見渡す限りの緑。
そこには様々な色の緑があった。
「……どんだけ田舎なんだよ」
僕は独り言を呟き(寂しいヤツとか思うなよ、ただたんに人が少なすぎるだけだ)、空を見上げた。
本日は晴天なり。
そんな変なことを思うほどの青空だ。
僕は今日、所謂家庭の都合というものでこの田舎に来た。
田舎田舎と言うが、そこまででもないだろ、と甘く見ていたがどうやらその考えは違ったようだ。
だって、この景色を見てしまったら何も言えない。
東京から来た僕にとっては初めて見る景色だ。
お世辞にも都会だとは言えない。
これを都会だと言う人がいたら連れてきて欲しいくらいだ。
「グミヤくーん」
「あ、はーい何ですか?」
僕は今日から親戚であるこのおばさんの家に住む。
とても気さくで優しい人だ。
「オラん家にはもう1人娘がいるんだ。そこの田んぼさ居るから呼んできてくれねぇか?」
「(さ?)水田、ですか。わかりました」
「ありがとねー」
というか娘?
ってことは若いのか…
って、
「娘!?」
「おー、どうした?」
「娘要るんですか!?」
「あら、言わなかったべか?グミヤくんとおんなじ年の娘だ」
「聞いてませんよ!」
しかも同い年!?
「大丈夫だ、グミはそーいうの考えねーから」
「いや、そういう問題ですか!?」
「他にどんな問題があんだい?」
さすが田舎と言うべきか。
暢気というかのんびりというか…
「いーからはよいってきー」
「…はーい」
ってことで水田に行くことになった。
* * * * *
「ここ…だよな?」
おばさんから貰った地図を基に、水田にやって来た。
正直かなり大変だった。
だって同じ風景ばっかりだし。
でもいくら探しても肝心の人が見つからない。
あれ、まさか道間違った…!?
そう僕が慌てていると水田の中に人がいた。
え、水田に人!?
「ちょ、ちょっと中に入ったら危ないですよ!?」
「ん?オメ、誰だ?」
来た、田舎特有の暢気。
「ここに引っ越してきたグミヤですけど…というか危ないですから!」
「あぁ、オメェか。オラグミ!」
へぇ、グミさんか。
って違う違う!
「だから危な…」
ん?
待てよ。
グミさん?
ってもしかして…
「あぁ!!僕が住む家の娘さん!!」
この子が!
け、結構可愛い。
けどさ、
「それ、何?」
「ん?あぁ、これか。これは袈裟っつう服だ。というかオメェ、さっきから何危ない危ない言ってんだ?」
はっ!!そうだ!!
「だ、だって水田だよ!?底無いんじゃないの!?」
僕がそう言うとグミさんはきょとんとしたあと盛大に笑った。
え?
笑う要素ある!?
「え、何で笑ってるの…?」
「だっ、だって…あははは!!田んぼが底無しなわけないべさ!!」
「えぇっ!?そうなの!!?」
「常識だべよ!!!!オメ、面白いな」
面白いのかな、僕。
言われたことないけど。
「なら自分で確認すっぺさ!!」
「え、」
その瞬間、僕は浮いた。
というか水田に突っ込んだ。
「わあああああ!!!?」
最悪だ、泥塗れ。
泥で洋服を汚したことないのに。
「ほらな、ちゃんと立てっぱい?」
言われてみれば立ってる…!
ちゃんと底あるんだ…!
「っていうか洋服どうすんだよ!!」
「大丈夫だ、洗えば落ちっから~」
もうその暢気には突っ込まないよ。
「たまにはこうして遊ぶのも良いばい?」
いや、
「良くないから」
足元が自由に利かない水田の中で土手に上がろうとした。
そしたら予想外なことに、緑の物体が目の前に跳んできて僕は尻餅を着いてしまった。
「なっ、何!?」
「あー!蛙めんこいなー」
か、蛙!?
蛙が可愛いの!?
「ふ、たてっか?」
グミさんが蛙を存分に撫でている間ぼくは放心していたが、声を掛けられて我に返った。
てかそれ、蛙を愛でてた手じゃ…
「ん?腰抜けたか?度胸ねぇなー」
うわ、今イラッときた。
「自分で立てるし」
「そうかそうか」
イイ人、なんだろうけど何かバカにしてる感がある。
確かに可愛いし、よく笑うし、良く見るとスタイルも良…って何考えてんだ僕は!
「あ、おばちゃんに早く家さ帰ってこいって言われてた。行くぞ、グミヤ!」
「え、は、ちょっと待って!」
いきなり手を引いて走り出した。
ちょ、早い早い!!
田舎の子はやっぱり野性的…!
「今日からよろしくな、グミヤ!」
でも、少しキュンと来たことは内緒だ。
田舎でラブストーリーは突然に【春】
◇おまけ◇
「オメェら田んぼに落ちたのか?早く風呂入っちめ!!」
「はーい、先入るばい」
「あ、うん」
「若いものは良いなぁ、グミヤくん」
「うぇ!?ち、違いますよ!!」
「何も言ってねぇばい」
……とりあえず、田舎って疲れる…
fin.
コメント2
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ご意見・ご感想
檸檬飴
ご意見・ご感想
おぉ…本当に書いたんだね!
思ってたよりクオリティー高くてびっくりした!!
グミちゃんとグミヤくんの会話可愛いんだけど、訛りに思わず笑ってしまったよwwww
この調子で冬も頑張って!!
私は秋だよね?
書けないってww
クオリティーが高すぎるでしょww
2012/06/04 23:03:21
魔熊
ご意見・ご感想
wwwマジでヤバいwwww腹筋がww明日筋肉痛になったらどうするんだよww
色々リアル過ぎて怖いぐらいだしww
グミちゃんもグミヤ君の会話が可愛かった!!……口調でマジ爆笑しちゃったけど。
クオリティー高くてびびったんだけど!?
私もこの感じで【夏】書けるかなー?
【冬】も楽しみにしてるね!!
2012/06/04 22:45:34