タグ「亞北ネル」のついた投稿作品一覧(30)
-
何がために 私は生き
何がために 私は歌う
教えて 私という 存在
己を見出す 狭き道のそこで ひた歩く
その先に意味があると 信じて
未来は見えない自分も見えない感覚だけが その確証
明日を見つけて 荒野の中を 独り行く
独りで行くの誰の手も 取らない
誰もいない自分もいない私の存在は 何所に?...I for sing and you MAIN THEME 「I for sing and you」
-
朝というものはいつ何時でも穏やかなものだ。
大都会の中心でさえ、あの喧騒を取り戻すのは昼に近い。
まして、人々が日々生活を営むこの高級住宅は平和という言葉が相応しい。
爽やかな風が全身をすり抜けるように空間を流れ、
顔を覗かせて間もない太陽の日差しが眩しく、
聞こえるのは、かすかな生活音...I for sing and you 最終話「I for sing and you」
-
我ながらバカなことを言ってしまった・・・・・・。
いくら海に来たからって、着替えも水着もないのに泳ごうなんて無茶もいいとこだ・・・・・・って。
「ほら、ネルも!」
雑音の体が半分海に浸かっとる!
自分がどんな格好だか分かってんの?ワンピだぞワンピ!!
まぁ・・・・・・あたしのせいだけど。...I for sing and you 第三十六話「ずっと一緒」
-
その朝は二度繰り返された。
自分の習慣に従い、行動した故に招いた事態である。
起床時にPDAを手に取り、メールの受信状況を確認するという行動である。
そして、それは繰り返されていた。
PDAの液晶画面には、確かにメールが届いていた。
送り主も、昨日と同じく。
しかし、その内容だけは繰り...I for sing and you 第三十二話「書置き」
-
「ごめんね。勝手に上がりこんじゃって。」
その声は、ドアの向こうの、玄関のほうから聞こえてきた。
ミクオの声と、その影。
「ちょっと大事な用があったもんで。ホラ、朝のことだよ。この時間帯しか自由に動けないからね。」
朝のこと・・・・・・ミクオが博貴のことで何か言おうとしていた。
そうだ。...I for sing and you 第三十一話「真夜中の話」
-
今日という日も、いつも通りありふれた朝を迎える筈だった。
しかし、目覚めと共に何気なく覗いたPDAに届いていた、一件のメール。
それが、ありふれた朝を非日常のものへと変貌させた。
メールの中身は、一件の動画と僅かな言葉が綴られた文章。
文章を先に目にした俺は、見れば分かる、という言葉のせい...I for sing and you 第三十話「厄日」
-
ミク・・・・・・ミク・・・・・・。
誰だ・・・・・・わたしを呼ぶ・・・・・・。
ミク・・・・・・・・・・・・。
誰だ・・・・・・・・・・・・。
アタシ・・・・・・・・・・・・アタシヨ・・・・・・。
誰なんだ・・・・・・・・・・・・。...I for sing and you 第二十七話「思い出の中に」
-
こっそりと、扉の隙間から見えた、雑音の姿。
それを見た瞬間、思わずドキッとして、声が出そうになった。
今も、その雑音を見ているうちに、胸の高鳴りが早くなっていくのが分かる。
あれって、もしかして・・・・・・。
雑音は床に座り込んで、白い布のようなものに、顔をすり寄せている。
あれって、...I for sing and you 第二十五話「好きの証拠」
-
時は流れた。それも、良い方へと。
ネルと雑音さんの出演した番組が放送され、それは大好評を生んだ。
それからというもの、ネルの人気は過去以上に急上昇し、CDの発売、ライブ、メディア出演など多忙な日々が続いたが、二人がそれを苦と思うことは全く無かったのだ。俺自身も然り。彼女達といられるそのときが、...I for sing and you 第二十四話「寂しくて」
-
遂に・・・・・・遂にだ。
彼女は己の在るべき姿を取り戻したのだ。
歌姫、ボーカロイドディーヴァとしての、美しく歌う姿を!
