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消防車とパトカーと野次馬で辺りはざわついていた。
「ねぇ…大丈夫?顔色悪いよ?」
「ここは関係者以外立ち入り禁止ですよ~、君、入らないで。」
「バッ…啓輔は…!ここの住人は?!」
「住人の安否は判ってないよ。でもまぁこれだけ大規模な爆発じゃねぇ…。」
ぐらりと眩暈がした。ほんの半日前まで話していた、...BeastSyndrome -70.着信音-
安酉鵺
日が落ちて、暗くなり、夜になる。窓の外は闇と、無機質な色のライト。
「大丈夫ですか?」
「何が…。」
「辛そうにして居ましたから。」
心配そうな顔で覗き込むが、傷だらけの腕がやっぱり痛々しい。自分の意思と関係無く戦いの中に身を置いて、こんな傷だらけになって…。同情は良くないと判っていても禁じえなかっ...BeastSyndrome -69.無機質な光-
安酉鵺
もう最悪だよぉ!よりによって何であんなタイミングでドア開けちゃうの?何でそこで翡翠さん来るの?神様意地悪過ぎ!もう翡翠さんが違う意味で神!
「うわわっ?!何だ?!」
「こら!君!止まりなさい!」
止まりたくないよぉ!もうほっといてよ!このままどっか飛んでっちゃいたい位なんだから!もう頭沸騰寸前、顔な...BeastSyndrome -68.嬉しかったんです-
安酉鵺
目が覚めた時、ホテルの一室みたいな部屋のベッドに一人だった。
「え?…え?え?ここ…何処?!」
落ち着いて記憶を辿ってみる。確か私家に行って…それでお母さん探してて…。また涙が出そうになった。静まり返った家、聞こえなかったお母さんの声。お母さん…大丈夫かな…。
「あ…!翡翠さん…、翡翠さんは?!」
...BeastSyndrome -67.全力疾走-
安酉鵺
研究資料、報告書、過去のデータ、観察記録、そして言葉…。それは私のこれ迄の考えを崩すには充分でした。
「これは…。」
「納得して貰えた?菖蒲博士。」
「ノアが治っている以上、信じるしか無いでしょう。以前の私なら疑いも
しましたが。しかし8年間こんな事をずっと?」
「まぁ、そう言う事になるな。」
「...BeastSyndrome -66.無力じゃないよ-
安酉鵺
どうしよう、怒らせた…絶対怒らせたよ…!呆れてる…何やってるの?バカ木徒!!もう顔が見れないよ!!
「木徒。」
「ごめんなさ…ごめんなさい!ごめんなさい!」
「怒ってないから…それとも俺、何かしたか?」
「違っ…してない!違うの!違うの!」
「泣いてちゃ判らないだろ!」
「ひっ!…うっ…うぅ~~~っ...BeastSyndrome -65.首枷-
安酉鵺
詩羽さんが研究班を収集していた。また、あの実験をやるのだろう。この世の終わりの様な声が耳に甦って、まだ少し怖い…。
「スズミさん、あの…。」
「木徒ちゃん、どうしたの?」
「研究班収集されてるみたい…だから、その…。」
「うん…判った、じゃあリヌちゃん見ててくれるかな?私…行くから、」
スズミさんは...BeastSyndrome -64.意識-
安酉鵺
奏医師はテキパキと傷の処置をすると闇月詩羽と何かを話していた。
「リヌちゃん、気を失ってるだけみたいですよ。」
「すみません…。」
「スズミ、ちょっと…。」
「あ、うん…。」
「リヌさん?!」
「別室で休ませるだけだ。そう心配するな。」
リヌは軽々と抱き上げられ、外へ連れて行かれてしまった。ドアが閉...BeastSyndrome -63.包囲網-
安酉鵺
「包囲網を広げろ、あの娘を何としても確保だ!」
「第3隊に応援を…!」
人が増えてる…?彼女一人を捕まえる為に何故ここまで大掛かりに…?このままでは消耗戦になってしまう、せめてリヌさんだけでも安全な所へ…!
「なっ…!翼?!」
「高侵蝕者か!くそっ…打ち落とせ!」
【TABOO】に戻れば皆が危険にさ...BeastSyndrome -62.祈り唄の調べ-
安酉鵺
人目を避ける様に、時々回り道しながら家に着いた。お母さん、お母さん、お母さん…!
