「ミク」

私の愛しい人の声。

優しくて、カッコ良くて。

そう、私の大好きな───

「マスター!」

──マスター。

「ミク、新しい曲出来たんだ。練習お願いね。」

「はいっ!!」

私がマスターと出会ったのは2年前。

他の家のVOCALOID達は1年くらいで飽きられてしまったって聞いたけど、私のマスターはそんなことなかった。

2年経った今でもマスターは定期的に曲を与えてくれるし、他のVOCALOIDを買わず私だけに曲を作ってくれる。

私だけの、愛しいマスター。

「うん、今日も絶好調だね、ミク。」

「えへへ」

マスターに褒められると素直に嬉しい。

「っと…今日はちょっと用事が出来ちゃったんだ。あとはまた明日ね。」

「うん。」

用事が出来たとマスターは出掛けていった。

寂しいな…

「マスター、私もっと頑張るよ!」

パソコンを覗いて歌の練習をする。

「♪~♪~」

マスターの歌は素直。

感情がハッキリと描かれている。

そんなマスターの曲が、流行りのJ-POPなんかより大好き。

でも、この頃曲調が変わってきた。

前は元気になるような曲とか友情の曲とか、雨の曲とか、そんな感じのばかりだった。

でも今練習しているのなどは、恋の歌ばかり。

───もしかしてマスター、恋してるのかな──?

マスターのことだから嬉しいはずなのに、胸がモヤモヤしてズキズキする。

私、VOCALOIDなのに。

「マスター…」

気付いちゃいけない。

でも気付いちゃったんだ、この感情に。

──ああ、私はマスターに恋してるんだ─。




















「ミク。また曲出来たんだ。」

柔らかく、嬉しそうに微笑むマスター。

そんなマスターをみて私も自然と笑顔になる。

「よろしくね」

そう言ってピアノに腰掛け、楽しそうに弾き始めた。

優しい音色。

「よし」

私も練習しようと意気込み、新しい曲の五線譜を見た。

「♪~♪~♪」

いつも通り心地良いテンポで歌う。

「♪~♪~…────っ」

ある一節で私は止まった。

『君と出会えて良かった いつまでも愛してる』

「?ミク?」

これは、恋人に向けた曲?

そう思うだけで胸が苦しくて。

「どうしたの?おかしかったところあった?」

「……っマスター…」

「ん?」

「彼女……出来たんですか…?」

「え?あ////うん…」

私の中で何かが崩れ落ちた。

マスター。

マスターだけを思ってきたのに。

マスターの側に居たのは私じゃなかったの?

「おめでとう……ございます…」

「ふふ、ありがとう」

今までにないくらい幸せそうなマスター。

それを見て分かった。

───私じゃ、敵わない。

逃げ出したい気持ちをなんとか抑えて私は笑った。

「今度紹介するね」

やめて。

そんないとおしそうな顔、しないでよ。

紹介なんて、しないで。

「っ…はい、楽しみにして、ます」

そう言うとマスターははにかんだ。

そんな顔もするんだ…

私、初めて見た。

───あぁ、当たり前か。

私はVOCALOID《機械》で、彼女は人間なのだから。

VOCALOID《機械》は機械らしく、笑わなきゃ。

「ミク、練習再開しようか」

ふわりと笑ったマスター。

───マスターに気付かれなければ、まだ────





























───恋、してていいよね。


見守るくらい、いいよね───。

「はい!」

私も笑い返した。

今は作り笑いでも、いつか本当の笑いに変えて見せるから。

「じゃあ最初からね」

「はい!」

“君と出会えて良かった いつまでも愛してる”








fin.

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

君と出会って

いやぁ、最初はギャグだったのに
ど う し て こ う な っ た (゜∀゜)

tk投稿した今現在(?)オケ中なのよ。
モノクロアクト歌ってるのよ((白根。

閲覧数:141

投稿日:2011/09/28 17:30:20

文字数:1,589文字

カテゴリ:小説

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  • 檸檬飴

    檸檬飴

    ご意見・ご感想

    切ない、切ないよ…。
    ミクちゃん健気…!

    ギャグからコレに!?
    文才が溢れ出してるね!!
    流石です!

    2011/09/29 18:05:21

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