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日曜日がやって来た。今日は外出の予定はない。家で本でも読むか、オペラのDVDでも見てようかな……そんなことを考えながら、わたしは階下に降りて行こうとして、凍りついた。食堂から、お父さんとお母さんの話し声が聞こえてくる。ううん、これは、話しているんじゃない。
……喧嘩、しているんだ。
「朝からそん...ロミオとシンデレラ 第十話【嵐】
目白皐月
言われた意味を理解するまで、またしばらくかかった。カードの文章は、ミミがロジャーに気持ちを告げるところのもの。ずっと愛していたって……。
それって……レン君がわたしを好きだってこと? ロジャーがミミを好きなように? いえ、台詞はミミだけど……いやだ、なんだか頭が上手く回らない。
心臓の鼓動が早...ロミオとシンデレラ 第五十四話【もつれた糸玉】後編
目白皐月
わたしはどうして、生きているんだろう。
たまに、そう思ってしまう時がある。そういう風に考えるのはよくないのだろうけど、自分が生きているのが不思議に思えることがあるのだ。
部屋に閉じこもって、ミミを膝に抱いて撫でながら、ぼんやりとする。ソウイチさんに殴られてからというもの、わたしはそんな風にして...ロミオとシンデレラ 第七十七話【水晶の心が砕ける時】
目白皐月
その日の朝、登校したわたしの目に入ったのは、信じられないような光景だった。何かって? リンちゃんが、同じクラスの鏡音君と話をしていたのっ! これが驚かずにいられますか!
……と言うと、大抵の人は「それのどこが信じられないわけ? 同じクラスなんだから話ぐらいするでしょ?」って思うかもしれない。けれ...アナザー:ロミオとシンデレラ 第二話【ミクの興奮】
目白皐月
その日の夜、俺は電話で兄と話をした。内容は当然、今日のことである。
「やれやれ……それは、気が滅入るな。自分より年下の義母か。そんなドラマみたいなことが起きるとは」
電話口の向こうで、兄は呆れを含んだ声をあげている。
「滅入るなんてもんじゃない。お義父さんは、一体何を考えているんだか」
「あれだ...ロミオとシンデレラ 外伝その三十六【知らなくてもいいこと】後編
目白皐月
わたしが立てた作戦は完璧だった。まず、わたしがリンちゃんを「映画でも見ない?」と言って家に呼ぶ。そして同じ日に、クオがやっぱり映画を口実にして、鏡音君を連れてくる。後はわたしとクオが喧嘩をする振りをして、二人だけ部屋に残して出て行ってしまうのだ。これで、リンちゃんと鏡音君が部屋の中で二人っきり、と...
アナザー:ロミオとシンデレラ 第四話【ミクの不満】
目白皐月
登校して、ミクちゃんとお喋りして、授業を受ける。授業が終わったら、部活のある日は部活動。それが無い場合、大抵は真っ直ぐ家に帰る。帰宅後は家庭教師の先生について勉強。それが、わたしの日常。何事もなく、日は過ぎていく。
そんな、ある日の放課後。授業が終わって帰り支度をしていると、携帯にメールが届いた...ロミオとシンデレラ 第七話【わたしが街を歩くと】
目白皐月
お母さんはまだ心配そうだったけれど、わたしはもう大丈夫と何度も言って、この日は学校に行った。
学校に着いて教室に入ると、わたしはいつものように持ってきた本を広げた。そう言えば、この本は何だったっけ……。思わず本の表紙を確認してしまう。ガルシンの短編集だった。……なんでこんな本、持って来ちゃったん...ロミオとシンデレラ 第十五話【その耳に届くただ一つの調べがあれば】
目白皐月
どう言おうか考えながら、リンを見る。と、また表情が翳っていた。あ……まずい。なんか誤解させたみたいだ。
「ね、ねえ……ぬいぐるみに名前を付けて、お友達として扱うのって、子供っぽい?」
俺が口を開くより早く、リンの方がそう訊いてきた。え? どうやらリンは、自分がぬいぐるみに名前を付けて、相手が心で...アナザー:ロミオとシンデレラ 第四十九話【言わなくてはならないことがある】後編
目白皐月
帰宅すると、家庭教師の先生はもう来ていた。制服を脱いで私服に着替え、勉強道具を持って学習室に移動する。
学習室はそこそこの広さがある。何年か前までは、姉妹三人でここで揃って勉強していた。今は、ここで勉強するのはわたし一人だけ。ルカ姉さんはもう社会人だし、ハク姉さんは部屋から出てこない。
……だ...ロミオとシンデレラ 第九話【ロウソクに火をください】
目白皐月
