タグ:いちひめ
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水族館を一通り見て回り、私達は館内にあるファーストフード店に入った。そこで私は思い切って聞いてみる事にした。ずっと穏やかな笑みを絶やさないこの人に。
「どうしていきなりデートしようなんて言ったんですか?雉鳴さん。」
「んー、まぁ、単に面白そうだったのと…色々試してみたくてね。」
そう言うと雉鳴さんは...いちごいちえとひめしあい-25.セーフかな?-
安酉鵺
顔合わせの後会社を出ようとした所で私は日向先輩に捕まった。友達の澤田先輩が狼の毒牙に掛かりそうだとか何とか言っていたけど、要約すると隠れて澤田先輩のデートに着いて行く、と言う事だった。
「先輩…その変な眼鏡と帽子は何なんです?」
「む?ひおちゃん!尾行の基本は変装だよ?」
「余計に目立つと思うんです...いちごいちえとひめしあい-24.何て言えば?-
安酉鵺
佐藤さんと言い、輝詞さんと言い、他のスタッフさん達も含めてこの企画の人達は説明する前からホイホイと話を進めないで欲しい。と、私は苛立っている若葉や動揺している他の参加者の様子を見ながら思った。私もいきなりアミダくじで自分を護ってくれる人を決められては溜まった物じゃない。佐藤さんいわく今のパートナーは...
いちごいちえとひめしあい-23.雉って雑食?-
安酉鵺
王子様ちっくな爆弾発言と、花一匁みたいなパートナー選び、そして人間関係のゴタゴタ…実に実にペンが進む状況に思わず顔がにやけてしまいそうだった。新しいメモ帳とスケッチブックが必要かも、なんて通路を歩きつつ頭の中で計算していると、傷だらけの拓十君が横切った。
「不本意且つ屈辱~って所かな?ウサギさんは。...いちごいちえとひめしあい-22.一直線なボケ-
安酉鵺
打ち解けているんだかいないんだか微妙なやり取りで予定されていた時間を15分程過ぎた所へ数人の女の子が姿を見せた。どうやら1人が体調を崩して休んでいたとの事。室内を見回すと女の子9人に対して男の人は3人しか居ない。あの銀緑頭の人も今日は顔を見ていなかった。
「ねぇ、他の人は――…。」
そう言い掛けた時...いちごいちえとひめしあい-21.それはあまりに唐突に-
安酉鵺
ゆさゆさと肩を揺らされてぼんやりと目を開ける、けどまだまぶたは仲良くしたがっていてとろとろと目を瞑る。おやすみなさい、世界。…ん?何だろう?何か凄く良い匂いがする。爽やかなミントの香りの中にビターチョコの香ばしさが…。
「はい、あーん。」
「あむっ。」
口の中に爽やかな甘さがほわりと広がった。はぁ~...いちごいちえとひめしあい-20.トマトに進化-
安酉鵺
時計の音が静かに響く中、机に突っ伏したまま隣のひおが転寝を始めてしまった。揺らして起こしてみたけど全然起きる気配が無い。聞いた話では幼馴染のお兄ちゃんが3年振りに帰って来て、昨日は嬉しくて殆ど眠れなかったんだとか。
「大丈夫?具合でも悪いの?」
ひおが起きないので心配したのか、斜め前に座っていた人が...いちごいちえとひめしあい-19.理想の大人-
安酉鵺
最近私疫病神か何かに取り憑かれているんじゃないかな?変なデータテストに巻き込まれるし、痴漢には遭うし、知らない場所で急病人に会うし…。
「若葉ー。」
「ワンワン!」
何故か生きてる犬を抱いて彩花が戻って来た。えっ?!犬?!何処から犬なんて連れて来たの?!流石彩花!やる事が違うわ!…って、いけないいけ...いちごいちえとひめしあい-18.慣れてる-
安酉鵺
数日前、家に何だかとってもテンションの高い女の人がやって来た。何でも心理学部の研究とゲームがどうとかで、最後の方は『萌え』とか『キュン』とか言ってたからあんまり聞いてなかったけど、どうやら私はその新しいゲームのテストプレイヤーみたいな物に選ばれたと言う事らしい。今日はテストの参加者の顔合わせをする、...
