タグ「亜種」のついた投稿作品一覧(174)
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銃。それは私が持っている知識の中で、数少ない嫌悪と恐怖を示すもの。
艶のない黒一色に覆われたおどろおどろしい外見は異様な空気を纏い、手に取ればその見た目以上の重量が手の平から体の芯に食い込む。
弾丸を込め、機関部に初弾を装填したときの金属音は、威圧的に刺々しく耳に刺さる。
そして引き金を引い...THE END OF FATALITY第八話「Close Quarters Combat」
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謝罪
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蛍光灯の破片を掻き集めながら、再び調整に使われた研究室を見回した。砕け散ったモニターやガラス、壊れたコンピューター、千切れた黒いケーブル。あらかたの片付けを終えてもなお、この部屋には、数人が取っ組み合いの争いをしたような痕跡が残っていた。ましてや、凶気に操られたアンドロイドと科学者が死闘を繰り広げ...
Eye with you第二十話「露と消えゆ」
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そこには冷たい顔をした、見知らぬ少女が立っていた。その顔立ちこそ僕が忘れるはずもない、今までに多くもの思い出を作ってきた少女、キクのものであったが、その凍りついた、完全に生気を失った冷酷な表情と視線は、僕の知るキクのものではなかった。
「キク・・・・・・? ねぇどうしたの。返事してよ。」
彼女...Eye with you第十九話「呑まされた凶夢」
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散歩から帰ってみると、すでに研究室には数人の科学者(おそらく本社の者)が集まり、今夜の調整のための機材を用意していた。
研究室に立ち入るなり、彼らは挨拶もなしに「二人を調整用ベッドに寝かせてくれ」と命令してきた。
本社の人間は決まって冷たく命令口調で、僕と鈴木君はやはり反感を覚えたが、ここで逆...Eye with you第十八話「冷たい寝顔」
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一歩足を踏み入れただけでも、この部屋が私にとって以下に未知の空間であり、どこか落ち着きがなくそわそわとしてしまうものだった。
暖かい日差し、涼しい潮風、薄い肌色の壁、毛布のようなカーペット、本棚とそこに置かれた絵本と、色鉛筆とスケッチブック。
今まで触れたこともないようなものに実際に触れても、...Eye with you第十七話「つばさ」
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あれから数週間。どうにか本社にその存在を認めてもらえたタイトとキクの二人。だが、僕と鈴木君の仕事はそれで終わったわけではない。
これからたった二人の、しかもロクに子供と接したことすら無い男二人でタイトとキクの面倒を見ていなければならなかった。しかも、これがまた意外と過酷な作業で・・・・・・。
...Eye with you第十六話「絵空事」
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「ええ・・・・・・驚くほどの学習が早く、既に基本的な動作は完璧にこなしております。ご覧になれば、きっと驚かれるはずです。」
暖かい間接照明が照らし甘い香料が香る廊下を、僕は如何にもお偉方と言った風貌の背広の男達と歩きながら、些細な質問に対して大げさに、そして誇らしく語っていた。
二人が目覚めて...Eye with you第十五話「赤と黒の子」
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共に振り上げ、渾身の力を込めて繰り出された拳は空中で衝突し、俺とメイトの体は反動で大きく仰け反った。
「ぐっ!」
次にメイトは足を鞭のようにしならせ俺を薙ぎ払うが、俺はその瞬間に跳躍し、メイトの頭上を飛び越え背後に貼りつき、首根っこを捕まえて後頭部に一発の打撃を与えた。
脳に強烈な振動が加...SUCCESSOR's OF JIHAD第七十八話「soldier」
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薄暗い照明の下に、細長いコンテナを手にしたミクオの姿が照らし出された。
