らはただ、呆然としていて・・・
その日の夜は、ふたりで野宿。
「また、追い出されちゃったね」
無理してるのかな?引きつった笑顔の君。
ああ、僕は君を守らなきゃいけないのに。こんな顔、させちゃいけないのに。
俯いて歩く君の足は裸足で、薄汚れていたなぁ。
極めつけは、寂しそうな君の顔――が、急に笑顔になった。
「見て!あの箱、星屑いれるのにぴったりじゃない?」
箱を手にした君の顔はとっても可愛くて。
うん。君は、笑顔でいなきゃ。
君は、ずっと笑顔でいなきゃ。
エガオデイナキャ・・・
ああ、なんだか眩暈がする。今日は早めに寝よう。
「おやすみ」
「おやすみ」
君と空を飛ぶ夢を見た
どこまでも飛んだ
君と一緒にずっといた
いつまでもいた
一緒にいた。
ひろいそらをとんだ、ゆめをみた
と。
その夢は一転して、悪夢になる。
こんな世界は無くなっちゃえばいい
こんなせかいはなくなっちゃえばいい
コンナセカイハナクナッチャエバイイ
悪魔が僕に語りかける
カミサマは君たちを助けてくれなかっただろ?
こんなところで、生きている意味など無い
嫌だ、カミサマお願い、この悪夢から僕を助けて!
助けて、怖い怖い怖い怖い!!
「・・・あ」
目が、覚めた。
あ、あ、そうだ、よね。
夢だ、今のはただの夢だから、だから。
あ、ダメだ。思考ぐちゃぐちゃ・・・
ふと横を見ると、ガラスの破片が入った箱が目に入った。
開けると、そこには「星屑」。
そこに、悪魔の顔が覗いた。
――こんなところで、生きている意味など無い――
いや、そんな事ない、そんな事は、ない。
気づくと僕は星屑を胸に当てていた。うっすら、血がにじむ。
ああ、こんなところにあった。
君が、ずっと笑顔でいる方法。
こんなとこから、抜け出しちゃえば良いんだ。
自分で、自分が狂っていくのが分かる。
はじめての感覚。
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十字に組んだ指を胸に当て。
「お願いです、カミサマ」なんて。
君の前に立つ。君は笑顔で「ご飯たべよう」と言った。
「その前に、ここに立ってくれる?」
「うん」
素直な君の胸。ここを、紅く紅く染めてあげる。
そして、別の世界で幸せに笑おう?
ガラスの破片をふりあげる。
とても、苦しそうな君の顔・・・
笑顔でいてよ?君は笑顔でなきゃ。。。
あ、そうか、僕と一緒に笑いたいの?
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君は、笑顔でいなきゃ
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