タグ:ロミオとシンデレラ
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Apassionato
6-1.
会える時間は短かったけれど、私はすごく幸せだった。
こんな幸せがあるなんて、私は全然知らなかった。
学校に行って、お昼を一緒に食べて、塾の行き帰りも海斗さんは一緒に来てくれた。
学会が終わって、海斗さんはかなり時間の融通がきくようになったみたいで、私...ロミオとシンデレラ 28 ※2次創作
周雷文吾
5-7.
「私、海斗さんが……好き、です」
悩んで悩んで、どうしようもないくらいにつらくて、苦しくて。それでもやっと口にしたその言葉。
私は祈るような気持ちで、目を丸くして私を見返す海斗さんの言葉を待った。
……返ってきたのは、少しショックな言葉だった。
「……まいったなぁ」
目をそらし...ロミオとシンデレラ 27 ※2次創作
周雷文吾
5-6.
不意に訪れる恐怖って、なかなか簡単には消え去ってくれない。
ママにぬいぐるみをねだったときに怒られたのは、十年近くたった今でも、ちょっとしたトラウマになっている。
「伝えなきゃいけないことがある」なんて言っておいてなかなか話さない私を、海斗さんは辛抱強く待っててくれた。でも、それは...ロミオとシンデレラ 26 ※2次創作
周雷文吾
5-5.
「好きです」
たった四文字のその言葉を伝えることがこんなにつらいだなんで、私は全然しらなかった。
だって、毒リンゴを食べて眠ったままの白雪姫に、王子様はなんの気後れもなくキスしてたし、ガラスの靴を履いたシンデレラには王子様がみんなの前で堂々とプロポーズしてた。ロミオとジュリエットだ...ロミオとシンデレラ 25 ※2次創作
周雷文吾
5-4.
実は昨日、金曜日には海斗さんに会えなかった。
学会は木曜日までで、海斗さんは帰ってきてたんだけど、海斗さんは一日中ぐっすり寝ていたらしい。
ここ数日、徹夜が続いていたみたいだから、仕方のなかったことだと思う。会えない日が一日増えたのは残念だけど、私に会うために無理まではして欲しく...ロミオとシンデレラ 24 ※2次創作
周雷文吾
5-3.
翌々日、土曜日。
パパとママが仕事に出かけてから、私は鏡の前で悪戦苦闘中だった。
洗面台の上には、愛がくれた化粧品が広げられている。ファンデーション、リップ、アイライナー、ビューラー、グロス、マスカラなどなど。
お弁当と交換条件でお願いしたのは、メイクのやり方を教えてもらうこと...ロミオとシンデレラ 23 ※2次創作
周雷文吾
5-2.
海斗さんから連絡がきたのは、木曜日の昼休みになった直後のことだった。
今日は確か学会二日目で、海斗さんの研究室の発表は終わってるはずの時間だった。
愛と一緒にお弁当を広げたところでケータイのバイブレーションが鳴り、慌てて画面を見ると、海斗さんからの電話だったのだ。
「ごめん、メグ...ロミオとシンデレラ 22 ※2次創作
周雷文吾
Espressivo
5-1.
海斗さんがいない二日間は、思ってた以上につらかった。
このたった数日のうちに、海斗さんの存在は私の中でずいぶん大きくなってしまったらしい。
――まだ、私の気持ちを伝えてもいないのに。海斗さんの気持ちを聞いてもいないのに。
いや、だからこそつらかったんだ...ロミオとシンデレラ 21 ※2次創作
周雷文吾
4-4.
翌朝。
まだ寝ぼけている愛をベッドに残してリビングに入ると、むせ返るような甘いにおいがした。
……また、ママかな。
キッチンをのぞくと案の定、ママがフライパンでなにかを作っていた。フライパンの中には透明な液体みたいなものが入っていて、それをずっとかき混ぜてるみたいだった。何を作...ロミオとシンデレラ 20 ※2次創作
周雷文吾
4-3.
結局、愛が乱入してきたせいで海斗さんに「好き」と伝えられなかった。
塾は十分遅刻してしまったし、しかも愛は塾が終わってからも一緒に帰ると言って、しっかりと家までついてきた……というか、まだいる。
「今日は未来ん家に泊まります!」
また、宣言された。
しかもまた、私のことはお構い...ロミオとシンデレラ 19 ※2次創作
周雷文吾
4-2.