その姿を、俺は二度と忘れないだろう。
ネルは雑音さんと、歌を歌い、歌い上げた。渾身の力をこめて。
俺も分かった。
躍動が、振動が、駆動が、鼓動が。
美しく歌を歌...I for sing and you 第二十三話「共感」
-
ひとりじゃ見えないものがある
(Buddy)
ひとりじゃ分からないことがある
(Buddy)
わたしの手をとってそっと導く
(BUddy)
あなたがいてくれる
(Buddy)
わたしの体を...I for sing and you 第二十二話「Buddy」
-
ついにここまで来れたんだ。
出会い方は良くなかったけど、あのネルをここまで立ち直らせて、その上、好きになった。
そして、ネルと一緒に歌うことが、こんなに楽しいと初めて知った。
わたしは、ネルと出会えて、本当に良かったと思う。
そうして、わたしは、今度はネルとテレビに出演する。
わたしもネ...I for sing and you 第二十話「狂」
-
とうとうここまで来た。
みんなの家を出て、生きる希望すらなくしていたあたしが。
ここまで立ち直れたのは、なにもかも、雑音のおかげだ。
雑音とあたしがめぐり合わなかったら、あたしはどうなっていただろう。
とにかく、あたしは雑音のおかげで、もう一度、テレビに出演する。
みんなの前に姿を現して...I for sing and you 第十九話「異空間」
-
「ひろき・・・・・・。」
そう僕の背中へ呼びかけ、引き止める声があった。
声の先には、眠りから覚めたばかりのミクが寝ぼけ眼で僕を見つめていた。
「あ・・・ごめん。起こしちゃった。」
「・・・・・・。」
早く家に帰った日は、ミクにねだられて一緒に寝ることになっている。今日はネルさんも一緒だ...I for sing and you 第十八話「すぐ、近くに」
-
「テレビ出演まで、もう一週間か・・・・・・。」
「明日から、ピアプロのテレビスタジオのほうに行くんだよね?」
「ああ。そこで色々と練習だ。」
そんな風にお喋りをしながら、あたし達は冬の夕日で茜色に照らされた道路を歩いている。
寒い・・・・・・。
肌で感じる寒いという感覚を味わう、それ...I for sing and you 第十七話「団欒」
-
クリプトンの暗部ともいえる、クリプトン・フューチャー・ウェポンズ。いわゆる兵器産業を専攻する子会社に、試作兵器実験部隊、なるものが存在する。
自社が独自開発した最新兵器類の性能を実証するため、各国の紛争地帯へ国籍を隠し秘密裏に入国し、紛争へ参戦することを目的とした、現時点では日本防衛軍を上回る戦...I for sing and you 第十五話「現在進行形」
-
「・・・・・・雑音・・・・・・・・・・・・。」
目の前で涙を流す雑音に、どんな声をかけたらいいか。
それで迷っている。
なんて・・・・・・なんて言えば・・・・・・。
雑音は、必死に涙をこらえながら、あたしに何か言おうとした。
「ネル・・・・・・わたしは・・・・・・。」
だけど、言葉が...I for sing and you 第十四話「言葉なんかいらない」
-
右も左も分からないまま、また訳の分からないことが起こった。
雑木林の中からあたしが見たのは、雑音に目にも止まらぬ速さで飛び掛った、ミクオの姿だった。
「なッ!」
雑音の体が、大きく宙に舞い、空中でくるりと一回転すると、静かに石畳の上に降り立った。
雑音は、頬の切り傷のようなものを拭った。
...I for sing and you 第十三話「隠し事」
-
ここは暗くない。
電灯、建物の明かり、お店の明かり。
静かでもない。
傍を通り過ぎる人達、お店から流れる音楽、道路を通る車。
暗くも、静かでもない。この街。
明るくて、活気にあふれている。この街。
わたし達の街、水面。
「へぇ・・・・・・これが水面都かぁ。」
ミクオが辺りを見回しな...I for sing and you 第十二話「運命と宿命」
-
あたしは、雑音とユニットを組むことになったんだ。
そう。これならファーストの連中に勝てるかもしれない。
と、言うわけで敏弘のプロデュースで活動を再開することになった。
だけど、雑音が・・・・・・。
雑音の様子がおかしい。
あの、新人の初音ミクオを見たとたんに。
最初は、昔のなんかの仲か...I for sing and you 第十一話「記憶の者」
-
朝だ。
あたしは、とうとうピアプロに行くことを昨日の夜、決意した。
やっと自分を見つめなおすことができたんだ。
あたしにも、何かできることがある。じっといてはいられない。
何かを、始めないと。
そして、確かめないと。
大丈夫。あたしには・・・・・・。
「ネル。」
雑音がいる。
「...I for sing and you 第十話「再臨」
-
ちょっとまってよ。
なんであたしと雑音で一緒に風呂なんか入いんの?