月曜の朝、学校に行く前にハク姉さんに声をかけてみようかと思ったけれど、誰かに見咎められるのが嫌で、声をかけることはできなかった。お父さんやルカ姉さんとばったり会って、何をやっているのか訊かれたら答えづらいし……。
ちょっと暗い気分でわたしは朝食を食べ、学校に向かった。教室に入り、自分の席に座る。...ロミオとシンデレラ 第二十話【どうか扉を開けさせて】
目白皐月
注意書き
これは、拙作『ロミオとシンデレラ』の外伝です。
外伝その七【ある日のアクシデント】の直後の話で、お手伝いさんたちの会話のみで構成されています。
なお、本編第六十五話【育ちは誰よりも上】までのネタバレを含みますので、そこまで本編を読了してから読むことを推奨します。
【スケルトン・イ...ロミオとシンデレラ 外伝その二十二【スケルトン・イン・ザ・クローゼット】
目白皐月
ホームシアタールームで、わたしたちは、ミクちゃんが選んだクリスマスが題材のラヴコメ映画を見た。ミクちゃん好みの、可愛くて楽しくて、そして少し心が温かくなるような、そんな映画だ。
映画が終わると、わたしたちは食堂に移動して、みんなで一緒にお昼を食べた。クリスマスだからなのか、食卓も綺麗に飾りつけて...ロミオとシンデレラ 第五十四話【もつれた糸玉】前編
目白皐月
coda Grandioso
11.
「海斗くん。海斗くーん!」
俺が女将――一度でも母親と呼ぼうものなら、独りでは到底こなせるはずもない量の仕事を押しつけられた――から、この旅館にある温泉の効能を暗記させられていると、そんな声が聞こえてきた。
今日は、これでいったい何回目なんだ――?
...ロミオとシンデレラ 43 ※2次創作
周雷文吾
演劇部の連中に、学祭は抽象的な演出で『ロミオとジュリエット』をやることにに決めたというと、反対意見もなく、あっさり決まった。一点を除いて。
まあ平たく言うと、部長が部を私物化するのはどうかという点だ。これは確かに言われても仕方がない。話し合った結果、文化祭は二日に亘るので、主役はダブルキャストに...アナザー:ロミオとシンデレラ 第五十六話【それは自然で不思議なもの】
目白皐月
わたしが大学に入学した年の六月、ルカ姉さんはガクトさんと結婚した。こっちの家に入る形になるので、ガクトさんの方が巡音の姓を名乗ることになる。
こういう家だから仕方がないけれど、大きな式場で、かなり派手な式になった。そしてお母さんに訊いてみたのだけれど、ルカ姉さんは結局、式に対して自分の希望は全く...ロミオとシンデレラ 第七十二話【滅びにいたる門は大きく】
目白皐月
とまあ、そういうわけで、俺たちは四人で遊園地に行くことになった。巡音さんは四人で行くという話を全然聞いていなかったらしく――ミクの奴、絶対わざと伏せてたな――呆然としていた。更に俺の方はレンに妙なことを言われたが、真面目に相手をすると俺が精神的に疲れそうだったので、適当な返事だけしておく。
遊園...ロミオとシンデレラ 第二十五話【遊園地でのクオ】
目白皐月
注意書き
これは、拙作『ロミオとシンデレラ』の外伝です。
外伝その二『ママ、かえってきて』から、三年後のハクを書いたもので、こちらもハク視点となっています。
三年生になったので、少し漢字が増えました。
【やさしいうそと、むごいうそ】
あたしたちの、新しいママだという、カエさんという人が来て...ロミオとシンデレラ 外伝その三【やさしいうそと、むごいうそ】
目白皐月
クオの家で映画を見てから、数日が経過したある日。俺は学校の図書室で『RENT』のサントラを聞きながら、歌詞をチェックしていた。この前見た舞台は字幕がいいかげんで、話の意味を取りづらかったんだよな。そんなわけでネット通販でサントラを購入したんだが、歌詞カードがついていなかった。幸い、歌詞を全部載せて...
アナザー:ロミオとシンデレラ 第六話【檻の虎に太陽を見せて】
目白皐月
注意書き
これは、拙作『ロミオとシンデレラ』の外伝です。
リンの長姉、ルカ視点の短編で、彼女がまだ子供の時の話です。
ちなみに……ルカが相当アレですので、そういうのでも構わない、という方だけ読んでください。
【わたしはいい子】
ある日のことだった。わたしがお部屋でお勉強をしていると、パパが...ロミオとシンデレラ 外伝その一【わたしはいい子】
目白皐月
俺は、喫茶店でミクと向かい合っていた。言わずもがな、ミクに「作戦会議よ!」と引っ張り出されたわけなんだが。というか、何で喫茶店なんだ?