いちごいちえとひめしあい-17.両手にハンドバッグ-
安酉鵺
人の足音だけが聞こえるフロアを黙々と掃除していた。まだ人気の無いライブハウスって、何だか味気無い。テーブルを拭いていると双子の弟、カオスが私に声を掛けた。
「カシス、何か呼んでるよ。」
「私?」
「うん。余所のバンドのメンバー?」
覚えが無いので首を傾げつつ裏口に行ってみると、緑掛かった銀髪が見えた...いちごいちえとひめしあい-16.頼りない-
安酉鵺
長い間飛行機に乗っていたせいか足元が頼りない。飛行機に何度も乗っているがこの感じは未だに慣れない。ロビーのソファに座っていると影が落ちた。座ったまま上を見ると一緒に帰国した後輩の弭(ユハ)の顔があった。
「時差ボケ大丈夫?先輩。はい、お茶。」
「悪い…。」
額に冷たい缶が当てられ少し気分が落ち着く。...いちごいちえとひめしあい-15.油断大敵-
安酉鵺
家に入ろうとした時ポストに私宛の手紙を見付けた。一通目の封筒に会社の名前と『∞』のロゴが見えてハァーッと溜息を吐いた。そして二通目…。
「え…?」
差出人の名前を見て私の心臓はドキンと跳ねた。
「あら、おかえり緋お…。」
「ただいま!」
家に入るなりお母さんの声を背中に私は階段を駆け上がり自分の部屋...いちごいちえとひめしあい-14.手紙-
安酉鵺
事務的な文章のメールと画像を見つつサラダを口にする。疲れているのか味がいまいち判らなくて、途中から事務的に口に詰め込んでいた。料理は美味しい筈なのに…。
「大分お疲れの様ですね、響さん。」
余程仏頂面だったのか、馴染みの店員がグラスを磨きながら静かな声で言った。
「ははは…ごめんね、一之瀬君。」
曖...いちごいちえとひめしあい-13.落ち着きの無い-
安酉鵺
いきなり理不尽に解散宣言をされて医務室にポツンと残されてしまった。実際学校からは近いので困る訳では無かったがあからさまに杜撰な扱いされるのもいい気分はしなかった。
「大丈夫なのか?お前みたいなガキで。ま、代役なんてそんなもんか。」
ベッドの軋む音と共に聞き覚えの無い声がした。入った時に寝ていた奴だっ...いちごいちえとひめしあい-12.冷や汗-
安酉鵺
私達は取り敢えず『∞』のテスト参加者を話をしてみようと言う事になり、合流したしふぉんを加えて4人で医務室へ行く事になった。この学校は生徒数が多い事もあってか校舎が広く、中等部、高等部、大学とそれぞれに医務室が設置されている。
「失礼しまー…す?!」
ドアを開けた瞬間鶴村先輩を除く私達3人は固まった。...いちごいちえとひめしあい-11.医務室-
安酉鵺
長い黒髪にデジカメを持った女の子、リボンの色からして三年生。実に、笑顔。
「あの…?」
「初めまして、グレーテルちゃんにウサギ君。」
意味が解らずちょっと怖い、いや、かなり怖い。七海さんも同じ思いなのか微妙に引いているのが感じ取れた。少し間があってから、その先輩は眉間に皺を寄せて首を傾げてからメモを...いちごいちえとひめしあい-10.実に、笑顔で-
安酉鵺
チャイムの音と共に今日の授業が終わった。昨日は随分色々あって、侑俐さんにも迷惑掛けてしまった。今度ちゃんと謝ろう、そう考えていた時だった。
「ひおー、呼んでるよー?」
「へっ?!私?!」
急に名前を呼ばれて教室の出入口に顔を向けると、憮然とした顔で制服を着た七海さんが居た。私…いや、私達が通う『聖リ...いちごいちえとひめしあい-9.百合?-
