煙の行方

第一章   

私は人との会話がとても苦手だ。
その事を隠す様に、人と会話をする時には必ず笑ってしまうから。
人と何かしらの会話を交わした夜は大体眠れないのが私の日常。
いつも煙草が手放せない私。
私は所謂、「精神疾患」を持っているのだが、その精神疾患とも20年以上の付き合いになる。
長年、良くなったり悪くなったりを繰り返している。
大体悪い状態が多い。
20年もの付き合いのある精神疾患をまだ私は私自身でコントロールが出来ないのである。
ある日の真夜中、友人から「誕生日おめでとう」そんなメッセージが来ていた。
あぁ、また一つ年を重ねたんだな、と何となく考えていた。
薬を飲んでも眠れない私は「ありがとう」と返事をし、友人とのメッセージは暫く続く事になる。
お互いの現状や近況を報告し合い、色々な言葉を交わした。
私はその時、精神的に大分落ち込んで居た事もあり、友人は「私に何か出来る事はある?会いに行こうか?」
そう言ってくれていたけれど、きっと私は満面の笑みで彼女と接するのが容易に想像出来てしまい嫌だった。
人と接すると無駄に笑ってしまう私はとても疲れやすく、人混みさえも苦手なのだ。
友人を傷付ける事のないように「ありがとう、大丈夫だよ」そんな風に伝え、朝方までメッセージのやり取りをしてしまった。
私は眠れないが故に友人に無理をさせてはいないかと罪悪感に苛まれ、「眠くない?」と尋ねた。
「少し眠いかも」と言っていた友人に無理をさせてしまったと後悔する。
「ゆっくり眠って」私はそう伝え眠りに付いて貰う様に促した。
「ありがとね」連絡が途切れた後、私は外の空気を吸いに行こうと思い、
外へと出てみる事にした。
勿論、煙草と共に。
外はすっかり明るくなり始めていた。
こんなに眠れないのは精神的に参っているのもあるのだろう。
私にはパートナーが居るのだが、(所謂既婚者なのだが)どこかで主人に頼れない部分もある。
数年前に酷く精神を病んでしまった時に私は自室に引き篭もってしまった事がある、そんな状態の時
主人に「勝手に引き篭もって居れば良いよ」と言われた事があった。
そんな事を言われた事もあり、どこかしらで主人には頼れないんだと感じているのだと思う。
仕事をする事の出来ない私の居場所はここしかないのも分かっているし、
主人には感謝しているのだが、「信用できない」それが私の本音なのだろう。
当たり障りのない言葉を交わし、笑いたくもない笑顔で接するのも正直疲れる。
私には帰る場所がないのだ。
何となくで主人と長年一緒にいる気がしている。
私は結局の所、「孤独感」を常に感じているのだが、どれだけ人と接していてもその「孤独感」は
埋める事が出来ずにいる。
一人の時間というのは私にとって必要不可欠ではあるのだが、
その時間が長ければ長い程に「孤独感」から解放される事は無かった。
「2人で何でも乗り越えていこう」そんな気持ちにはなり切れない。
どこかしらで私は主人と離れたいな、そんな風にも感じ始めていた。
そんな事も私には出来ない事は自分が良く分かっている。
私たち夫婦には子供が居ないのだが、それが何故か私の唯一の心の拠り所になっているのだ。
どうしてなのかは分からないけれど。
それが、また「強い孤独感」に繋がっている様に感じている日々だ。
そんな平凡な生活を送っている中で私は、とある人と出逢う事になる。
私はどうしていつまでも「精神疾患」に振り回されてしまうのか分からないけれど、
「一生の付き合い」になるのだろうと漠然とした不安がある。
私の主人は私を理解しようとしてはくれない。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
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煙の行方

精神疾患を抱えている主人公。
どこまでも「孤独感」が否めない現実。

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投稿日:2024/02/04 00:35:08

文字数:1,510文字

カテゴリ:小説

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