「この中に、あなたの装備が全て入っています。」
ミクオはコンテナを足元で開き、中から俺の着ていたス二―キングスーツを取り出した。
「さ、早く着て下さい。」
「ああ。」
振り向くと、ワラはこちらに背を向け、しゃがみこん...SUCCESSOR's OF JIHAD第七十七話「皮肉」
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思い返してみると、この任務も終局に向かっていることに気がついた。
いや、向かっているというより目前なのだ。
俺が既にピアシステムを制御不能にするワームをマザーコンピューターに挿入したことで、あとどれくらいかは分らないが、時間が経てばシステムは完全に分解され、停止し、テロリストの兵器は一切使い物...SUCCESSOR's OF JIHAD第七十六話「ストリーキング・ミッション」
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・・・・・・。
「ボスお目覚めのようです。」
「ふん。案外としぶといものだ。」
右も左も分らない暗闇が薄れて、それが去った時、視界が、眩い光で真っ白に塗りつぶされていた。
目が痛くなるほどの光も徐々に薄れ、俺は三人の人影が、目の前に立っていることに気がついた。
「よく眠れたか?A-D。い...SUCCESSOR's OF JIHAD第七十五話「託された未来」
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鋼鉄の咆哮。深紅の雷鳴。黒き銃声。
このコロシアムに耳を劈き天地を揺るがす轟音が響き渡った。
そして、網走智樹の乗るアシュラが、一瞬で眼前に映っていた。
「ッ!!」
装甲をパージする前とは桁違いのスピードを前に、俺はただレバーのトリガーを引くことしか出来なかった。
即座に40mmバルカン...SUCCESSOR's OF JIHAD第七十四話「最期の笑顔」
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ただ茫然と、俺は目の前のモニターに映し出された光景を眺めているだけだった。
そこには、レーザーの直撃を受け、黒煙を上げながら沈黙している、ソラの機体。
そして俺と同じく、茫然とこの光景を目の当たりにしながら沈黙を始めた、四機の戦闘機とそのパイロット。
誰もかもが、一言も声をあげず、ただ茫然と...SUCCESSOR's OF JIHAD第七十三話「役立たず」
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鋼鉄の巨獣に乗り、一歩、また一歩と鋼鉄の大地を踏みしめる。
視線の先には、暗いトンネルから差し込む、太陽の光。
あの先へ、あの光の先へ抜ければ!
俺は端の躊躇いもなく前進し、鋼鉄の巨獣、ハデスと共に光の中へと飛び込んだ。
そして次の瞬間には、眼前には、広大なグラウンドが広がっていた。
...SUCCESSOR's OF JIHAD第七十二話「THE・SORROW DUEL」
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三人で細長い通路を駆け抜けていく。
これからどうするか、そう脳内で模索を続けながら。
「ワラ、ヤミ。で、脱出の目処は立っているか。」
「ええ。ちょっと大げさな方法かもしれませんが。」
「大げさっていうか、大胆な感じ?」
足を止めず、ワラとヤミが答える。
「ほう、どうするんだ。」
「こ...SUCCESSOR's OF JIHAD第七十一話「光射す先へ」
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今まで行動を共にしていたはずの二人が、突如として、俺に刃の矛先を向けていた。
「おい!どうしたんだ二人とも!」
呼びかけても二人から返事はなく、次の瞬間、俺はワラの放った大蛇の如き草日から身を翻していた。
「ミクオ!!どういうことだ!」
振り向くとミクオのいた場所に巨大な光の円が飛び去り...SUCCESSOR's OF JIHAD第七十話「Indulge in TWO」
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ハンガーを出てコンピュータールームに向かう途中、無線機に通信が入った。
相手側の周波数は分らない。セリカやタイトではないだろう。
「誰だ。」
『僕です。』
無線に応答すると、ミクオの声が返ってきた。
「何の用だ?」
『僕はコンピュータールームに居ます。今、貴方がワームをインストールしや...SUCCESSOR's OF JIHAD第六十九話「処刑」