ちなみに、作戦というのは言わずもがな、この前失敗した「レンと巡音さんをくっつけよう作戦」のことである。理由はさっぱりわからないが、ミクは未だに燃えているのだ。
...ロミオとシンデレラ 第八話【作戦会議中のクオ】
目白皐月
注意書き
これは、拙作『ロミオとシンデレラ』の外伝です。
カイト視点で、外伝その二十四【母の立場】の直後の話となります。
したがって、それまでの話を読んでから、お読み下さい。
【それぞれの形】
なんであんなこと、言っちゃったんだろう。
めーちゃんからの電話を強引に終わらせた後、僕はひた...ロミオとシンデレラ 外伝その二十五【それぞれの形】
目白皐月
あ、そうだ。ついでだからもう一つ。
「ごめん、もう一ついいかしら? 児童虐待って、どこに通報したらいいの?」
ハクちゃんは、リンちゃんのお父さんはリンちゃんを閉じ込めてるって言った。場合によっては、虐待で通報できるかもしれない。
「え……どこって……児童相談所、じゃないかな」
「基本は児童相談所...ロミオとシンデレラ 外伝その二十三【メイコの思案】後編
目白皐月
頭の中が真っ白な状態で、わたしは鏡音君と一緒に歩いていた。どれだけ歩いたのか、それすらもよくわからない。とにかく、しばらく歩くと、鏡音君が立ち止まり、わたしの肩を抱く腕を放してくれた。
「……ごめん、変なことに巻き込んじゃって」
「ね、ねえ……何だったの、今の? あの子たち、中学の同級生って言って...ロミオとシンデレラ 第二十三話【恋とはどんなものかしら】前編
目白皐月
結局、日曜日は一日ぼんやりとして過ごしてしまった。そして、次の日。月曜になっても、気分は晴れない。
「リン、ちゃんと食べないと駄目よ。昨日もろくに食べてないでしょう?」
お母さんにそう言われたけれど、わたしは食が進まなかった。お父さんがいないのをいいことに、わたしは朝食を半分以上残して、席を立っ...ロミオとシンデレラ 第十一話【冷たくもなく、熱くもない】
目白皐月
そうして、何日が経過しただろうか。よく憶えていない。ミカを生んでからは、時間の経過が自分でもよくわからなくなっている。ミカに煩わされるだけで、一日が過ぎていくからだ。
ミカは学習能力があまりないようで、相変わらず私を困らせてばかりいる。いつになったらいい子になることを学ぶのだろう。いつもお行儀よ...ロミオとシンデレラ 外伝その三十八【こわれゆくもの】後編
目白皐月
「巡音さん、大変よくできていますよ」
大学の先生はそう言って、わたしが渡した原稿を置いた。
「ありがとうございます」
「じゃあ、これ、次の分ね」
どさっとプリントが渡される。わたしはそれを、自分の鞄に仕舞った。
「できたら来新学期が始まるまでには仕上げてもらえる?」
わたしはかかる時間を計算し...ロミオとシンデレラ 第七十三話【わたしの望みは大きすぎるの?】
目白皐月
いいものなのか、嫌なものなのか。作品ごとに褒めてあったりそうでなかったりで、わたしには余計にわからない。
「うーん……俺とユイは中三の時に委員会が一緒で、それで仲良くなって、秋頃にユイが『好きでした』って言ってきて、それでつきあおうかって話になったんだけど、何せ中三の秋だろ。受験に追われてろくにデ...ロミオとシンデレラ 第二十三話【恋とはどんなものかしら】後編
目白皐月
レン君が演劇部の人たちに話をしたところ、異論を挟む人はいなかったとのことで、『ロミオとジュリエット』に決定した。グミちゃんも「あたし、悲劇のヒロインって一度やってみたかったんです!」と、役に積極的だったので、わたしはほっとした。
ミクオ君もマーキューシオ役に決定した。これでミクちゃんが喜んでくれ...ロミオとシンデレラ 第六十一話【死ではなく愛】
目白皐月
「あ、あの……?」
思わず、そっちを見てしまうわたし。
「あ、ああ、ごめんごめん……気にしないで……」
言いながら、相変わらずお姉さんは笑っている。鏡音君が、ちょっと呆れた声をお姉さんにかけた。
「姉貴、何がそんなにおかしいわけ?」
「だって……この主人公、あまりにもわかりやすすぎるバカやってる...ロミオとシンデレラ 第十八話【何がわたしの心をひきつけるの】後編
目白皐月
図書館に着いたわたしは、座席に座ってひとしきり勉強した。集中しきっていたため、時間の経過に気づかず、気がつくと閉館の時間になっていた。いけない、もう外は暗くなりかけている。荷物をまとめ、わたしは帰路についた。
帰り道では、行きのような妙な人に遭遇することはなく、家まで真っ直ぐにたどり着いた。玄関...ロミオとシンデレラ 外伝その七【ある日のアクシデント】後編
目白皐月
注意書き
これは、拙作『ロミオとシンデレラ』の外伝です。
外伝その四十【夜更けの出来事】のレン視点のエピソードになります。
また、外伝その三十九【家族の定義】のネタバレを含みますので、そこまでの話を読んでから、読むことを推奨します。
【心安らかなる時を】
夜、俺は居間で雑誌を読んでいた。...ロミオとシンデレラ 外伝その四十三【心安らかなる時を】
目白皐月
その次の日。わたしは鬱々とした気分で目を覚ました。時計を見る。結構早いな……いつもより早いぐらい。学校の支度……あ、今日は第二土曜だから、学校は無いんだっけ。
あれ……? 意識に何か引っかかってるな……?