「へぇ、そんなことがあったんだ?」
「わ、笑い事じゃなかったんですよ!」
「ごめんごめん。俺も軽率だったね。気をつけなきゃ」
「あ、いえ。そういうつもりで言ったんじゃ……」
放課後の図書館。塾が始まるまでの、少しだけ空いた時間に、海斗さんはなんとか時間を作って会いにきてくれた。
そ...ロミオとシンデレラ 18 ※2次創作
周雷文吾
Meno mosso
4-1.
翌日。
昨日のことをぼんやりと思い出してるうちに、いつのまにか昼休みになっていた。
今日は、海斗さんのお弁当は作ってない。海斗さんの休憩時間と高校の休み時間が合わなくて、渡せそうになかったからだ。
代わりに――といったら怒られるかもしれないけど、今日は...ロミオとシンデレラ 17 ※2次創作
周雷文吾
3-6.
「や、ごめん。待たせちゃったね」
「ひゃっ」
突然、後ろからポンと肩を叩かれた。びっくりしてふりかえると、そこにはいつの間にか海斗さんがいた。
ぜ、全然気付かなかった……。
「すごい真剣な顔して読んでたから、声かけるのためらっちゃったよ」
そう言って笑う海斗さんは、今までと違って...ロミオとシンデレラ 16 ※2次創作
周雷文吾
3-5.
ちょっと早く着きすぎたから、私は図書館で時間をつぶすことにした。
海斗さんからのメールによると、実験の最中だからあと一時間は手が離せないらしい。
長くも感じるけど、でも、昨日とか一昨日なんかにくらべたら、一時間なんてほんの少しだ。
広い図書館の中を、のんびりと歩く。
ここは高...ロミオとシンデレラ 15 ※2次創作
周雷文吾
3-4.
神崚高校までは、いつも登校するときと変わらない。でも、学校に近付く度に、心臓のドキドキは激しくなっていった。
制服じゃないからっていうのもあるかもしれない。私服で行くっていうのはなんだが慣れないけれど、だからって制服でいくのは、それはそれで恥ずかしい気がする。
高校の校門から入っ...ロミオとシンデレラ 14 ※2次創作
周雷文吾
3-3.
翌朝、私はあくびを噛み殺しながら、お弁当を作っていた。
学園祭の翌日ということもあり、学校は休みだ。しかも、学園祭は日曜日だったから今日は月曜日。平日だから、塾も夕方からしかない。作ってるお弁当はパパとママの分。それと、パパとママには内緒だけど、実は海斗さんの分もある。
昨日……...ロミオとシンデレラ 13 ※2次創作
周雷文吾
3-2.
[ごめんね、実験で手が離せなくってさ。今日……もう昨日かな。……とりあえず学園祭の仕事お疲れ様!]
海斗さんから、そんなメールが返ってきたのは、深夜の三時を過ぎた頃だった。
いつもなら目も覚めない時間で、ケータイもバイブレーションにしていたのに、私は着信がきた瞬間、すぐに目が覚めた...ロミオとシンデレラ 12 ※2次創作
周雷文吾
Spiritoso
3-1.
結局、最後までステージにつきっきりになった挙句、後片付けまでやっていたら、家に帰り着いた頃には夜の十一時をまわっていた。
「……ただいま」
つぶやいてみても、返事は返ってこない。パパとママはまだ帰ってきていないらしい。どこか心地よかったはずの疲労感も、家に着...ロミオとシンデレラ 11 ※2次創作
周雷文吾
2-6.
結局、たこ焼き一つと焼きそば二つをおごってもらってしまった。量が多いのは、愛の分も買ってくれたからだ。
「実行委員なら、結構忙しいんじゃない?」
「それは、まぁ……」
私がつけている腕章を見てそう聞いて来るその人に、どう答えればいいか分からず、私は言葉を濁す。すると、私たちのことな...ロミオとシンデレラ 10 ※2次創作
周雷文吾
2-5.
