第八章

いつもは不快な気持ちで起きていた朝だったが、今朝はなんだかスッキリと起きれた様に感じた。
恐怖心という不安定な心を持ったまま、私は携帯の電源を入れる。
彼からの連絡は来ていた、今迄と変わらず「おはよ」と。
その連絡に酷く安堵し、私はこんな人初めてだな、と不思議な感覚になっていた。
どうして彼が私に毎日の様に連絡をしてくれるのかは分からなかったが、
とても嬉しく、私は彼に「おはよ」と返事を返す。
心が温まっていくかのような彼からの何気ない一言に私は涙した。
彼とはゆっくりと時間を掛け、一日中連絡を取り合っていた。
私は家事をしながら、彼は学生で在った為、時間が出来た時に。
正直、居心地が良かった。
今日も私なりの時間を過ごそう、そう決め家事やらを黙々とこなしていく。
いつもなら気怠さの中で一日を過ごしていたのだが、
私が彼に伝えた「恋心」を全て受け止めてくれてからの「いつも通り」の朝の連絡は
私の心を軽くしてくれた。
一日が遅い様でなんとも早い時間を過ごしていた。
彼は、今迄と何ら変わらずに、私を「独り」にしないでいてくれていた。
パートナーには感じた事のない「安心感」に私はとても心が穏やかだった。
今日はやけに家事がすんなりと進むな、なんて思いながら、
私は一日を過ごしていた。
そんな一日を過ごしていた頃、そろそろ18時近くになっている事に
「もうこんな時間なんだ」と驚きを隠せない私に待っていたのは、
パートナーが帰宅する時間になりつつある憂鬱な時間。
あっという間な時間を過ごし、いつも通りの生活が待っていた。
見たくもないパートナーの無表情な顔、機嫌の悪そうな態度。
現実というのは情け容赦なく私の目の前で繰り広げられていく。
「私がストレス」なパートナーの対応に必死になって笑顔でいる「現実」。
また同じ様な夜を過ごすのかと思うと憂鬱で仕方のない時間。
そんな中で私が見つけた「彼の存在」が私に平穏をもたらしてくれていた。
毎晩の様に私に纏わりついていた「孤独感」を感じなくなっていく。
彼は私に「光」を与えてくれる存在になっていた。
失いたくない、とても「特別」な人だ。
今日も彼との時間が私にはきっとある筈。
「現実」がどんなに苦しくても、「彼」さえ居てくれればそれで良かった。
パートナーはそろそろ寝る様子だった。
いつもと変わらない「おやすみ」という言葉だけを交わし、私は私の時間を過ごす。
少し外の空気が恋しくなり、厚着をし寒空の中へと出る。
今夜も美しい景色が広がっていた。
私は夜の静寂の中での時間を過ごしていた。
会った事のない彼へと思いを馳せながら夜空を眺め続けた。
今夜は身体が冷え切る前に家の中へと入り、携帯を見ると彼からのdmが来ていた。
何気ない会話でも私は嬉しさを覚える様になっていた。
時間は23時を少し過ぎた頃だった。
眠ってしまったであろう彼に返事をし、
私の好きな香水を纏ってベッドへと向かい、私も眠りへとつく事にした。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

月は嗤い、雨は鳴く

いつも通りに連絡をくれる彼に、心が穏やかになっていく。
パートナーにはない安堵感を覚える主人公。

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投稿日:2024/03/30 17:54:33

文字数:1,256文字

カテゴリ:小説

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