パーティーホールは綺麗に飾り付けられて、プレイヤーだけじゃなくてスタッフも集まって凄く賑やかになっていた。プレイヤーが入って来ると煩い位のアナウンスが響いた。
「カカカカカカ!さーて、一週間お待たせ致しました!待ってない奴は10秒で一週間分
待て!そんじゃ!課題『愛される人形を作り上げろ』の投票開始だ~!!各人形のPV
もどきが再生されるから一番可愛いと思う奴にお一人様一票をクリーック!
カカカカカカカカカ!」
「PVもどきって…いつの間に…。」
「取り敢えずパーティー楽しんで良いんじゃない?折角だしさ。」
「ド…ドレス汚しそうで食えない…!」
「判るわ…緊張する…。」
綺麗に着飾ったプレイヤーや、皆を見ていると何かとても遠くに感じる。自分は用意されたドレスを着ても違和感ありまくりで、鏡を見ても自信なんてちっとも無くて、今直ぐ帰って着替えてしまいたかった。イライラして、モヤモヤしてばっかりで、そんな自分が凄く嫌になった。
「綺麗なカッコしてるんだから少しは楽しそうにしたら?」
「うざい、ロンゲ、死なす…。」
「元気も無しか。」
「…帰る…。」
「ああ、判った判った、もう直ぐ配信終わるからそれ迄居たら?動画中に出て行ったら
見てる奴気分悪いでしょ。」
正論だけどそれすらもう鬱陶しかった。カメラが何処にあるのか知らないけどこんな顔で片隅にだって映りたくなかった。
「カーッカカカカカ!それでは動画はここで終了だ!今回投票は少し締め切りが長い
からな!ガンガン頼むぜーぃ!!」
「…はい、動画配信終了でーす!」
スタッフの声と共に辺りの空気がいっぺんに緩んだ。数人のスタッフがホールを出て行こうとするのに便乗して扉に向かって走ろうとした時、近くに居たスタッフに思い切りぶつかった。手に少し硬い物が当たったと思うと、湯気の上がった大きな銀の器が自分目掛けてグラリと傾いた。
「きゃ…!!」
思わず両手で顔を覆った瞬間、ガラガラと大きな音がして顔に熱い湯気がかかった。
「おい!!クラム大丈夫か!!おい!!」
「誰か水!氷持って来て!」
「え…?」
恐る恐る顔を上げると数人が周りを取り囲んでいた。
「…あっちぃ…!!」
「え…?チャラ男アンタ…何して…?!何で…ヤケド…何してんのよ?!」
「知るか…あっつ…水くれ水!」
「ば…馬鹿じゃないの?!熱いって…危ないって判るじゃない!!な…何庇ってんのよ!!」
言葉が止まらなくて、こんな時までこんな事しか言えない自分が情けなくなった。涙が出そうだった。
「ごめんなさい…。」
「別に良いって、腕にかかっただけだから直ぐ治…。」
「叩いてごめんなさい…!」
「え?」
「ごめ…なさ…!」
気が付いたら座り込んで幼稚園児みたいに泣いてた。お礼も言えない自分が情けなくて、叩いた事が後ろめたくて、助けてくれた事が凄く凄く嬉しくて。
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