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50件
変わらぬ日常 いえ、いつもよりも
心憂いことが今は多いかしら
溜め息こぼして目を上げたそこに
咲き匂う君をみつけたわ
あはれと思へ山ざくら花よ
わたしが君を愛おしむように 君もわたしを
誰にわかってほしかったということではないけど
君は見てくれてるねって ふと嬉しくなったのよ
呼びかけに聞き入るよう...66.あはれと思へ山ざくら
かぎろい灯火
会うは別れの始め
そう昔から言うように
出会った人々はいずれ必ず
別れゆくもの
旅立っていく人も
故郷へと向かう人も
きっと一度は足を止めるでしょう
さよなら告げに
これやこの これこそが
行く人と別れるところ...10.別れてはまた出逢う
かぎろい灯火
ため息満ちる昨日が 期待をかけた今日が過ぎ
涙でくらした今日が 希望を託す明日が来る
出逢う前を思い出せないほどに
あなたに夢中なのに
どうにも自由の利かない日々は
難波潟の葦の ほんのひとふしほどの
短い間でも あなたに逢いたい
あなたに逢わぬまま 過ごしていくなんて
なんてつらいことでしょう
迫...19.ほんの少しの間さえ
かぎろい灯火
袖ひるがえし 少女子(おとめご)が舞う
華やかな楽の音
実りを祝う年に一度の
神に捧ぐ舞よ
そうは聞くけれど本当かしら
あんなにきれいなのは
きっと本当の天女なんだよ
地上に降り立った
天つ風よ聞こえるか
はるかな空の あの雲の通い路を...12.どうかあの雲の通い路を
かぎろい灯火
新たな日への希望のせて 朝が幕を開ける
過ぎ去りつつある夜のあと 浮かぶ有明の月
あの日の記憶を呼び起こす あの日と同じ空
あなたが僕の人生から こぼれ落ちていった
僕にとっては突然の 終わりの宣告だったから
整理のつけられないままに 立ち止まってるよ
あなたを引きずって
つれないあの夜明けより 暁...30.暁ばかり憂きものは
かぎろい灯火
こんなにも熱くあなたを愛していると
幾千の言葉を並べて主張しようか
並べても並べてもきっと言い足りなくて
言葉がどんなに無力かを思い知るだろう
かくとだにえやは言ふ こんな風に、と
譬えることもできぬ激しい恋を
あなたは知らないでしょう
僕の燃える思いを
心を灼き尽くして
なお已まずに焦がれていると...51.言葉にならぬ燃える思いを
かぎろい灯火
まばゆい半袖光をはじく すれ違いざま目を細め
日傘の下には麦わら帽子 ちょっと気が早いね
覚えず足が止まるのは アイスクリーム屋の前
月替わりのフレーバー 今なら何があるのかな
めんつゆの香りがいつになく 恋しくなったりして
氷たっぷり冷やして お昼はおそばにしようか
夏が来たのさ 春過ぎて からり...2.夏が来たのさ
かぎろい灯火
君と出逢えた奇跡を
それとも そう 運命を
幸運を噛み締めては
感謝しているんだよ
その隣りにいられる喜び
その手を取ること許される名誉
誓った言葉 嘘じゃない
日ごと新たにする決意
君だけを愛し続けると
僕がよそを向くときは...42.波はあの山を越えない
かぎろい灯火
魅力的な人 惹きつけられる人よ
それは本当 確かなの
つい頷いてしまいそう
あなたの隣りで過ごせる日々は
きっと夢のようでしょう
否定できない憧れに胸が弾む
だけど本当は聞いてしまっているの
あなたのせいで悲しい思いをした子たちのこと
音に聞く 噂にも名高い 高師浜の波が
袖を濡らして返すよう...72.噂のあなた
かぎろい灯火
眠いのならどうぞ 他意はないよなんて
恍けて差し出す あなたの腕枕
うかうかと応じて 寄り添ったりしたら
どう言われるかしら まあ危ない
あなたのことじゃない わたしが困るのよ
噂が立ったら どうしてくださるの
