―昔々ある所に、悪逆非道の王国が在りましたとさ―
期待の中、僕らは生まれた。
教会の鐘が、僕らの為だけに鳴っていた。
――いや、『僕ら』ではなく、『彼女』の為に。
昔から、『双子は忌み子』でした。
王族に双子が生まれると、その代で一族は滅ぶのです。
だから、双子が生まれた時は後に生まれた方の子供を国の外に放り出すのです。
そうすれば一族は破滅を免れます。
僕ら――姉と僕、リンと僕は10歳の誕生日を迎えた。
その時、まだ僕らは一緒に暮らしていた。僕は国外に捨てられていなかった。
それは、僕らの母のおかげだった。
「たとえ私の代で一族が滅んだとしても…絶対に、絶対にこの子は捨てさせないわ!私の生きている間は絶対に!!!」
そう、叫んだらしい。だから僕は今ここでリンと笑っていられる。リンと遊ぶことができる。リンと一緒に暮らせる。
その事に関しては、感謝している。けれど、母は余計な一言を付け足していた。
私が生きている間は、絶対に。
それは言いかえれば母が死んだら僕を捨ててもいいという事だ。
そして今、母は…
「ちょっと、レン!!!」
「へ?」
リンに頭を軽く叩かれた。
「お姫様の話し無視するってどういう事!?もーっ」
「あー…えっと、うん。ごめん」
リンは頬を膨らませ、腰に手を当てている。彼女なりにめいっぱい「怒り」を表現してるらしい。
「プッ」
「!!………何よ、笑わないでよぉ!!!えいっ!!!」
「わっ」
顔に、何かを投げつけられた。それは―
「花冠?」
見ると、リンはもう頭に載せている。という事は、これは僕の分だろう。
「えーっと…」
「早くつけて!リンがお姫様で、レンが王子様!わかったら早くつけて、ほらほら」
そういえばここは城の近くの花畑だ。確かこっそり抜け出してきたんだと思う。
僕は、花冠をしばらく見つめてから、
「…………」
リンの頭の上に置いた。
「えっ…」
リンが驚いているのか嬉しいのかわからない表情をする。僕は頬笑み、
「僕は君の召使。そうすれば…君が結婚しても、ずっと傍にいて守ってあげるから……それじゃ、ダメ?」
「…」
リンは無言で、顔を横に振る。ちょっと、頬を赤らめている。僕は小指を出し、
「約束」
リンは少し僕の事を見つめて、何か言おうとするが、やめる。そして自分も小指を出して、
「約………きゃっ」
「リン!!!」
「離れろ、忌み子!!」
見ると、大人達が数人やってきていた。
「やっとお前を捨てられる日が来たんだ!!!」
「一刻も早く捨てないと、本当に滅んでしまうぞ!!!」
「……」
あぁ、そうか。
僕は、リンと引き離されながら気付く。
母が、死んだのだ。
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玻璃の雫 纏った森羅
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1A
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tomon
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君を守る その為ならば
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mothy_悪ノP
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