「お母さん!」
「リヌさん…!」
「お母さん…!お母さん何処!!ねぇ、お母さん!!」
何度叫んでも返事は無かった。家の中はいつもと同じなのに、帰って来るとお母さんはエプロンのまま『リヌ、おかえり』って言ってくれるの…絶...BeastSyndrome -61.大好きな場所-
安酉鵺
「私…やっぱり戻る!何かあいつ心配だから!」
「りんご先輩?!」
大通りへ出た私達に背を向けると、りんご先輩は来た道を走って戻った。追いかけようと思ったけど、あの得体の知れないBSへの恐怖が脚を留めてしまった。
「すみません…リヌさん…。私がもっと早く発信機に気付いていれば…。」
「そんな事…!だっ...BeastSyndrome -60.お母さん-
安酉鵺
振り返った瞬間、アームが飛び散る様に剥がれ落ち、黒いBSがその場に崩れ落ちた。
「…お前…!レンチ女!何で…?!」
「全ては奇跡の名の下に…。」
「36点の多重間接型構造、重接続ポイントは両肩、解体ポイントは鎖骨点による
交差接続…合ってる?!」
「正解だ!」
地面を蹴るタイミングはほぼ同じ、なら...BeastSyndrome -59.ドライバーと毒りんご-
安酉鵺
「ねぇ、待って、待ってってば!」
「着いて来るな、レンチ女。お前が居るとロクな事が無さそうだ。」
「私にはりんごって名前があるの!この辺り来るの初めてだから道判んないのよ!」
「はぁ…何処行きたいんだよ、案内するからとっとと其処行け。」
「もぉっ!そんなんじゃモテないわよ!女の子にはさっきのお兄さん...BeastSyndrome -58.銀の銃弾が呼ぶ者-
安酉鵺
「あれ?羽鉦さん早かっ…。」
「……………。」
「初めまして、紫陽香玖夜と申します。お見知り置きを。」
「へ?あ、はい!こ、こちらこそ…。」
「羽鉦、お前ロリコンだったのか。」
「お前にだけは言われたく無ぇよ。」
あれから香玖夜は帰れと言っても聞かなくて、放って置く訳にも行かないので結局ここに連れて...BeastSyndrome -57.牙を持たない獣-
安酉鵺
何だろう、この組み合わせは…俺と、闇月羽鉦と、レンチでフロント割った女と、逃走劇のついでにいきなりプロポーズかました日本人形みたいな女…。
「はふぅ…申し訳ありません。お茶までご馳走に…。」
「私迄ごめんね、お兄さん。」
「いや…良い…えっと…落ち着いたかな?」
「申し遅れました、私紫陽香玖夜と申し...BeastSyndrome -56.かぐや姫-
安酉鵺
「で…何してんだ?往来大声で全力疾走して。」
「したくてしたんじゃ…。痛っ!」
「ごめんなさい!私がちょっとやり過ぎて窓ガラス壊しちゃって…!」
何故目を潤ませて態度を変える…。と言うかそんな説明じゃ逆に引くんじゃないのか?俺は引く。
「…巻き添えか。」
「ありがとう!すっげーありがとう!判ってくれ...BeastSyndrome -55.インプリンティング-
安酉鵺
報告も大体終わったし、何と無く疎外感を感じてたので部屋を後にして家に戻る事にした。広々とした高級マンションは羨ましいがどうも性に合わない。所詮庶民なんてそんな物だと思う。
「嫌…っ!嫌です!私帰りませんから!絶対に嫌です!」
「ご両親が心配しますよ?駄々こねていないで戻りましょう,香玖夜さん。」
「...BeastSyndrome -54.踏んだり蹴ったり-
安酉鵺
目の前にある物が判らなかった。聞こえている音が何なのか判らなかった。彼の引き裂く様な悲鳴だけがずっと耳にこびり付いて離れなかった。ただ呆然と座り込んだまま、一体どれだけ時間が経ったのだろう?苦しんでいた彼は、今はベッドの上で眠っていた。月明かりのせいだろうか、ひどく顔色が悪く見えて不安になる。私は彼...
BeastSyndrome -53.消える記憶消せない想い-
安酉鵺
おびただしい数の機材、木の根の様に張り巡らされたコード、その真ん中に『彼』は居た。まるで凶悪な囚人の様に拘束衣で椅子に縛り付けられぐったりとしていた。
「何本目?」
「2本です、後1本ですが…これ以上は…。」
「拘束衣を解け。」
「しかし…!」
「構わん、俺が抑える。」
思わず後ずさると、両肩を強く...BeastSyndrome -52.傷だらけの影-
安酉鵺
夜になっても、ベッドに入って横になっても眠れなかった。頭にぽっかり空洞が出来た様に気持ちが悪い、手が、身体が、ひどく寒く感じた。部屋をこっそりと抜け出て巡回のスタッフに見付からない様エレベーターに向かった。
「何をしている。」
「きゃっ?!」
「…優雨スズミ…?」
「あ…詩羽…さん…。」
声に飛び上...BeastSyndrome -51.全てを知る覚悟-
安酉鵺
テーブルを囲む様に5人がぐるりと座った。キーを叩く音がカタカタと響いていて口を開くきっかけを掴めないで居た。
「完了です。」
「判った、始めてくれ。」
「おい、この子は良いのか?聞かせて。」
「構いません、ある意味彼女も当事者ですから。」
翡翠さんはそう言うと画面に何かを打ち出した。リストの様な物が...BeastSyndrome -50.解けない糸-
安酉鵺
「木徒…!」
走っている途中で腕を捕まえられた。この涙の意味がもう自分でも判らなかった。ただとても見ていられなかった、あんなに仲が良くて、見てる方が嫉妬しちゃう位お互いを想ってて、ほんの少し前迄愛の言葉を伝えていたのに…!
