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「忙しい人向け悪ノ娘NG集」
及び
「忙しい人向けかもしれない悪ノ娘」
を元にしてあります。
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運命なんてものの存在を、僕は信じていなかった。
でも、あの日。
「さあ、跪きなさい!」
馬に跨って高笑いする王女の姿を見て、僕は一目で恋に落ちてしまったんだ。
...悪ノNG使い
翔破
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むかしむかし、あるところに。
<造花の薔薇.エピローグ>
さああ、と言う涼しげな音と共に、冷たい水が薔薇の花を濡らす。
黄の国のかつての王宮の庭。
今や本来の主を失った花園で、一人の男が薔薇の花壇に水をやっていた。
「ご苦労様」
横から掛けられた声に男は振り向き、破顔する。そこにいたのが彼の敬愛する...造花の薔薇.エピローグ
翔破
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重すぎるの。
<造花の薔薇.17>
赤い女剣士が叫ぶ。
これで王家が滅びるのだと。
王女は自らの報いを受けるのだと。
彼女を知っている気がするけれど、追求するだけの余裕は無い。
そして、私の周りの人達も熱狂的に叫ぶ。
人殺し。あの人を返せ。あの子を返せ。
悪の申し子め。
お前など生まれてこなければよ...造花の薔薇.17
翔破
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彼女を愛した彼が、そうさせるのだろうか。
<造花の薔薇.16>
「なんでこんな事をしたのよ」
声を潜めて問うと苦笑が返って来た。
「何故と聞かれても、拙者自身余り良く分からないのでござる」
「は?」
「分からないのでござる」
「何よそれ…そんな事でメイコさんに剣を向けたの?」
呆れを通り越して戦慄を...造花の薔薇.16:side.ルカ
翔破
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嘘でも良いからさあ!
<造花の薔薇.15:side.GUMI>
「ううう…馬鹿、兄ちゃんの馬鹿っ」
私は、必死に通路を手探りしながら前へと進んだ。一歩毎に兄ちゃんに悪態を付きながら。
「ほ、ほんとにこんなとこあるなんて!ぎゃー!す、滑るぅ!」
多分長い事使われてなかったんだろう(もしかして初めて使わ...造花の薔薇.15:side.GUMI
翔破
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どうしてそこに希望を見出してしまったんだろう。
<造花の薔薇.14>
レンが、扉を開くために慎重に扉と壁の隙間に指を這わせる。
流石『隠し』扉、見つからないように徹底的に工夫されているせいでなかなか開くための取っ掛かりは見つかりにくい様だ。
「扉、開く?」
「ええと…ああ、やっぱり大丈夫みたいだ」
...造花の薔薇.14
翔破
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私は、許されても良いの…?
<造花の薔薇.13>
私は遂にその日が来た事を、駆け込んで来たレンによって知った。
儀礼なんて一切捨て去って必死の色を浮かべているその顔を見て、何が起きたのか正確に気付いた。
嬉しくも悲しくもなかった。
きっと私は、そればかり考えすぎて擦り切れてしまったんだろう。
「革命...造花の薔薇.13
翔破
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終わりも、もうすぐね。
<造花の薔薇.12>
きな臭くなってきた国内。山のように届く嘆願状。それらが、もう全てが終わる日が近いのだと告げていた。
レンから再三諌められても何もする気なんて起きなくて、結局書類は山のようにうずたかく積まれる事になった。
執務机に片肘を付き、無造作に一枚めくる。
そこには...造花の薔薇.12
翔破
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まあ、こういうのが一人いても悪くないであろう。
<造花の薔薇.11':sideがくぽ>
「むむむ」
「チェックメイト」
「むう…」
丸っこくていやに立体的な駒を、眉を顰て見遣る。
確かに将棋には似ている、が、しかし。
「投了でござるな。はあ、しかしルカ殿は本当にちぇすが強いのでござるなあ」
溜息をつ...造花の薔薇.11':sideがくぽ
翔破
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私は、大切な者さえ―――
<造花の薔薇.11>
「美味しい!」
出来るだけ明るく笑いながらも、私は胸中で眉を寄せた。
味なんて分からない。いえ、技巧として素晴らしい物だとは思うけれど、最後の味付けをする「喜び」がないのだから味気無いも良い所だ。
折角レンが作ってくれたのに、ろくに味わえないなんて…
...造花の薔薇.11
翔破
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好きという言葉を真っ黒に塗り潰して―――それでもまだ、私は。
<造花の薔薇.10>
「人々に噂をばらまいたのね、ウィリアム」
「と、おっしゃると」
「レンが尋ねてきたわ。私が…カイト、さんに恋をしているのかと」
もう今更あがこうとは思わない。
最も、私の「恋人」候補のその男性、カイトさんに私がどれだ...造花の薔薇.10
翔破
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全てが、物語のように上手く行けば良いのに。
<造花の薔薇.9>
そんな最悪の再会を果たしてから数年。それでも私の生活はレンがいることで大きく変わった。
話す相手がいること。寄り掛かる相手がいること。それがどれ程慰めになるのか、私は身を以って知った。
少なくとも、私は笑うようになった。
たまには本当に...造花の薔薇.9
翔破
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食べちゃったお菓子、壊れちゃったガラス、すべて元には戻らない。
<造花の薔薇.8>
その日、私にいつもより豪奢なドレスが宛がわれた。
―――何かあるのかしら。
何も知らされていなかった私は、ぼんやりとそんなことを考えた。
大体、新しい衣装なんて次から次へと下ろされてくる。こんなに沢山必要ない、使い切...造花の薔薇.8
翔破
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世界と貴方を天秤にかけたのよ。
<造花の薔薇.7>
私の心は日毎に擦り減っていった。
これ以上付け入る隙を見せてはいけない。誰が私を陥れようとしているのかわからないのだから。
でも疑うべき人は余りに多い。
あの人もそうかもしれない。あの人も、あの人も。
結果として、私は完全に疑心暗鬼に捕われてしまっ...造花の薔薇.7
翔破
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(おばあさま、どうしてそんなにお口が大きいの?)