せっかくですけど だめよだめ
傷つく名前が惜しいもの
自分を大事にしたいのよ
軽率なこと...67.だめよだめ
かぎろい灯火
ほら あちらをごらんよ
山の向こうの山の
あの高い峰の上に
わかった? 見えるでしょう
桜が咲いているよ
離れた場所からの景色もきれいだね
時を忘れて眺めてたいね
手前の山に霞が立って
隠してしまいませんように
ねえ 知っているかしら...73.どうか霞よ立たないで
かぎろい灯火
終わりのときが近づいていると
こうしてわかるのね
儚いもの 頼りないものよ
人の命なんて
幸せな人生だったとは
どうしても言えないわ
囚われず生きたことを
後悔してはいないけど
もしもあなたの隣りを
離れずにいたならと...56.せめて最後に
かぎろい灯火
爽やかに晴れた空には
ひとひらの憂いすらも
みつけられないのにね
胸の内は曇るばかり
あぢきなく世を思ふゆゑに
今日も絶え間ない物思い
あるいは愛おしく人をみつめつつ
静まらぬ心に揺れ動くこの身です
あざやかに咲いた花には
つゆほどの気負いすらも...99.物思ふ身は
かぎろい灯火
急に人生が終わったとしても
悔いも未練も残らないぐらい
いつも全力でいるつもりだけど
やっぱり未練は残るんだろう
明日を迎えれば また君と会える
何度重ねても飽きない夜明け
胸膨らませて歩き出す朝
生きていきたいと心から願うよ
君と過ごす時をいついつまでも
惜しからざりし命さへ大切に...50.君といたいと心から
かぎろい灯火
田子の浦にやってきたよ
話に聞いていた景色
あれに見えるはこの国一の
写真にだって絵にだって
心打たれたものだけど
やっぱり実物には敵わない
その名は知られる 古来より
鄙に轟く評判の
田子の浦を通り抜けて
打ち出でてみれば ほらそこに...4.富士の高嶺
かぎろい灯火
このところ忙しい日が続いていたから
一息ついた帰路にようやく気づいた
肌刺す空気が澄んで 吐く息が目に見えて
だいぶ厚着になったじゃないか
いつの間に 無意識に
かささぎが翼を並べて恋人を渡した
引き裂かれた二人を再び出逢わせた橋も
今では真っ白に霜が降りているのだろう
すっかり冬も深まって 季節は...6.冬の夜更け
かぎろい灯火
風吹く朝だよ 草がさやさや
寂しい景色を予想しながら
覗いてみたんだ そしたらね
きらめく世界が広がっていたよ
ほぐしたシャンデリアみたいに
光の粒でいっぱいだったの
ねえ 見て見て きれいだよ
風の吹きしく秋の野に
きらきらきらと玉が散る
宝石みたいな白露が...37.つらぬきとめぬ玉が散る
かぎろい灯火
倒れ込むベッドで天井を見上げて
いつになく慕わしく浮かぶのは
遠い昔の過ぎ去った日々
蘇る記憶は しんどかったことも
苦しくて悔しくて泣いたことも全部
忘れずに伝えるけど
辛い日もあったあの頃を
今は恋しく思い出すよ
かつてはこんな風に
懐かしむとは思わなかった...84.今は恋しいあの頃の
かぎろい灯火
あの山のふもと 広がっているのは
一面の笹原よ 名所だと君が語った
通り過ぎる風に さやさやとそよぐ
そよぐ そよぐ そうよ そうよ
さやさやと ささやきあった
二人でつむいだ愛を
どうして忘れるでしょう
わたしが忘れるでしょう
いつもいつも心から
想っているというのに...58.どうして君を忘れるでしょう
かぎろい灯火
何気なく見上げた夜空に
いつの間にか月が白く照っていて
満月が近いわねなんて
知らず口元に笑みが浮かんだわ
そんな自分に気づいたときには
雲の陰へと隠れていたけれど
見しやそれとも分かぬ間に
つれないことね 仕方ないけど
ゆっくり眺めたかったのに
偶然人波にみつけた...57.見しやそれとも分かぬ間に
かぎろい灯火
昨日も今日も飽きることなく
岸に波が寄せては返し