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鋼鉄の装甲を纏い、背の翼で飛翔し、巨大な砲塔を片手で振りまわす。
その異様な姿の彼女、重音テトの、装甲に包まれたヘルメットのセンサーが、しかと俺を睨みつけている。
「さぁ、消えるがいい!!」
テトの叫びと共に、その手にある巨大な銃の砲身が光を放ち、モーターのような音を響かせ、光を収束し始めた...SUCCESSOR's OF JIHAD第六十八話「FOR FUTURE」
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広大な鋼鉄の空間に独り取り残された俺は、一刻も早くここから抜け出そうと考えたのだが、たった今、ミクオから聞かされた重大な事実を少佐に報告しなければならないと思い、無線でセリカを呼びだした。
「セリカ。少佐と繋いでくれ。」
『はい。』
すると一度無線の反応が切れ、別の周波数に接続された。
『...SUCCESSOR's OF JIHAD第六十七話「憤怒のキメラ」
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果てしなく広大で、果てしなく静寂な鋼鉄の空間、ハンガーに、彼のつぶやきが響き渡った。
ミクオが発した言葉は、間違いなく、俺のことを指していた。
意外すぎる出来事に思わず目を見開いた。
「ご覧になっていたんでしょう。大丈夫、攻撃したりはしません。」
クロークを起動し、気配すらも押し殺していた...SUCCESSOR's OF JIHAD第六十六話「何が正義か」
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タイトに背を任せ飛び込んだ先は、思いのほか静寂に包まれていた。
階段から見下ろした先には、広大なハンガーが広がっている。
どうやら航空機用のカタパルトらしいが、無数あるカタパルトには四機の黒い戦闘機が設置されているだけだった。
さらに奥へスコープをズームさせると、人型の巨大なABLがある。
...SUCCESSOR's OF JIHAD第六十五話「自由のために」
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自分を中心とした十字線を取り囲む、無数の光源。
ここもすぐに、大勢のアンドロイドが警戒に押し寄せてくる。
「・・・・・・クローク、起動。」
適当な壁に張り付き、スーツのモードを切り替えると、スーツのセンサーが壁の色をスキャンし、その表面を壁と同化させていく。
クロギンの話によれば、この状...SUCCESSOR's OF JIHAD第六十四話「紫の包帯」
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蒼い魔女が微笑んだ。彼女の手招きを目にした瞬間、そんな風に見えた。
四肢に装着した拳銃。流れる青い髪。妖艶な微笑み。
苦音シク・・・・・・。
数百の銃口を向けられようとも、そんな威風堂々たる姿を崩さない彼女の態度に、俺は一瞬、体を縛られたような感覚に陥った。
「デル!おい!!」
背後から...SUCCESSOR's OF JIHAD第六十三話「蒼い魔女」
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体は無重力に包まれ、視界に蒼き地表が広がっていた。
ここは高度五万フィートの空。地球から、宇宙へと繋がる場所。
ミサイル型カプセル、ドローンの窓から周囲を見渡すと、そこには俺と同じくドローンに搭乗した仲間、そして、役五百発の空対地ミサイルだ。
これから、この仲間とミサイルと共に、的の重要施...SUCCESSOR's OF JIHAD第六十二話「ハイテンション・ダイヴ」
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ここからは大地が丸く見える。
高度五万フィート。それはもはや、地上からでは想像もできない、地球の姿を垣間見ることができる。
それは今まで目にしてきたどんなものよりも、蒼く澄んでいる。
綺麗だと、思った。
でも、こんな綺麗な星の中で、何十億という人々が、日々醜い争いでお互いを傷つけていると知...SUCCESSOR's OF JIHAD第六十一話「カウントダウン」
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ロッカーの立ち並ぶ部屋で、俺はタイトと共に、あの浅黒いクリプトン社員、クロギンから渡されたコンテナの中身を確認していた。