「あ、あのっ!」
息を切らせて、半ば叫ぶようにしてかけた私の声に、目の前の三人はびっくりしたようにこっちを見た。
その人は、二人の男の人と一緒だった。たぶん、友人なんだろう。三人とも制服は着てないから、神崚の生徒じゃない。
三人の視線に一瞬だけ恥ずかしくなる。でも、本当に一瞬だけ...ロミオとシンデレラ 9 ※2次創作
周雷文吾
2-4.
翌日、神崚大学附属神崚高校学園祭当日。
一応、学園祭実行委員と生徒会は別ものということになっているけど、実際にやってることは実行委員と全然変わらなかった。今日つけている腕章だって、生徒会じゃなくて実行委員って書いてあるし。こっちの仕事のおかげで、クラスの仕事はしなくてもいいことにな...ロミオとシンデレラ 8 ※2次創作
周雷文吾
2-3.
「そんなことがあったんだ……」
午後の図書館。明日にせまった学園祭の準備を少しだけ抜け出して、私は愛に昨日の夜のことを話した。
見知らぬ三人組に襲われかけたところまで話すと、愛は隣りに座る私に手を伸ばして、抱き締めてくれた。私の頭を抱えるようにして、いたわるように、とても優しく...ロミオとシンデレラ 7 ※2次創作
周雷文吾
2-2.
教室を逃げ出して、生徒会室にやってきた。
……のに。
愛が私を追いかけてきた。そして、背後から私に抱き付いてくる。愛が興奮したように「うふふふふ」と笑うのが、すごく怖い。
「つぅーかぁーまぁーえぇーたぁー!」
「ひ、ひぃぃぃっ!」
悲鳴をあげる私に、愛は頬をふくらませる。そ...ロミオとシンデレラ 6 ※2次創作
周雷文吾
「私の恋を、悲劇のジュリエット、にしないで……、」
途端に出て来た言葉を思わず口に出してしまった。言った後に少し後悔。何が悲劇のジュリエットよ、夢見るのもいいところだわ。
『ミクは、ロミオとジュリエット、好きなの?』
不意に後ろから声をかけられて固まる。あんな恥ずかしい台詞を聞かれてたなんて、穴があ...【序章】絵本の中の少女達
なねつん
Allegro con brio
2-1.
失敗した。
とんでもない大失敗だ。
自分の馬鹿さ加減に呆れ果ててしまう。
なんで、そんな当たり前のことすら忘れていたんだろう。
……本当に、信じられない。
その失敗に気付いたのは、あの人と別れたあと、電車に乗ってしまってからだった。それ...ロミオとシンデレラ 5 ※2次創作
周雷文吾
1-4.
「その子がやめてって言ってるの聞こえてるんだろ?」
その人が通りがかるのが五分早くてもダメだっただろうし、五分遅くてもダメだっただろう。その偶然に、私はこれまで信じてもいなかった神様に、初めて感謝した。
「あ? 何言ってんだテメェはよ。かんけーねーヤツは引っ込んでろよ」
金髪がそう...ロミオとシンデレラ 4 ※2次創作
周雷文吾
1-3.
私が通っている塾は、最寄り駅から少しだけ離れている。
駅から塾まで徒歩でだいたい十五分。行きも帰りも、いつも独りだ。
暗い夜道を、女子高生が独りだなんて、危ないことくらい私にだってわかる。でも、パパとママの塾の基準は塾生の志望校合格率、ただそれだけだった。「危ないから気をつけて」...ロミオとシンデレラ 3 ※2次創作
周雷文吾
1-2.
私は神崚大学附属神崚高校の二年生。生徒会に所属している。
神崚高校はこの辺りではわりとレベルの高い公立校だ。神、なんて仰々しい漢字がついているけれど、別に宗教なんてちっとも関係ない、普通の進学校だったりする。
男子は紺色の詰め襟の学生服で、女子は同色のブレザーに白のブラウス、それ...ロミオとシンデレラ 2 ※2次創作
周雷文吾
intro Andante
1-1.
『私の恋を悲劇のジュリエットにしないで
ここから連れ出して……
そんな気分よ 』
私はふと思い付いたそんな言葉を、声には出さずにつぶやいて、自嘲気味に笑った。
――くだらないわね。
きまぐれに読んでいた戯曲、シェイクスピアの「ロミオとジュリエッ...ロミオとシンデレラ 1 ※2次創作
周雷文吾