安酉鵺
散々な一日だった。叔父である志揮兄が事故に遭うし、初対面の女には殴られるし、おまけに訳の解らないゲームのテストに半年間も巻き込まれるし、厄日としか思えなかった。まぁ報酬くれるって言ってたし、せいぜい志揮兄のお見舞いにでも使わせて貰えば良いか。
「帰るか…。」
立ち寄ったコンビ二でもいまいちスッキリせ...いちごいちえとひめしあい-8.屈折-
安酉鵺
送ってくれる車に乗ってる間、私はずっと上の空だった。七海さんみたいに怒る事も、しふぉんみたいに純粋に楽しみにも出来なくて、漠然と不安を感じていた。
「それじゃ、ひおまた明日ね~。」
「あ、うん!明日ね!おやすみ。」
しふぉんが家に入るのを見届けると、自然に溜息が零れた。
「…そんなに嫌?」
余程ぼん...いちごいちえとひめしあい-7.フラッシュバック-
安酉鵺
たっぷりと説明を聞かされ、色々未知の知識を植え付けられて、私は半分ヤケになって居た。何度目になるのか書類の中にある『ルールブック』を見直す。
・『∞』データテスト参加者はその証明として、各自に指定されたコードネームの入った鍵を持つ事
・テスト参加者は社から提供されたtwitterアカウントを使用する...いちごいちえとひめしあい-6.半年間もですか-
安酉鵺
会議室と思われる広い部屋で私達は書類の束を配られた。あのキラキラ目の絵やロゴは見当たらず、空と街の写真の上に『∞』のマークが描かれていた。と、ホワイトボードに女性…佐藤さんがキュッとペンを走らせた。
「キュンてみよう!」
眩暈と頭痛が脱力感が倍になった。七海さんも溜息を吐いてがっくりと…むしろげんな...いちごいちえとひめしあい-5.遠慮なく-
安酉鵺
涙声で飛びついて来た友達、桜華しふぉんとは同じ家庭科部の友達だ。おっとりしてて可愛くて…でも大人しいもんだから直ぐナンパとか痴漢とか、一度誘拐されそうになった事もある。
「しふぉんにまで何したんですか?!」
「人聞き悪いな、君と同じだよ。佐藤女史から何も聞いてない?新作ゲームのデータモデルだって。」...いちごいちえとひめしあい-4.銀の様な緑の様な-
安酉鵺
救急車やら警察やらが来た後、私とさっきの男の子、七海さんは広々とした会社の廊下を歩いていた。制服が場違いな気がして凄く居心地悪い。時々チラチラ振り返る人も居るし、ひそひそ声も聞こえる。そんな重い空気の中、前を歩いていた女性がエレベーターホールで立ち止まった。
「二人共暗いですよー?お通夜じゃないんで...いちごいちえとひめしあい-3.ヘタレトマト-
安酉鵺
母の衝撃発言から数分後、私はタクシーの中に居た。詳しい説明をしたい、と言う言葉に押し負ける形で…いや、むしろ聞かざるを得ない状況に追い込まれたので渋々居るんだけど。
「そんな怖い顔しなくても大丈夫ですよ?普段通りにしてれば良いんですから。」
そんな事言われたって訳も解らずゲームだバイトだのと並べられ...いちごいちえとひめしあい-2.ダメ、轢き逃げ-
安酉鵺
満員電車に揺られて、駅から少し歩いて学校に行って、授業を受けて、寄り道しつつ家に帰って。そんな平和で平凡な毎日が続くと思っていた。
「ハイハイハイ!おっかえりなさーい!」
玄関のドアを開けた瞬間に安っぽいクラッカーとキャッチセールスの様な甲高い声が飛び込んで来た。私はこの状況を即座に判断するだけの脳...いちごいちえとひめしあい-1.コップと麦茶-
安酉鵺