つうか脱衣所目前まで来てんだけど・・・・・・。
「ちょっとまってよ!なんであたしと雑音でお風呂なんか・・・!」
「いやか?」
思ったことでそのまま講義すると、またそんな顔を。
まったく、あんたの顔、まるで凶器だよ。
...I for sing and you 第九話「触れ合い、和解する」
-
「俺達」の記憶にある限りでは・・・・・・・・・。
「彼」と「彼女」の関係は言葉では到底、表現に足りないものである。
様々な感情が二人の間で行き交い、時には愛が。時には憎悪があった。
そして、「彼女」は、
「彼」を殺した。
義務か、使命感か、昂りか、本能か。
定かではないが、彼が...I for sing and you 第八話「意外な出来事」
-
どすん、と洗濯物の入ったカゴを、気持ちいい冬の日差しが差し込む庭から家の中に運んだ。
「ふう・・・・・・雑音。終わったよ。」
そう奥の方に呼びかけた。
「ありがとうー!今行く。」
洗濯機の音に混じって、雑音の綺麗な声が家の奥から響いてきた。
綺麗な声。
普通のボーカロイドとは違う自然な...I for sing and you 第六話「二人の気持ち」
-
「マスター・・・・・・ネルいつ帰って来るんだよ。」
リビングのソファーに座って新聞を広げていると、ふとそんな問いかけが耳に入る。
声の方を見やると、赤い髪の青年が元気のない表情で立っていた。
「心配するなアカイト。今は少し辛い状態だが、落ち着いたところを見計らって連れ戻しに行くさ。」
「見...I for sing and you 第五話「嘘と本音」
-
僕は今、様々な情報が表示される板に視界を囲まれている。
トリプルディスプレイ。専用の端子を使ってモニターを三つまで増やしてある。
そこに表示される情報に従って、視線をモニターからそらさずキーボードの上に指を走らせる。
何気なく机上の置時計を見ると、午後九時ちょうど。
たとえちょっと視線を動...I for sing and you 第四話「迷い」
-
俺の「監視」の管轄内であるキャラクターボーカルアンドロイド、そのセカンドシリーズの一人である亜北ネルが、昨日のおよそ正午から、クリプトンの所有する専用居住住宅から姿を消した。
そうと分かった瞬間、あれほど心臓が凍りついたときは過去にない。
理由はどうあれ、問題はそこではない。そんなことは最初か...I for sing and you 第三話「わたしの気持ち」
-
誰かの話し声が聞こえる・・・・・・・。
この部屋から離れたところから。
「ネルさんの調子はどう?」
「もう大丈夫。さっき見に行ったときはまだ熱があったけど、また起きるときには熱が冷めると思う。」
「そう。お友達には連絡したの?」
「ああ。もうすぐ迎えに来ると思う。」
「じゃあ安心だね。...I for sing and you 第二話「暖かさ」 後編
-
何か、聞こえる・・・・・。
車の音や、スズメがさえずったり、何かしら音が聞こえる。
じゃあ、目が覚めたんだろう。
ゆっくりと目を開けると、そこには見たこともない白い天井があった。
時間がたってもっと目が覚めると、羽毛のベッドに寝かされていることが分かった。
暖かい・・・・・・。
服はあ...I for sing and you 第二話「暖かさ」 前編
-
暗闇の空、降り頻る冷たい滴、雨。
しかし、それとは対照的である商店街の雑踏の中を、俺は足早に進んでいる。
人々の話し声、波打つ雑踏、どこからとも無く流れ来る音楽。
焦燥する俺のことなど気にも留めない商店街は、相変わらず疲れを知らないような賑やかさで沸き立っている。
首を回して視界を巡らせ、...I for sing and you 第一話「雨天の迷子」