第七章     

「私ね、好きだよ…」とてつもない恐怖心を抱えたまま、伝える。
彼にとっては同情心だったかもしれない、それでも「俺もすきだよ」そう伝えてくれた。
私は、その文字を見て泣いていた。
「いつかは離れて行ってしまうかもしれない存在」に不覚にも涙が出てしまったのだ。
「すきだよ」その言葉を信じる事が私に出来るだろうか…。
私は私自身を疑い、本当に「信じる事」が出来るのかという恐怖にも怯えていた。
勿論、嬉しさもあったのだが恐怖心の方が何よりも強かった。
私の頭の中では「明日には彼からの連絡が途切れるかもしれない」。
そんな不安を考えながら、少しづつ彼に対してやっぱり好きだな、と思ってしまう。
「明日が怖い」、そんな事になったのも全ては私が彼に対して恋心を抱いてしまったからなのだが、
私の気持ちを押し殺す事が出来ずに伝えてしまった自分自身に「馬鹿だな」と、考えながら
dmで会話を続ける。
私の「重いであろう恋心」を正直に伝えてみる事にした。恐怖心は勿論伴っていたが。
「私の気持ちは重いかもしれない、でも好きだよ」そう彼に正直に、と言うより馬鹿正直の方が私には
合っているのかもしれない気持ちを伝えてみた。
彼は私の「重いであろう気持ち」に対し、「俺は嬉しいよ」と応えてくれた。
本当なのかどうかは分からないまま、「ほんと?」と素直に聞いてみた。
私は、人を信じようとしているのだろうか…と馬鹿げているな、と思いながらも彼の言葉を待っている
自分が居る事に驚いていた。
私はきっと、彼を「信じてみよう」としていたのだろう。
「人間不信」の私にとってはとてつもない一大事な決心ではあるのだが、
彼に感じた「安心感」や「好感」や「独占欲」色々な感情を持ちつつ、「彼」にしかない「特別」を
私は信じようとしていた。
少しづつ私の本音を伝え、彼からの反応を待つ…。
返事が来る迄の時間がとてつもなく恐怖を感じる時間だったが、彼は全ての私の気持ちに
「否定」する事無く、一つずつ応えてくれていた。
私は酷く「安心感」を彼に抱き、大事にしたい人だな、と思った夜を過ごしていた。
すっかりと夜も更け、パートナーは既に今日という一日を終わろうとしていて、眠りに付く様子だった。
「おやすみ」そんな簡単な言葉だけを交わし、私は彼との時間を過ごしていた。
「好き」だと伝えてしまった後悔は私には無かった。
明日になればもう「終わってしまう関係」にも慣れてしまったせいなのか、
私は「彼」には素直に色んな我儘を伝える事が出来た。
「今」伝えなければ「いつか」終わってしまう関係だからなのか、そういうdmが多過ぎた為なのか、
それは私には分からない事だったが、「伝えないと後悔する」そんな事が頭を過ったのだろう。
数日に渡り、彼からの連絡の途切れのなさに「安心感」を覚えたからというのもあるのだろう。
この数日で分かった事は彼は23時には寝てしまうという事だった、そろそろ23時を
廻ろうとしている時間だった頃、私は「独り」外へと出る。
相も変わらず、厚着をして寒空へと身を置く。
暗くなってしまった空にぽっかりと浮かぶ月の光が温かく感じた夜だった。
「明日は連絡…来るかな…」願いにも似た独り言を呟き、私は夜空を眺め続けた。
煙草を丸々1本吸う程には寒空の中に居た様に思う。
すっかりと冷え切った身体と共に家の中へと入り、私は温かくなりそうなホットミルクを入れた。
身体が温まる迄の時間、煙草と香水の香りに酔いしれていた。
今日、「彼」が私を受け入れてくれた余韻に浸って居たかっただけかもしれないのだが。
「明日」を考えると恐怖心で眠れなくなりそうだったが、少しづつ気持ちを落ち着けるかの様に
ホットミルクを飲み、私は気持ちを「彼」だけに持っていかれない様にと必死に努め、
私は私を守る様にと考えを切り替え、連絡が来るか来ないかは「彼次第」だと、
「明日は明日だ」と、ベッドへと向かい、眠る事にしてみた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

月は嗤い、雨は鳴く

彼へと恋心抱いてしまった主人公。
伝えては見たものの、不安感は払拭されないまま、独りの時間を過ごす。

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投稿日:2024/03/23 19:58:27

文字数:1,651文字

カテゴリ:小説

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