首を軽く横に振りながら、わたしは身体を起こした。いやだ、わたしったら服のままで寝ちゃった...ロミオとシンデレラ 第三十三話【どうしても影がほしいの】前編
目白皐月
あれ以来、レン君はわたしに、CDや本を貸してくれるようになった。少し後ろめたい気持ちはあったけれど、わたしは好奇心に勝てず、そういったものを貸してもらった。今まであまり聞いたことのなかった音楽や、読んだことのなかったタイプの本。世の中には色々なものがあるのだと、改めて気づいた。
お返しというわけ...ロミオとシンデレラ 第五十一話【恋はハートが決めるもの】前編
目白皐月
鏡音君のお姉さんが作ってくれたパスタは、とても美味しかった。鏡音君はああ言っていたけど、多分謙遜していたのだろう。
そのお姉さんは、わたしのお弁当箱のおかずを「美味しい」と感激しながら食べていた。鏡音君がやや呆れた表情で、そんなお姉さんを見ている。
ハク姉さんの先輩ということは、ルカ姉さんとハ...ロミオとシンデレラ 第十八話【何がわたしの心をひきつけるの】前編
目白皐月
月曜の朝、わたしが教室に入ると、リンちゃんが鏡音君と話をしていた。見た感じだと、前よりもリンちゃんは打ち解けてきているみたい。……やったわ! クオにはお前の作戦全然効果なかったじゃないかとか言われたけど、なんだかんだで距離は縮まっていたのね。
わたしがリンちゃんにおはようと声をかけると、鏡音君は...アナザー:ロミオとシンデレラ 第十八話【ミクの奔走】
目白皐月
駅に着くと、僕は帯人兄さんの住んでいる家の最寄り駅までの切符を買った。改札を抜けて電車に乗る。電車に揺られながら、僕は今度は帯人兄さんのことを考えていた。ちょっとは落ち着いていてくれるといいんだけど……。
次兄の帯人兄さんは、僕の五歳上。優等生だったマイト兄さんと比べると、帯人兄さんは「問題児」...ロミオとシンデレラ 外伝その十五【カイトの悩み】後編
目白皐月
その日の夜、俺は晩飯の後で、姉貴に訊いてみた。
「今日、クオから映画のDVD借りてきたんだけど、姉貴も見る?」
「何借りたの?」
「『ブレインデッド』ゾンビ映画。ピーター・ジャクソン監督」
ちなみに、姉貴は変な映画が結構好きだったりする。弟の俺でも、姉貴の映画の趣味をはっきりとは把握していない。...アナザー:ロミオとシンデレラ 第五話【ブレインデッド】
目白皐月
昼は初音さんとクオと合流して、四人で取った。二人とも午前中ずーっと絶叫マシンに乗っていたらしく、なんというか、ハイになっていた。人はあの手のものでもハイになれるらしい。
ついでなので、クオにグミヤたちと会った話もしておく。クオもあの二人がつきあっていたのは初耳らしく、驚いていた。
「へえ、グミヤ...アナザー:ロミオとシンデレラ 第二十一話【ここにいるよ忘れないで】
目白皐月
放課後、俺は初音さんと一緒に初音さんのところの車に乗せてもらって、リンの入院している病院へと向かった。車だとさすがに早く、割とすぐ病院に着いた。
初音さんはさっさと病院の中に入っていくと、受付の人と話し始めた。しばらくすると、こっちに戻って来る。
「リンちゃん、311号室だって」
エレベーター...アナザー:ロミオとシンデレラ 第四十二話【それが多分たった一つのできること】後編
目白皐月