返した波がまた寄るように
繰り返す日も 明けては暮れる
夜になるたび 夢を見るたび
誰にもみつからなくなるたび
人目気にして昼は会えない
あなたと会えたらいいのにな
夢の通ひ路 辿っていくよ
せめてひとときの慰めを...18.夢の通ひ路
かぎろい灯火
垂れ込める雲 土砂降りの雨
気が滅入るんだよ 気圧のせいさ
自分の外に理由探して
尤もらしく説明しても
天高く風そよぐ穏やかな日も
変わらず心は晴れぬまま
わかってるんだ本当は
目を逸らしたって消えやしない
かこち顔に涙伝うけど
月やは物を思はする...86.月やは物を
かぎろい灯火
神さまに一つ頼るなら
つれないあの人を どうか振り向かせてと
そよぐ風になびくように 僕になびかせてと
そう祈るでしょう
ねえ 初瀬の山おろしよ 聞いておくれよ
あの人の心を そっと一吹きしてよ
恋の苦しみばかりを 煽らないでよ
激しかれとは祈らぬものを 今日も胸が痛いんだよ
叶わない夢だというなら...74.風に祈りを
かぎろい灯火
のびのび過ごして夏休み
みんなでお喋りするうちに
山際しらしら夜が明ける
まだ宵だと思ってたのに
お空の散歩に出かけた月は
西のお宿に着けたのかしら
あっという間の 夏の短夜
楽しい時間はおひらきよ
あなたと二人で夕涼み
夜風に吹かれているうちに...36.夏の短夜
かぎろい灯火
僕だけの恋だったあの頃を通り過ぎ
君との恋になったあの瞬間から
バラ色の日々がこのまま続くと信じていた
二人の想いさえ一つなら何でも乗り越えていけると
広がる海を前にして 楫を失くした舟人が
ゆらゆらと頼りなく 波間を漂うように
行方も知らぬ恋の道 世界はこんなにも大きくて
僕らはこんなにちっぽけだ...46.楫を失くした舟人が
かぎろい灯火
しばらく遠くへと行くことになりました
よんどころない事情なので
ずっとではないけれど 長くはなりそうです
何ヶ月では足りないくらい
君と だから もう 会えなくなるけど
因幡の山の峰に生ふる松の
もしも君が待っていてくれるなら
何が立ちはだかって 僕を妨げたって
きっと帰ってくるよ 君のそばに再び
...16.君が待っていてくれるなら
かぎろい灯火
心弱いと 後ろ向きだとは
重々承知で思いを馳せる
まぶしく振り返る過去の日々は
両手広げてもあふれるほど
ひとり気ままに駆け抜けたとき
あなたとふたり安らいだとき
それぞれの道を歩いたとき
力をあわせて挑んだとき
数えれば尽きぬ宝物は今や
手を伸ばせども届かぬ彼方...100.過ぎた昔を懐かしみ
かぎろい灯火
それでは一つ謎をかけましょう
テーマは「恋」でどうですか
沖の石とかけて我が袖と解く
その心は さあわかるかしら
平気な顔がうまくなったわ
いい比喩でしょうとうそぶいて
日の光を浴びた水面(みなも)が
明るくきらめくように
潮が引いても隠れて見えない
沖の石のように 僕の袖は...92.沖の石の僕の恋
かぎろい灯火
景色美しいあの島を
あなたに見せてあげたいわ
今日も漁師が海に出る
波の間を舟が行く
まるでこのわたしも
あの中の一人みたいね
絶えず飛沫を浴びて
海で生きているかのよう
雄島のあまの袖こそは
かくも濡れたことでしょう...90.見せてあげたいこの袖を
かぎろい灯火
何に動じ揺れる様子もない仮面を
今日もわたしは被れていたかしら
可愛げがないくらいでちょうどいいのよ
恋心なんて無縁なふりをして
芽生えた想いは 気づいていたけれど
何ができたでしょう 許されぬ立場にあって
絶えなば絶えね玉の緒よ 人に知られるくらいなら
忍ぶることのいずれは 弱ってしまうから……
...89.絶えなば絶えね玉の緒よ
かぎろい灯火
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