第三話 ―常世之闇―


「さて…。北方向に歩いてきたけど、どうする?
 ハルさん、だいたいどんな感じの街並みだったとか覚えてますか?」
「ごめんね。全く覚えていないわ」
「そうですか…。ミク姉、どうするの?」
「とりあえず進んでおけば大丈夫でしょ!」

(うわー、超心配なんですけど)

レンは心の中でボソッとつぶやく。

「お腹すいたー。ミク姉、何か食べようぜ」
「そうだね。お昼だし…。あ!そこのやおやさn「「却下」」

双子にあえなく却下されたので蕎麦を屋台で食べた。

「こんなところまで来たの初めてだね、レン」
「そうだな…ってまだ江戸だぞ、リン」
「えー。結構広いんだね」
「私はここまで来たことあるな」
「「さすがミク姉……」」

ミクの場合『来た』ではなく『逃げてきた』だが。

「あ!置き去り月夜抄だ!この本どこの本屋も売り切れでさー。欲しいんだよね…」
「リンちゃん。これから長いかもしれないから、買うのはよした方がいいと思うよ」
「そうだね…。買うのはやめとくけど、本屋さんに入ってもいい?」
「いいよ。入ろう」

本屋にはいろんな本が並んでいる。

リンとレンは小説コーナーへ行った。

「Bad ∞ End ∞ Night?読めん…」

どこの国の本だろうか。

「えーと、内容は日本語?」
「…」
「夢中になってるし!!ってことは日本語なんだ」

リンは他の本に手をかけた。

「『円尾坂の仕立て屋』…。読んでみよっと」

リンは辺りをいったん見回し立ち読みを始めた。

「今どのあたりですかね…」
「この辺りじゃない?」
「あの…、ミクさんそこ……、相模です。今見てるのはこっちのページですよ」
「あ……。き、気にしない!」

ミクとハルは地図を見ている。

「うーん…。謎だ…」
「嫉妬怖えー!!」
「2人とも。そろそろ行こうか。もう3時間もここにいるし」
「「はーい」」
「買ってきましたよー。地図」
「地図?」
「これから絶対いるからね」

そう言うとミクはハルから地図を受け取り、レンが首から下げている白いカバンにつっこんだ。

4人は本屋を出た。
再び北の方向へ進む。

「あ!そこのお店のおまんじゅうおいしそう!」
「本当だ!でも、変な時間に食べると体に悪いよ」
「じゃ、明日にしようか」
「楽しみですね。朝ご飯にいいかも」
「俺、よもぎ饅頭がいい」

しばらく歩いていると風も冷たくなってきて、足も疲れてきた。

「どこか安い宿ないかな…」

レンがミクに地図を渡す。

「うーんと……。もう少し行ったところの曲がり角に宿屋さんがあるみたい。取りあえず、そこまで行ってみようか」

いたるところから夕ご飯の良いにおいがする。
お腹も空いてきた。

「ここか…。入ってみる?」

ハルがコクンとうなずく。
暖簾をくぐり、引き戸を開ける。

「こんばんは――…。」

奥から中老の男性が出てきた。

「ようこそお越しくださいまし…」

その男性はこちらを警戒しているような目で見ている。

「あの、どうかされましたか?」
「そこのお二方は双子でいらっしゃいますか?」

男性はリンとレンを指した。

「はい。僕たちは双子ですよ」
「あ、異性同士でいらっしゃいましたか。どうぞ、お上がりください」
「…(このオッサンすげぇ失礼だな)」

奥から中老の女性が出てきた。

「よくおいでくださいました。ささ、疲れていますでしょうから、速やかにご案内いたします。こちらへどうぞ」
「あ、あの」
「何でしょう」
「一泊いくら位になるんでしょうか?」

男性が会話に割り込んだ。

「1.8円です」
「どうする?」
「あたしたち一応あるけど、ほぼ使い果たしちゃうよ」
「もしもの時は私のお金を使えばいいよ。城からお金になりそうなものいくつか持って来たし」
「でも、これからのことを考えると少しきついかもしれませんね」
「「「「うーん……」」」」

「あんた、ちょっとまけてやりな」
「しかし…」
「あたしの言うことが聞けないってのかい?」
「喜んでまけさせていただきます!!」

女性は4人に向き直った。

「お値段を半額にいたしますよ」
「本当ですか!?」

ミクの顔がパアァッと明るくなった。

「「「「ありがとうございます!」」」」
「すぐ夕飯の用意を致しますね」

4人はそこの宿で一晩を過ごした。


次の日。

レンは窓から差し込む眩しい朝日で目を覚ました。
五時半だ。少し早い気もするが、まあいいか。
着替えを済ませ、布団を上げる。

「おはよう」

すでにリンも着替えを済ませている。

「おはよう。早いな」
「さっき起きたばっかりだよ」
「そうだ、昨日言ってたおまんじゅう買いに行ってくるよ」
「待って。良いこと思いついた。賭けをしない?」
「は?」
「あたしとレンで服をこうかんするの」
「すぐばれるだろ」
「ばれたら、あたしがレンにバナナを。ばれなかったら、レンがあたしにみかんを買う。どう?」

レンはしばし悩んでから結論を出した。

「乗った!」

早速服を交換し、リンは髪を束ね、前髪をできるだけはねさせた。レンは髪をおろし、はねた前髪をピンでとめた。

「うわー、我ながら分からん」
「本当だね」
「あ、交換する前に買いに行ってこればよかったな。まあいいか。行ってくるよ」
「行ってきまーす」

レンは旅館を出た。
街も早朝なだけあって、静かだ。
元来た道の逆方向に向かって歩いていく。

「さすがに開いてなかったか…」

『開店:午前九時頃』と張り紙がされている。
引き返そうとしたとき、後ろから声をかけられた。

    
「そこのお嬢さん」




次回に続きます。
















ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

千本桜 ~脱走姫様~ 第三話

いろんな楽曲を本という設定にしました。

そして、レン君にまた勝手な設定追加w

ちなみに『相模』は現在の神奈川県です。

ハルさんは敬語を使うお堅いイメージです。

・1円=1万円です。


最後の方、結果的に女装しちゃってますが、そういう趣味はないのでww


千本桜
http://www.nicovideo.jp/watch/sm15630734

本家様

Bad ∞ End ∞ Night
http://www.nicovideo.jp/watch/sm16702635

円尾坂の仕立屋
http://www.nicovideo.jp/watch/sm9032932


閲覧数:439

投稿日:2012/05/05 19:06:12

文字数:2,383文字

カテゴリ:小説

  • コメント1

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  • しるる

    しるる

    ご意見・ご感想

    うん、リンとレン、交換しても絶対わかんないwww

    こうやって、持ち物や所持金をリアルに考えていく物語は結構好きですww
    小学生のころ読んだ絵本でそういうのがありましたww

    ちび~っと気になったところがあって…
    江戸のころって…円なの?両、文とかじゃなくて?w
    いや、私、あまり詳しくないからわかんなくてwwwはははww

    2012/05/30 01:16:24

    • june

      june

      リンとレンの衣装交換は絶対にやりたかったネタですww

      面倒くさかったので、「明治時代には円だし円でいいじゃないか!」
      となりましてwww

      2012/05/30 20:49:55

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