(それは、おまえを食べるためさ)
<造花の薔薇.6>
それから、また怠惰な日が続くようになった。
幸いなことに読めない言葉は格段に少なくなったから本はどれも読めるようにはなったけれど、やっぱり一人は淋しい。
話し相手になってはくれないか―――そんな望...造花の薔薇.6
翔破
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一人になる。
<造花の薔薇.5>
お父様の死は、意外と簡単に隠すことができた。
情報の行き来が限定的な城と市井の間だからこそ上手く行ったのかもしれない。
とにかく、お父様の側近という臣職のままながら使用人を纏める役目を始めたウィリアムの手腕は褒めるに値するものだった。
暫くの間何食わぬ顔で沈黙を守り...造花の薔薇.5
翔破
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私は犯罪者だ。
<造花の薔薇.4>
その時私はお父様の部屋に行っていた。
なんの用事だったかは覚えていないけれど、その時部屋の中には私とお父様の二人だけだった。
私はお父様が怖かった。
あの会話を聞いてから、どうしても前と同じように笑って駆け寄ることが出来なくなっていた。
―――だって、もしもそうし...造花の薔薇.4
翔破
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ゆっくりと輪は狭まる。
<造花の薔薇.3>
レンが他の家に移されてから数日後、私は正式に王女として名乗りを上げた。
黄の国の次期国王、リン王女。それからの私の肩書はそれになった。
喜びは、なかった。
むしろ、どちらかと言えば怖くて心細くて…嫌だった。
ただの「リン」でいられる時間は終わったのだと、固...造花の薔薇.3
翔破
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思えば、あの時から既に私の運命は決まっていた。
<造花の薔薇.2>
『王い、けいしょう?ってどういうことなの?』
『次の王様になるのがリン様かレン様か決めるということですよ』
『王さま?うーん、やだなあ』
アンネは少し困った顔になった。
『他の国のように男の方か女の方か、どちらかが王位を継ぐように決...造花の薔薇.2
翔破
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何故、戻って来たの。
<造花の薔薇.1>
はあ、と溜め息をつく。
正直なところ書庫の本は読み尽くした。手持ち無沙汰というか…まあ何回読んでも面白い、いわゆる名作というものも確かにあるけれど。でもいかに素晴らしい本であっても、何百回も読めば流石に飽きが来てしまう。
―――外に行けたらいいのに。...造花の薔薇.1
翔破
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ねえリン。
生まれ変わりって、あると思う?