まずは、俺が水面基地に置いて来たスニーキングスーツと特殊自動拳銃Ⅳ型、GPS端末で、タイトにも色違いのスーツが用意されていた。
そして次に目に付いたのが、異常な数の銃火器類...SUCCESSOR's OF JIHAD第六十話「得体の知れない男」
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鉄の階段を、駆け上がった先に到着した俺は、まず最初に、絶句した。
眼前には、視界を覆いつくす程の巨大な何かが聳え立ち、その周りを色とりどりの作業服を着たクルーが忙しなく駆け回っている。
「これって・・・・・・。」
隣のワラが驚きのあまり声を漏らした。
確かに、突然こんなものが視界に迫った...SUCCESSOR's OF JIHAD第五十九話「ブリーフィング」
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ブリーフィングルームで俺達を出迎えたのは、海軍将校の制服を纏った、威厳のある顔をした初老の男性だった。
「ようこそ。我が雪峰へ。私は本艦の艦長である、壮河凪だ。諸君らとは、あの戦闘以来だな・・・・・・。」
そう言い、彼は俺達に向け敬礼した。
彼の襟を見ると、大佐の階級を示す三ツ星が輝いている...SUCCESSOR's OFJIHAD第五十八話「『す』から始まる言葉」
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第二回目の出撃。
その任務開始から既に十時間ほど経過したところだろうか。
そしてこのVTOLの操縦桿を握り締めて三時間が経つ。
自体は思わぬ方向に発展したものの、俺とタイトは任務を遂行することができた。
が、現在の状況が絶望的であることに変わりはない。
Piaシステムの作動により、日本...SUCCESSOR’s OF JIHAD第五十七話「着艦」
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『緊急要員は至急、Sハンガーに向かえ・・・・・・繰り返す、緊急要員はSハンガーにて待機、ハデスの着艦に備えよ。着艦完了次第、急ぎ格納せよ・・・・・・。』
鋼鉄に包まれた広大な空間では、放送の声が、耳に痛いほどよく聞こえる。
もうすぐ、あの親子が帰ってくる頃だ。
『ハデス着艦完了・・・・・・リ...SUCCESSOR’s OF JIHAD第五十六話「降伏勧告」
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コンソールに視線を巡らせ、ボタンやスイッチ類に指を走らせる。
問題ない・・・・・・こういった航空機の操縦は熟知しているつもりだ。
油圧正常。エンジン異常なし。
飛べる。
コックピット内に、エンジンの躍動が響き始め、メインパネルのモニター類から正常に起動したことを告げる電子音が鳴り響いた。
...SUCCESSOR’s OF JIHAD第五十五話「覚悟」
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「ようやくお出ましか・・・・・・。」
無意識にそんな言葉が漏れたが、それも頭上に群がる鋼鉄の巨鳥達、VTOLが轟かせるエンジンの爆音でかき消された。
無線にパイロットの通信が入る。
『遅れてすまない。そいつのほかに敵勢力は。』
そいつ。つい今まで俺と激戦を繰り広げた重音テッドは空中のVTO...SUCCESSOR’s OF JIHAD第五十四話「緊急離脱!」
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「さぁ、ここからが本番だ!」
その言葉と同時に突き出される、鋭利な刃。
だがそれはこの男の腕、重音テッドから繰り出されるグロテスクな触手だ。
「うおぁ!!」
その腕は思いのほか長く伸び、俺の鼻先で空を切る。
「どうした?お前からは仕掛けてこないのか?」
奴の顔に浮かぶ余裕の笑みが月明か...SUCCESSOR’s OF JIHAD第五十三話「ABANDON ALL HOPE」
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互いの背中が触れ合い、タイト背後を任せながら、俺は神経を知り巡らし奴の気配を探った。
重音テッドと名乗ったあの男は、俺達の前に姿を現したかと思うと異常な跳躍力で森の中に紛れ込んでしまった。
だが今のところ、奴がどのような攻撃手段を講じてくるのは不明だ。
「デル。俺はこの二人を安全な場所に退避...SUCCESSOR’s OF JIHAD第五十二話「キメラ」