「どうして…?ねぇ、何で?!スズミさんどうしちゃったの?!」
「…覚えてない...BeastSyndrome -49.見れない顔-
安酉鵺
光だけでは何も助ける事は出来ない
影だけでも誰も救う事は出来ない
ならば知らなければならない
ならば辿らなければならない
それは今迄通り過ぎてきた道
全てに通じる記憶を確かめなければならない
全てに通じる思いを知らなければならない
心の欠片を拾い集めて
記憶の中に眠る思いを
どうかこの連鎖を断ち切っ...BeastSyndrome -48.BeastSyndromeTrick-
安酉鵺
「スズミさん…!良かった~気が付いたんだぁ…。」
「木徒ちゃん?…あれ?私…?」
「倒れたんだよ、大丈夫か?」
目が覚めると自分の部屋のベッドに寝かされていた。私はどうやら倒れてしまったらしい。さっきまであんなに痛かった頭は嘘みたいにスッキリしていた。
「詩羽さん、私どの位寝てたんです?」
「半日位...BeastSyndrome -47.残酷な笑顔-
安酉鵺
コンサート襲撃の事は、ホールの被害も含めて大きな騒ぎになっていた。
「うわ…下にもマスコミ来てるみたい…。」
「大きな事故だったからな、余り窓際に寄るな、木徒。誰彼構わず写真撮ってるみたいだし。」
「ねぇ詩羽さん…この記事…どう言う事?」
『【TABOO】によるテロ行為?!コンサートが大惨事に!!』...BeastSyndrome -46.カナリア-
安酉鵺
ブラインド越しに日が差し込んで、眩しくて目が覚めた。身体を起こすけど見覚えの無い広い部屋。
「う…?どこ?ここ?」
「ん~~~…。」
「……きっ…!きにゃあああああああああああああああああああああああああ!!!!」
広々としたリビングの真ん中で…。
「ごめんなさいっ!」
正座で謝る羽目になるとは…。...BeastSyndrome -45.食欲も無敵-
安酉鵺
目を開けると天井が見えた。ベッドを占領して私だけ眠ってしまったらしい。
「あ…れ…?詩羽さん…?」
詩羽さんの姿は見えなかった。ベッドから降りた瞬間、何かが割れる音がした。
「詩羽さん?」
「…げほっ…!げほっ!あ…ぐっ…!」
「詩羽さん?!詩羽さん!!」
「木…!…ごめ…そこの薬…取っ…げほげほげ...BeastSyndrome -44.宣戦布告!-
安酉鵺
「…何じゃこの高級マンション!!」
「普通だろ…デカイ声出すな使土、俺の部屋はこっち。」
階数が2桁行ってたら俺に取っては充分高級マンションです。バットに言われるままクマ女を担いで部屋にあがる。室内なのに天井高い!玄関が既に広い!家具少ないけどテレビデカい!これでワインセラーとかあったらぶん殴る!
...BeastSyndrome -43.目を逸らす-
安酉鵺
「ぶっ…くくくくっ…!そ…其処は姫抱っこじゃね?翡翠。」
「い…良いから…て…手伝って下さい…啓輔さん…。」
眠りこけてしまったリヌを背負い、ゼーゼー息を切らして、髪も服もボロボロで翡翠が帰って来た。自分の家に帰らず俺のマンション迄わざわざ連れて来る辺り、律儀なのか馬鹿なのか…。翡翠はソファにリヌを...BeastSyndrome -42.デジカメは何処だ!!-
安酉鵺
「…翡翠さん…翡翠さんっ…!ひす…きゃあっ?!」
突然バサリとカーテンが翻った。驚いたのとカーテンを被ったのとで、思わず顔を伏せた。
「風…?」
顔を上げるか上げないかで目の前が暗くなった。え…?これ…カーテン?