もしも生まれ変わりがあるとして、だよ。
どんな生を受けようと、僕は君を守ると思う。
だから、もしもまた兄弟として、いやそうじゃなくてもいい。
もしもなにかの縁でまた近しい二人として生を受けることがあったら―――その時はまた一緒に遊んでね。
君の笑顔が大好き...王国の薔薇.16
翔破
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気づかれなければ僕の勝ち。
<王国の薔薇.15>
「・・・さむ」
一人牢に放り込まれた僕は、僅かに身を震わせた。
身につけているのはぼろぼろに汚れたドレスだ。結局彼等は捕まえた『王女』に囚人服を与えることもしなかった。
面倒だったのか、用も無く王女に構う気がしないのか・・・なんにせよ、下手に飾り気の...王国の薔薇.15
翔破
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それが罪でなかった筈がない。
<王国の薔薇.14>
「扉、開く?」
「ええと・・・ああ、大丈夫みたいだ」
力を込めて、引く。
隠し扉は重いながらもゆっくりと開いた。
扉は厚く、防音もしっかりしている。ただ一つ声を通わせることが出来るそう大きくない穴は何の変哲も無いような装飾で隠されていて、それを外せ...王国の薔薇.14
翔破
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自分勝手なのは十分に分かってる。
<王国の薔薇.13>
遂に、人々の波は王宮まで押し寄せて来た。
もはやここにその波を遮るものは無い。今は城の外で様子を伺っている様だけれど、一昼夜もしないうちに攻め込んでくるに違いない。
流石に僕は慌てた。
急がないと、全てが台なしになってしまう。
とにかく、どうに...王国の薔薇.13
翔破
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そして世界は壊れる。
<王国の薔薇.12>
その日も、いつもと変わらず過ぎていた。
穏やかで贅沢な、閉じられた世界。
亀裂は急速に走った。
―――なんだろう。
急にざわつき始めた城内。真剣な、いや、恐怖感を漂わせた表情で口々に何かを喋る使用人や家臣達。
何かがあったのは分かった。
でも、何が・・・?...王国の薔薇.12
翔破
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誓おう。次こそは、と。
<王国の薔薇.11>
最近、各地で暴動が多発している。
そんな噂が王宮で囁かれ始めて数ヶ月が経った。
一昨日はあの街で。昨日はあの村で。果たして今日はどこで人々が立ち上がるのか。
緑の国の遠征に向かっているためにただでさえ少ない兵達は、あちこちで連続して起きる暴動に忙殺される...王国の薔薇.11
翔破
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覚悟しておいて。
<王国の薔薇.間章:sideメイコ>
父さんが死んでからというもの、私は物思いに耽ることが多くなった。
『憎むな』
父の最後の言葉を、何回も噛み締めたから。
どういう意味なのか。何を伝えたかったのか。
始めは無茶な話だと思った。肉親を目の前で、しかも理不尽に殺されて憎まないでいられ...王国の薔薇.間章:sideメイコ
翔破
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選んだことは悔やまない。
<王国の薔薇.10>
「美味しい!」
フォークでお菓子を口に運んで笑うリン。
僕はそれに黙って笑顔を返した。
「これ、レンが作ったんですって?多芸ね、あなた」
「いえ、褒めて頂く程では」
「謙遜なんてしなくていいのに」
無邪気に笑うリン。
その笑顔が―――今は痛い。...王国の薔薇.10
翔破
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光よ、彼女と共に有れ。
<王国の薔薇.9':sideカイト>
俺は彼女の笑顔が好きだった。
「カイトさん!」
久しぶりに二人で出かけた黄の国、その城下街でミクは子供のように笑っていた。
ああ、可愛いなあ・・・
俺とミクは、まあ恋人同士としてこの数年を過ごしている。
なんだかんだいってミクとの付き合い...王国の薔薇.9':sideカイト
翔破
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僕はあなたを裏切った―――
<王国の薔薇.9>
紙切れ一枚を渡され、僕は緑の国に渡った。黄の国の軍が緑の国に渡る少し前の事だ。
僕の役目は「彼女」を見つけ出し、「消す」こと。
唇を噛んでももう遅い。今更出来ませんと引き返したら即刻解雇、悪くて刑罰だ。最悪死刑。大逆罪だのなんだの、理由ならいくらでも付...王国の薔薇.9
翔破
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僕はそれに応えよう
<王国の薔薇.8>
ある時、一つの噂が国中を駆け巡った。
あの王女が恋をしたらしい、と。
なんでもその相手は海の向こうの貴族様。
彼は才色兼備で頭脳明晰、人々の信頼厚い聖人君子かとさえ思える方。―――とてもではないが、王女には勿体ない相手だ。
だけではない。彼には既に恋人がいるそ...王国の薔薇.8
翔破
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なのに、何故君は。
<王国の薔薇.7>
落ち着け、落ち着け、落ち着け。
何度も自分に言い聞かせる。
人々を変化させているもう一つの原因、それが処刑。
広場で、昼過ぎに、わざわざ人を集めた目の前での断頭刑―――晒しもの。
でもそれは今や普通のことで、日常茶飯事とさえ言える。
それはよく考えれば、一日に...王国の薔薇.7
翔破
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それでも、君を信じたいんだ。
<王国の薔薇.6>
リンは僕を忘れたわけじゃない。
僕はこの二年間、ずっとそう言って自分を励ましてきた。
たまに、そう、忘れたようにふと見せる無邪気な笑顔や優しい心遣いだってそうだ。全てが全て変わってしまったわけじゃない。
だけど。
だけど―――
「レン、ちょっと珍しい...王国の薔薇.6
翔破
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『さあ、ひざまずきなさい!』
<王国の薔薇.5>
『・・・レン様、戻って来たのですね』
視覚が混乱しそうな程華美に飾り立てられた、建物の一室。
僕は声をかけられて振り返った。
僕を「様」と呼ぶ、それはつまり僕の出生を知る人であると言うことだ。
そう―――僕とリンが双子だと知る一人。
『貴方は・・・』...王国の薔薇.5
翔破
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そして僕は彼と出会った。
<王国の薔薇.4>
あれは、何歳の時だっただろう。
どちらかといえば最近のことだったと思うけれど、僕達の一家は海を越えた隣国である青の国に行った。
青の国に行くのは初めてだったから少し楽しみに感じていた。
他の国で知り合った人から話だけは聞いていたけれど、実際かなり住み易そ...王国の薔薇.4
翔破
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