「…どうして貴女は私を呼ぶんですか…!」
「翡翠さ…きゃっ?!」
後ろから強く抱き締め...BeastSyndrome -41.君の虜-
安酉鵺
いきなり車に押し込められて、何処をどう走ったのか判らない、永遠にも取れる時間の後、この場所に着いた。車から引き出されると、顔も判らない白衣の人達が機械的に私達を調べ、そして、今は部屋に一人取り残された。部屋にはベッドと小さな棚と窓が一つ、テレビも無い。入った事無いけど監獄ってきっとこんな感じ。
「…...BeastSyndrome -40.声を枯らして-
安酉鵺
はい質問です、目の前に何か黒ずくめで『コフー…コフー…』とか言ってらっしゃる変な人が居たらどうしますか?①全力で逃げる、②全力で逃げる、③全力で逃げる。ダメだ、脳内選択肢ネガティブ…。
「黒ずくめにメタルアーム…報告のあった新装備BSってこいつかよ…一体どうやって倒…!」
「あれバラせば動き止るぞ。...BeastSyndrome -39.狂気の引き金-
安酉鵺
遠くで叫び声が聞こえる、目の前が赤い、これは何?口の中が鉄臭い味で一杯になる。寝てちゃダメだ、早く立ち上がらないと、あいつを倒さないといけないんだ、でないとまた俺の『家族』が傷付くんだ。あれ?どうしたんだろう?身体が動かないや、指先も全然ダメだ、声すら出せないみたいだ。
「全ては奇跡の名の下に…。」...BeastSyndrome -38.空虚な紅-
安酉鵺
「動ける人は早く外へ!こっちだ!」
「羽鉦様!各ゲートで新装備BSを確認!このままでは避難した観客が巻き込まれます!」
「冗談だろ?!このまま居たら火が…!」
会場の火と、ゲート前のBS、まずい、このままでは奴等の思う壺に…!
「おい!【MEM】研究所の救護班だ!」
「これで霊薬が使えるぞ!」
「待...BeastSyndrome -37.ただ強く、凛として-
安酉鵺
歓声は一瞬にして悲鳴に変わった。ひしめき合っていた人達が混乱し、逃げ惑う。
「リヌ…!リヌ!!しっかりしろ!!」
「リヌちゃん?!」
叫ぶ声に我に返り、もうもうと煙が残る『ステージだった場所』へ急いだ。天井の照明が地面に突き刺さる様に落ちていて、何時倒れるとも知れない不安定さだ。
「くそっ…!誰か!...BeastSyndrome -36.無情の針-
安酉鵺
「さーって!皆盛り上がってるー?!りんごはまだまだ元気だよ~!」
「ネムリも~元気なの~。」
「じゃあね、じゃあね、次はコンサート限定の即席ユニットだよ~ぉ!」
「まずは~キュートボイスのニューフェイス~薙音紫苑ちゃ~ん。」
「そしてそして!エンジェルボイスの冰音リヌちゃんでぇ~っす!」
割れんばか...BeastSyndrome -35.踏み躙られた歌-
安酉鵺
ざわつく館内、一杯の人、人、人。鼓動と共に押し寄せる背筋が凍る様な緊張感と、それを打ち消す程の高揚感。
「ユウさん!スタンバイお願いします!照明消えたらイントロ入ります。」
「OKです。」
「…見てて…騎士…。」
照明が点くと同時に嵐の様な歓声と音の波が押し寄せる。
――――――――――――――――...BeastSyndrome -34.消えない火-
安酉鵺
「はい、リハーサルOKでーす!休憩入りまーす!」
「あ…先輩!」
「リヌちゃん。」
「あの…この前は酷い事言って本当にごめんなさい!私…その…先輩に嫉妬してました!」
「…ぷっ…!ご、ごめんなさ…!り、リヌちゃん…素直過ぎ…!!あははははは!!」
「だ、だってぇ~…。」
「もう、良いよ、気にしてない...BeastSyndrome -33.野良猫?いえいえ蝙蝠です-
安酉鵺
「おはよ。」
「おはようござ…!ど、どうしたんですか?!羽鉦さん!!その顔!!先…騎士も!!」
「犬に噛まれた。」
「猫に引っ掻かれた。」
「…2人で喧嘩でもしたんですか…?」
「ま、そんなとこ。」
「あ~、すっげ痛ぇ…。」
2人は傷だらけだったけど、何故だか私はホッとしてしまった。だって2人共笑っ...BeastSyndrome -32.もう少しだけこのままで-
安酉鵺
「さぁて、ユウ!いよいよコンサートよ!今日はしっかり寝て体調を万全に整える事!」
「うん。」
私達はまだ知らなかった。
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「リヌー?早く寝なさいよ、明日大変なんだから。」
「...BeastSyndrome -31.前夜-
安酉鵺